インスト・ブラジル音楽の奥深さに迫るディスク・ガイド
ウィリー・ヲゥーパー著『ブラジル・インストルメンタル・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS刊)
この度、ブラジル音楽の中でも、インストもののみに焦点を当てた『ブラジル・インストルメンタル・ミュージック・ディスクガイド』がDU BOOKSより出版された。
ブラジル音楽と言えば、情熱的なサンバ・ビートを除けば、やはりボサノヴァなど歌のイメージが強いかもしれないが、本著では、そんなブラジル音楽の“インスト”にフォーカスしたディスク・ガイド。
ブラジル、というか南米は、ヨーロッパの植民地政策の名残りで、宗主国欧州、奴隷制下のアフリカ、そして原住民インディオの3つの文化が混ざり合いっている。そこで生まれた音楽も、やはりそんなさまざまな文化を背景に持ち、ハーモニーやリズム、そしてそれを奏でる楽器まで独自の音楽文化を形成している。ブラジルの音楽は、第二次世界大戦の後、大衆文化として、メディアを通してポップ・ミュージックが伝播されるなかでも、欧米の音楽の影響も受けながらも、そうした独自性を残し、現在でもそれが大きな魅力となって、ここ日本を含めて、世界中にファンを持っている。軍政権下の悲しい記憶もあいまって、知れば知るほど魅力的だ。そんな音楽的魅力を形成する、グルーヴや質感など、それを構成するのはやはり演奏者たち。本著はそんなブラジル音楽を奏でる楽器奏者にフォーカスを当てたディスク・ガイドと言えるだろう。
基本の構成は各デケイド/1950年代〜2010年代に渡るディスク・ガイドを中心に構成され、各時代のショーロ、ボサノヴァ、サンバ、ジャズ、フュージョン、さらにはフォークロアなどが掲載されている。
インストということで、少々、とっつきにくい主題かもしれないが、巻頭にて、前述のようにさまざまな形で進化してきた、ブラジル独自の楽器体系の解説からはじまり、そして時代を超えて重要アーティストのみを集めたディスク・ガイド・コーナー=いわば「まずは彼らを聴け」とでも言うべきコーナーがあって、ガイドブックとして非常に親切な構成。
こ、これはちょっと財布の紐が……。
(河村)
・DU BOOKS公式紹介ページ
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。