エコノミストは予測のいい人を選べ 

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【高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】 

 筆者は、文系が多い霞ヶ関の中で、理系出身だ。理系の中でも数学なので文系からいれば、とんでもなく「理系」だろう。その理系から見た経済政策での不思議を述べよう。

 自然科学の典型的な論法は、仮設をたてて実験でそれを証明するというパターンだ。管理された実験で出来なければ、自然界の事象を利用し予測することで仮説の正しさを示そうとする。

 もっとも筆者がやっていた数学の場合、実験はなくロジックのみを使って証明する。もちろん証明が出来なければ仮説命題は正しいとはいえず、反証された場合には間違いとなる。

 ところが、社会科学の場合、形式的には自然科学の手続きに似ているようだが、何かしっくりこない。例えば、経済学の場合、過去のデータを収集し、仮説を実証するというスタイルであるが、実際の政策決定において、実証された理論を予測に生かさないことがしばしばだ。予測をすれば、それが当たったかどうかで、その理論の妥当性は外部の人でもわかる。

 エコノミスト、経済学者はこうした試練になる予測をあまり行わない(やっても個人が特定できないようにする)が、まれに予測せざるを得ないときもある。昨年10月に決定され、今年4月から実施された消費増税だ。消費増税した場合、経済がどのようになるかを予測するのは、これまでの経済理論で十分にできるので、これはエコノミスト、経済学者の力量を測るいい機会だ。。

 
 昨年、政府に呼ばれて意見を述べた人の氏名や資料は、ここ(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/  )にある。おそらく日本を代表する学者も含まれている。ところが、彼らの予測は、消費増税しても経済に対する影響は軽微ということだったが、ほとんど当たっていない。それが意味するところは、経済理論を使わずに単なる願望を述べただけか、予測するまでに経済理論を使いこなせてないか、正しく経済理論を理解していないかだろう。

 経済予測を商売とするエコノミストの予測能力も低い。興味のある方は、ここ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40156)をご覧いただきたい。3ヶ月先の予測について、デタラメにサイコロを振ったのと大差ないくらいだ。この人たちのの多くも消費増税賛成であるが、やはり1年前には消費増税しても経済への影響は軽微であると言っていた。結果としては間違いだった。
いずれにしても、こういう人たちの意見をきいたところで、時間のむだ使いだ。

 ところが、政府は、来年10月からの消費増税を決断するために、再び昨年意見を聞いた有識者に聞こうとしている。

 間違った有識者の意見を聞けば、再び間違う可能性は高い。そのとき、政府はどう言い訳するのだろうか。一度間違った人の意見の逆をした方が、ひょっとしたらいい結果になるかのしれない。ということは、有識者に意見を聞くというのは、消費増税を見送るサインかもしれない。これはちょっと楽観的すぎるかもしれないが。
 

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霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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