日本料理店が世界で唖然「日本のマナー」を伝えるには

日本料理店が世界で唖然「日本のマナー」を伝えるには

高菜は有料に。日本では考えられない顧客の行動に頭を抱える

世界のさまざまな国で日本食レストランを見つけることは、そう難しいことではなくなってきました。日本の食文化を知ってもらう機会が増えるのは喜ばしいことです。しかし一方で、海外で展開する日本料理店ならではの苦労もあるようです。

昨年10月、有名ラーメン店のひとつ「博多一風堂」がロンドンに欧州1号店をオープンしました。しかし、日本ではお馴染みの無料でテーブルに常備してある高菜は有料で提供するスタイル。これは先にオープンしたニューヨーク店で、無料の高菜を入れ物ごと持ち帰ったり、1人で食べ切ってしまう客がいたためと報じられています。

難題を抱えるのは、博多一風堂だけではありません。他の日本料理店においても、取り皿や醤油、コップの盗難、醤油瓶の蓋を開けて食べ物をそのまま漬けるケースが頻発。これらの問題への対処に苦慮しているのが現状です。

海外で第一に尊重すべきは、その国のマナー

ではなぜ、このような問題が起こるのでしょうか?これは文化の違いに起因するものに他なりません。日本では当たり前のマナーが、海外でも同じわけではないということです。マナーは思いやりであり、相手に対する敬意を行動で表現することができる方法です。しかし同時にそれは、共通する文化的・社会的背景や価値観の中で育まれるものであることを忘れてはいけません。例えば、食事のマナーひとつとっても、同じアジアであっても、国によって違います。

海外展開の際は、その国で「商売をさせてもらっている」という意識が大切でしょう。顧客は、その国に暮らす人々であり、異なる文化を持つ(日本人にとっての)外国人です。彼らを満足させることなしに、顧客満足の向上はあり得ません。この基本事項をしっかりと認識した上で、マナーの問題を考えると、海外で第一に尊重すべきは、その国のマナーだとわかります。日本のマナーを伝えるのはその後です。

マナーを伝えるには、そこにある精神をも含め伝えることが効果的

「マナーだから、こうしてはいけない」というのではなく、「なぜ、こうしてはいけないのか?」といった理由も含めて何度も丁寧に説明するなど、根気良く対応することで、日本のマナーが緩やかに浸透することを目指しましょう。

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された2013年12月から約1年。四季のある日本で自然、季節、行事に密着した料理として育まれ、ひとつの文化として評価されました。日本料理の魅力は、その味だけにとどまりません。趣向を凝らした食器、見た目も楽しませてくれる盛り付け、料理を引き立てる照明など、日本料理を味わうために考えられたさまざまな工夫も魅力です。その工夫への敬意が、日本料理を食する際のマナーという形で受け継がれてきたことを伝えましょう。マナーを伝えるには、そこにある精神をも含め伝えることが効果的なのです。

(城戸 景子/イメージコンサルタント・マナー講師)

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