国家戦略特区での岩盤規制改革
【原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】
安倍総理が「今後2年間で、少なくとも国家戦略特区では岩盤規制打破」を表明したのは、今年1月。すでに10か月近くが経過した。岩盤規制の多くが法律に根拠があり、法律改正を要することを考えれば、残された国会会期は限られる。この臨時国会、次の通常国会で、どれだけの岩盤規制を打破することができるかが問われる。
国家戦略特区法は、2013年臨時国会で成立。その中で、容積率緩和、雇用ルール明確化(ガイドラインと相談センター)、病床規制など医療分野の一部規制緩和、農業委員会など農業分野の一部規制緩和がなされた。あわせて、総理主導で岩盤規制を切り崩す仕組みとして、「特区諮問会議」「区域会議」が設けられた。
しかし、2014年1月からの通常国会では、規制改革メニューの追加はなされず、1回お休みとなってしまった。その後、9月の内閣改造があって、新たな体制のもと、この臨時国会で追加されるメニューが、10月10日の特区諮問会議で概ね固まった。
項目は、以下のとおり(詳細は以下のサイト参照)。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai9/shiryou1.pdf
1.ビジネス環境の改善・グローバル化
・外国人を含む起業のための各種申請ワンストップセンターの設置
・公証人の公証役場外における定款認証
・外国人家事支援人材の活用
・創業人材等の多様な外国人の受入れ促進
・外国での弁護士資格取得者の日本国内での活動推進
2.公的インフラ等の民間開放
・公立学校運営の民間開放(公設民営学校の解禁)
・官民の垣根を越えた人材移動の柔軟化
3.持続可能な社会保障制度の構築
・医療法人の理事長要件の見直し
・農業等に従事する高齢者の就業時間の柔軟化
・「地域限定保育士」(仮称)の創設
4.新たな地方創生モデルの構築
・NPO法人の設立手続きの迅速化
・国有林野の民間貸付・使用の拡大
グローバルなビジネス拠点の創設(=都市)、地方創生モデルの構築(=地方)のほか、公的資本の有効活用、社会保障改革の実験という、岩盤規制と深く関わる難題領域も含め、いくつかの前進がなされた。
ただ、「今後2年で・・」という目標を考えれば、決して百点満点とはいえない。特に、
・「地方創生」の最大の切り札となるべき農業分野での改革(企業参入など)、
・成長分野への人材流動を促すための雇用制度改革の更なる前進、
・介護・医療・保育分野の改革、
など、十分に着手されていない領域も少なくない。
まずは秋の臨時国会で決定された事項を処理しきるとともに、通常国会に向けて更なる取組が求められる。
霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!
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