重症で寝たきりも「慢性疲労症候群」とは

厚生労働省、慢性疲労症候群の診断・治療状況の調査へ

重症で寝たきりも「慢性疲労症候群」とは

普通の社会生活が送れないほど強い疲労感が続く「慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)」について、厚生労働省は、患者の日常生活や、実際の診断・治療状況を把握する調査を始めることとなりました。慢性疲労症候群とは、どのような病気なのでしょうか?

慢性疲労症候群は、原因不明の強い疲労感や頭痛、脱力感などの症状があり、有効な治療は見つかっていません。その患者数は、国内に約30万人とも言われています。確定診断に結びつくような検査異常は同定されていないため、その診断には臨床症状を中心とした診断法が用いられています(日本では、厚生省慢性疲労症候群診断基準が用いられています)。簡単に言うと、「(1)生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返すこと」と、「(2)慢性疲労の原因と考えられるような疾病を除外すること」が、診断の最低条件となります。

つまり、6ヶ月の間は診断がつかないため、日本では病気ではなく「怠けている」という偏見を職場で持たれてしまう場合が多いのが現状です。また、新しい概念のため、すべての医師が、この疾患を正しく認識しているわけではないことも問題です。難病の医療費助成の対象外で、障害者総合支援法の福祉サービスを受けられる患者も限られています。

重症で寝たきりに近い患者も少なくないが、実態がはっきりしない

現代社会では、多くの人が疲労しています。では、ここでいう「疲労」とは、どの程度のものなのでしょうか?慢性疲労症候群と診断されるには、「全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である」以上の疲労が診断の目安となっています。つまり、日常生活がきちんとできない程度の疲労です。

では、疲労以外にどのような症状があるのでしょうか?

■微熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒
■咽頭痛
■頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張
■原因不明の筋力低下
■筋肉痛ないし不快感
■軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
■頭痛
■腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
■精神神経症状(羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ )
■睡眠障害(過眠、不眠)
■発症時、主たる症状が数時間から数日の間に発現

以上の症状のうち8項目を満たすことが必要です。

重症で寝たきりに近い患者も少なくない病気ですが、いまだ実態がはっきりしていません。また、悪性腫瘍や自己免疫疾患などの鑑別も必要なので、日常生活に支障を及ぼすような疲労を覚えたときは医療機関を受診しましょう。

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