体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

「未来は音楽が連れてくる」佐々木俊尚氏 × 榎本幹朗氏 特別対談【前編】

「未来は音楽が連れてくる」佐々木俊尚氏 × 榎本幹朗氏 特別対談【前編】

佐々木俊尚 × 榎本幹朗 対談【前編】

(L to R 佐々木氏、榎本氏)

音楽業界はもちろん、IT、Web業界をはじめ様々な方面から大きな反響を呼んできた榎本氏の連載「未来は音楽が連れてくる」。その連載もあと数回を残すところとなった。そこであとがきに代え、ネット、メディアに広い知見を持つ佐々木俊尚氏と本連載について語っていただいた。
(Jiro Honda)

佐々木俊尚(ささき・としなお) ジャーナリスト
1961年兵庫県生まれ。大阪西成・玉出で育つ。
愛知県豊田市に転居後、愛知県立岡崎高校に進学。1981年、早稲田大学政経学部政治学科入学。
1988年、毎日新聞社に入社。東京社会部で警視庁を担当した際にはオウム真理教事件に遭遇。ペルー日本大使公邸占拠事件やエジプト・ルクソール観光客虐殺事件などで海外テロも取材。
1999年、アスキーに移籍、月刊アスキー編集部でデスクを務める。
2003年、独立してフリージャーナリストに。
著書「電子書籍の衝撃」「キュレーションの時代」「当事者の時代」「レイヤー化する世界」など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/pressajp
Twitter:https://twitter.com/sasakitoshinao
HP:http://www.pressa.jp//

榎本 幹朗(えのもと・みきろう) 音楽コンサルタント
1974年東京都生まれ。
上智大学英文科出身。大学在学中から映像、音楽、ウェブのクリエイターとして仕事を開始。2000年、スペースシャワーTVとJ-Wave, FM802、ZIP-FM, North Wave, cross fmが連動した音楽ポータル「ビートリップ」にて、クロスメディア型のライブ・ストリーミング番組などを企画・制作。2003年、ぴあ社に入社。モバイル・メディアのプロデューサーを経て独立。現在は、エンタメ系の新規事業開発やメディア系のコンサルティングを中心に活動中。2012年6月より「Musicman-NET」で連載「未来は音楽が連れてくる」を執筆開始し、その内容が業界内外の注目を集めている。
Facebook:http://www.facebook.com/mikyenomoto
Twitter:http://twitter.com/miky_e

1.

連載の経緯

佐々木:とても刺激的でスリリングな連載ですね。ものすごい情報量で、データも細かく分析されていますし、ロジカルに書かれていて感動しました。衰退ばかりが叫ばれている音楽産業の現状において、実はそういう面ばかりではないんだよと、ここまでまとめられた論考というのは恐らく今までなかったと思います。

榎本:そう仰っていただいて光栄です。この連載を企画した時、僕自身が原稿の売り方も含めてフリーミアムモデルでやろうと思っていました。正直に言うと、連載の目的は世界の音楽産業を変えたいということです。それを実現するための連載ですから、原稿料は自分の中で優先順位が低かったのです。「Musicman-NET」は日本におけるアメリカの「Billbord.biz」のような立ち位置にあります。僕が一番語りかけたいユーザーが閲覧していますので、一緒にやろうということになりました。この連載は業界のプロ向けに、常に全力投球で書いています。「一般の方々に分かりやすいように」という配慮は、敢えてしていません。ところが、いざ連載してみると20代を中心に音楽ファンからも反響をいただいています。

この連載では、海外の新しいサービスを紹介して「日本は遅れている。保守的だ」と批判するスタンスはあえて取りませんでした。理由はみっつあります。「新サービスを紹介します」では文章にさして価値が出ないことがひとつ。「海外に追いつけ」では独自性もなく、自分がやる必要もないだろうと思ったのがふたつ目。そして「批判的な方が人気は取れるかも知れないが、業界のみなさんが心を開くことはないだろう」と考えたのがみっつ目です。

また、「ネットで5,000字以上は読まれない」という常識を破り、ブログ文化の文章スタイルも採用しませんでした。一回あたり1万字から2万字の分量で、短編のスタイルで出しています。ネットで長文は受けないだろうなと思っていたのですが逆で、15,000字の回が一番人気で驚きました(連載第38回)。僕の連載は、本数冊を短編に圧縮した「まとめ」のように捉えられて、ウケているのかもしれません。ネットで文章の新しい需要が生まれつつあるのかも知れませんね。

佐々木:最近ネットの世界ではすごくクラスタ化/細分化が進んでいて、従来のように「短文で既得権益等を批判する」という分かりやすいものがウケる部分もありますが、その一方で文章を読み書きするレベルも相当高くなっています。

この連載も、ひょっとしたら音楽業界の人よりもWEBやソーシャルメディアの世界に専門的に親しんでいる層のほうがキレイに理解できているかもしれないですね。そちらのほうが親和性が高いかもしれない。

榎本:そうかもしれません。この連載では、結局インターネットでどういう風にゲームのルールが変わったのかということを説明しているんです。レコード産業は音源の複製行為を独占することで100年以上、ビジネスを展開してきました。しかしネットワークを通じデータが無数の端末に転写されていくのが、インターネットの技術的な本質なんですね。テクノロジー的に、複製は課金のゲートウェイになり得なくなってきました。これがiTunesがCDの代替になり得なかった理由です。この流れがライブ市場の重視に繋がったのですが、それだけですとレコード産業の本質である「録音」のマネタイズを諦めただけになってしまいます。

1 2 3 4 5 6 7次のページ
Musicman-NETの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。