浮世絵から現代アート、フィギュアまで!? ”少女”の文脈をマジメに扱った『美少女の美術史』展がカオス [オタ女]

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浮世絵や近代美人画から、マンガ・アニメ・現代アートで描かれる少女を包括的に捉え直し、100名以上の作家・クリエイターの作品を集めた『美少女の美術史』展。青森県立美術館に引き続き、2014年9月20日から11月16日まで静岡県立美術館に場を移して開催されています。その内容は竹久夢二や中原淳一、内藤ルネといった大正・昭和期の担い手だけでなく、鈴木春信、喜多川歌麿ら江戸期の浮世絵美人画に描かれた女性像や気鋭の若手アーティストの作品、さらにはアニメキャラクターのフィギュアや初音ミクも題材にするというチャレンジングな企画展となっています。

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若手気鋭アーティストの巨大バルーンがお出迎え

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会場ロビーに入っていきなり目に入るのが、ファッション誌『Zipper』の連載『愛ごよみ』などでも知られているタカノ綾さんによる6メートルにもおよぶバルーン作品「精霊船に乗って」。その表情や頭の上の白鳥がなんともキュートでユーモラスですが、背中の曲線がしなやかを通り越して媚態一歩手前という印象を与えてくれます。”少女”の持つ危うさを内包した作品といえるのかもしれません。

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1992年生まれで、村上隆さん主宰のKaikai Kikiでも注目されている女性アーティストobさんが青森開催の期間中にライブペインティングを敢行した「こんどうまれてくるときは」。イタコ伝説のある青森の民話を題材にしている一方、ネットでおなじみの”ゆっくりしていってね”の顔も見えるという奥行きのある作品になっています。

大正・昭和期の少女雑誌からコミック誌の付録まで

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2Fの本展示フロアを入ると迎えてくれるのは、明治から昭和初期にかけてのすごろく。企画展を合同で手がけた『トリメガ研究所』の川西由里さん(島根県立石見美術館)によると、都市と地方の生活が左右で分かれている構図が「少女向けなのにシビアで現実的」とのこと。

大正・昭和初期の少女雑誌などについては、竹久夢二(1884-1934)や中原淳一(1913-1983)、蕗谷虹児(1998-1979)が活躍した『婦人グラフ』『少女画報』『ひまわり』などを網羅。ただ時代ごとに並べるのではなく、高橋真琴の美少女像を配置しているあたりが面白いところ。

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『りぼん』や『少女フレンド』の本誌や付録も展示。特に水森亜土の人形やグッズが揃っているのはファンにはたまらないのでは? 陸奥A子、田渕由美子、太刀掛秀子といったマンガ家の昭和50年代のアイテムも目にすることができます。

美人画とアニメフィギュアが同一フロアに

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ポスターなどで観られるために描かれた作品を「観用少女」と定義するなど、独自のカテゴライズが特徴となっている今回の展示。桜文鳥さんによるスーパーフィギュアと、矢崎千代二(1872-1947)らの洋画、さらには『最終兵器彼女』のイラストやアニメ作品のフィギュアが同じ空間に配置されており、そのカオス感がステキ!

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「憂い」や「神秘」などのキーワードのもとに構成されたフロアには、現在進行形で活躍している気鋭の画家・アーティストの作品も多数。「美少女」という軸のもと、過去の作品とどのような文脈があるのか位置づけをしていくという意図が感じられます。

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いちばん最後のフロアには、正面から見つめ返す少女を描いた作品群が。

『トリメガ研究所』の村上敬さん(静岡県立美術館)さんは、中でもコスプレイヤーのオフを描いた石黒賢一郎さんの作品について「観られていることをはっきりと意識している少女たちに向けられた”はしたない”まなざしは、少女絵画を観る意味を問いかけます」と解説。確かに、まじまじと見ていると少しばつの悪い感情が湧き上がってくるかも……。

キャッチフレーズは『マクロスF』が元ネタ!? オリジナルアニメも製作

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2014年9月20日には、『トリメガ研究所』の工藤健志さん(青森県立美術館)、川西さん、村上さんの3名が揃ったトークショーを実施。7月から9月までの青森開催では約34000人を動員して「驚いている」という工藤さんは、「展覧会は東京で開催することが当たり前のようになっていますが、地方でないと見れないものもあるのでは」と語り、三館共同で企画した意義を示唆。一方で、本来の専門分野を飛び越えたキュレーションや、美少女の定義づけが「なかなか固まらなかった」といい、従来のカテゴリーに拠らず社会的背景も目配りしつつマトリックスして作品を配置する展示手法について、出品の協力を求める交渉の際にも「大変だった」といいます。

村上さんによると、キャッチフレーズの「美少女なんているわけないじゃない」について『マクロスF』の「歌で銀河が救えるわけないでしょ」から取ったとのこと。少女=「象徴的に誰のものにもなっていない女性」として、いろいろな人の共同幻想や妄想の中にあるものを描いているとしており、概念としての「少女」像という意味あいを強調。一方で、作品を観賞する「まなざし」に着目したことにより、「人間の関係性が浮かび上がる」という普遍的なテーマ性にもつながると語ります。

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『美少女の美術史』展では、太宰治の『女生徒』を塚原重義さんを監督に迎えてアニメ化。歌手の遊佐未森さんの朗読により、少女の一日の心象風景を描き出しています。『トリメガ研究所』の3名が原作で印象的なシーンを抜粋した中には、少女が自室の鏡を見て「自分の顔ではないみたい」とつぶやくところも。展示のテーマとリンクしている箇所を照らしあわせながら観賞すると新しい発見があるかもしれません。

美少女という概念を日本美術史の枠組みで再構築することに挑戦しているこの企画展。静岡の後には島根県立石見美術館で2014年12月13日から2015年2月16日まで開催予定となっています。少女文化が好きな人だけでなく、現代アートに関心がある人にとっても注目すべき内容なので、お時間に余裕がある時に足を運んでみてはいかがでしょうか。

美少女展オリジナルアニメ予告編 – YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=oJqS823fJ6I [リンク]

美少女の美術史 ~憧れと幻想に彩られた私たちの偶像~

会場:静岡県立美術館
   静岡県静岡市駿河区谷田53-2
   054-263-5755

会期:2014年9月20日~11月16日
休館日:月曜日(祝日に当たる場合は開館し、翌火曜日が休館)
時間:10:00~17:30(展示室への入室は17:00まで)

美少女の美術史(公式サイト)
http://bishojo.info/ [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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