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【宙にあこがれて】第45回 宇宙博2014・おたくの歩き方

千葉県の幕張メッセで開催されている「宇宙博2014」。リピーターも多く、とても盛況です。宇宙博については既にさんざん紹介されているのですが、ちょっと趣向を変えて「おたく」っぽい視点から会場を歩いてみましょう。展示の新たな側面が見えてきますよ。

NASAゾーンは一見退屈な展示に見えますが、実はお宝の山。全部語ると丸1日以上かかってしまうので、判りやすいものをいくつか。

アメリカの宇宙開発に大きな役割を果たしたのが、ドイツ出身の技術者ヴェルナー・フォン・ブラウン。彼に関する資料が展示ケースにまとめられていますが、注目はA4(V2)ロケットの外板とインバータ(モーター)。腐食が進んだ広い外板部分が2つと、細長いストリンガー(強度を高めるリブ)部分ですが、日本で見る機会はありません。それと一緒に、開発が行われていたペーネミュンデ陸軍兵器実験場(バルト海に浮かぶウーゼドム島にあった)に関する封書も展示されています。開設当時は極秘の実験場だった訳ですが、どんなことが書かれているのか、手紙の内容も見てみたい……。

【関連:第44回 日本では見られない!? 航空ショウのアクロバット】

フォン・ブラウン関連資料

フォン・ブラウン関連資料

ペーネミュンデに関する封書

ペーネミュンデに関する封書

A4(V2)ロケットの外板

A4(V2)ロケットの外板

A4(V2)ロケットのインバータ(モーター)

A4(V2)ロケットのインバータ(モーター)

この展示ケースの反対側に鎮座する大きな円錐形の物体は、フォン・ブラウンがアメリカに亡命した後に開発した「ジュピターロケット」のノーズコーン。実はフォン・ブラウンが開発し「ジュピター」の名を冠するロケットは、短距離弾道ミサイルのPGM-11レッドストーンを改良した試験用ロケット「ジュピターC」と、中距離弾道ミサイル「PGM-19 ジュピター」の2種類があります。それぞれ設計から全くの別物なのですが、これらふたつのジュピターは同時期に存在し、同じ陸軍で似たような試験をしていたので非常に紛らわしいのです。

展示されているこのノーズコーンは、恐らくPGM-19 ジュピター中距離弾道ミサイルのもの。大気圏再突入時の空力加熱(高速で飛ぶ物体の前面で空気が圧縮されて温度が上昇し、物体表面が加熱される現象)から中身(弾頭など)をちゃんと守れるか、という試験として打ち上げられたもので、表面は白く塗装されていたのですが、それは熱によって蒸発しています。再突入時の高熱で保護材(アブレータ)が蒸発し、表面が滑らかになった先端部と、それほど加熱されずに元々のアブレータのざらざらした表面が残る後部とを見較べて、再突入時にどれだけの熱が、どのように加わるのかを確かめてください。

ジュピターのノーズコーン

ジュピターのノーズコーン

ちなみに、ジュピターCロケットを改良したジュノーIロケットが1958(昭和33)年1月31日、アメリカ初の人工衛星エクスプローラー1号の打ち上げに成功しています。ミサイルのPGM-19 ジュピターからは、改良型を基にして多段化した衛星打ち上げロケット、ジュノーIIが生まれており、1959(昭和34)年3月3日、アメリカ初の月探査機パイオニア4号を打ち上げました。ジュノーIとジュノーIIは前記の通り、基になったのは全く別のロケットですが、2・3段目が共通です。……更にややこしくなりましたね。

その後方にあるエンジンは、1962(昭和37)年から実戦配備されたアメリカ初の多段式ICBM(大陸間弾道ミサイル)タイタンI(HGM-25A)の1段目・2段目エンジン。縦と横になっているので判りにくいのですが、実は同じLR-87-3というエンジン。1段目は2つのエンジンを束ねたクラスター構成にして、推力をかせいでいる訳です。そして同じエンジンを使うことで、別々のエンジンを使用するよりも不安要素が減り、信頼性が上がります。

タイタンIのエンジン

タイタンIのエンジン

タイタンIは酸化剤に低温貯蔵が必要な液体酸素を使っていた為に、燃料や酸化剤を入れて保管しておくことができず、発射のたびに充填する必要があった(準備に15分ほどかかる)為に即応性が低く、実戦的ではありませんでした。この為常温保管が可能な推進剤を採用した改良型、タイタンII(LGM-25C)に置き換えられ、わずか3年で退役しました。タイタンIIはエンジンも異なります。

タイタンシリーズは人工衛星やジェミニ宇宙船の打ち上げロケットにも転用され、2005(平成17)年まで使用されていましたが、打ち上げ用ロケットになったのはタイタンIIからで、展示されているタイタンIは純粋なミサイル。弾道ミサイルを持たない日本において、そのエンジンやノーズコーンを見る機会というのも非常に少なく、貴重な経験です。

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