『劇場版 零~ゼロ~』安里麻里監督インタビュー「ホラー映画ってとても許容量が大きい」
2001年に発売されて以降、数々のシリーズが派生している人気和風ホラーゲーム『零』が待望の映画化。『劇場版 零~ゼロ~』が9月26日(金)より公開中です。
主人公・アヤ役には中条あやみさん、クラスメイトのミチ役に森川葵さん。ティーンに絶大な人気を誇るセブンティーン専属モデルのふたりが、学園で起こった“神隠し”の謎に迫ります。
メガホンをとったのは、『リアル鬼ごっこ』シリーズや『バイロケーション』などセンセーショナルにして繊細な恐怖演出に定評のある安里麻里監督。禁断の謎がひも解かれていく恐怖と衝撃を美しく幻想的に描き出します。今回は安里監督に映画のみどころや描きたかったポイントなど、色々とお話を伺ってきました。
――本作は人気ゲームをノベライズし、それを映画化したという事ですが、ゲームの映画化というのは難しかったのでは無いでしょうか?
安里監督:そうですね、かなりハードルは高かったです。今回はメディアミックスという事で、ゲームの内容をそのまま映画化したわけでは無く、大塚英志先生が書いた小説がベースとなっていて。なので、最初は大塚先生と一緒に脚本を書く作業でした。ゲームが大切にしているのが「美少女が出て来るホラー」という事で。映画でもそこに一番重きを置いて。
――『零』の恐くも美しい世界観が存分に描かれているロケーションや衣装でしたね。
安里監督:近年、女子高生が出て来るホラーというと都会が舞台な事が多かったと思うのですが、今回は毛色をガラリと変えて。山の中にある寄宿舎を舞台にする事で、より“虚構度”を強くしようと意識しています。山の中のロケーションに普段見かけない様な建物、古めかしい制服のデザインと、あえてフィクションさを強調しています。
――本作で一番こだわった部分はどこですか?
安里監督:一番こだわったのは、フィルム撮りをしたという事ですね。ハイヴィジョンであまりにもキレイに撮れちゃうと、キレイに見えすぎて虚構度が下がるなと。「フィクション度の高い作品を撮るのなら、フィルムで撮ろう」というカメラマンからの提案があって、すぐ採用する事に。
――そんな技術的なこだわりもあり、主演の2人の美少女っぷりも凄まじかったです。
安里監督:中条さんと森川さんは、本人のキャラクターが全く違っていて面白かったですね。中条さんはほとんど演技経験が無いのに主役を務めるというプレッシャーがあったのに、水に入ったり、ワイヤーで吊られたりという大変なシーンも多くて。なので、大丈夫かな? と心配している部分はあったのですが、とてもガッツがある子でしっかりと演じてくれました。
森川さんは、10代なのにとても度胸が座っていて、感心の連続でした。この映画の観客の視点は森川さん演じるミチに近くて、ミチが不思議に思ったり、驚いたりする事で物語の先導役を果たしていると思うんですね。森川さんはとても適役だったと思います。
――ホラー映画に美少女(美女)は欠かせない! というホラーファンの方は多いと思いますが、本作の「女の子だけがかかる呪い」というフレーズも、とてもソソるものがありました。
安里監督:女の子達だけの、すごく狭い世界を描きたかったので、キャスティングは10代にこだわりました。クラスメイトもエキストラの女の子達も全て10代に限定してオーディションをして。私は普段作品を作る時には「20代が10代の役をやっても構わない」というスタンスなのですが、この作品に関しては違うなと思って。10代の持つ不安定さが醸し出す雰囲気ってあると思うので、そこにはとことんこだわりました。
――安里監督は『バイロケーション』など、ホラー作品が続いているのですが、もともとホラー映画がお好きなのでしょうか?
安里監督:本当に雑食で、どんなジャンルでも観るのですが、やっぱりホラー映画が好きなんだと思います。好きな作品はたくさんあって選びきれないのですが、本作で意識したのはダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』や『インフェルノ』といった、クラシカルなホラーです。寄宿舎が舞台だったり、極彩色でけったいな音楽が流れて、美少女が翻弄されるという……。
あとは、『いまを生きる』で有名なピーター・ウィアー監督の『ピクニックatハンギング・ロック』という作品が参考になりました。これは、女の子が数人で山にピクニックに行って、失踪してしまうストーリーなのですが、昼間に起こる出来事なのにとても気味が悪いんです。この映画もかなり意識しました。
――『バイロケーション』と『劇場版 零~ゼロ~』が全く雰囲気の違う作品である様に、ホラー映画には「キレイで恐い」物も「グチャグチャで不愉快」な物も色々あって欲しいと思いますね。
安里監督:ホラー映画ってとても許容量が大きいですよね。ホラー映画という枠の中での表現はとても自由で、色々な事が出来る。JホラーはJホラーとしてあって欲しいし、ゾンビも、スプラッタも色々な映画が作られて、それが映画館でかかり続けるというのが理想ですよね。『劇場版 零~ゼロ~』は、ホラーファンの皆さんが観ればどこか懐かしい70年代の雰囲気を感じるかと思いますし、若い子からするとクラシカルな雰囲気が新鮮にうつるのでは無いかと願っています。
――今日はどうもありがとうございました!
【ストーリー】
閉塞感漂う山間の町にある女学園。学園のカリスマ的存在であるアヤが寄宿舎の部屋に籠るようになってから数日後、生徒が次々と失踪する事件が発生。姿を消した生徒たちに共通していたのは、アヤにそっくりな少女が写っている1枚の写真に接触し、アヤの“幻”に悩まされていたことだった。その“幻”は、生徒たちに耳元で囁きかける――「お願い、私の呪いを解いて……」――。
学園には、“午前零時に女の子だけにかかる呪いがある”という、古くからの言い伝えがあった。やがて、失踪した生徒たちが水死体となって発見される。その頃、アヤの“幻”を見るようになっていたミチの前に、本物のアヤが姿を現わす。自分の“幻”の正体を突き止めたいアヤは、ミチと共に呪いのおまじないを試そうとするが……。
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