過去のツイートの数々から見えてくるものとは?

過去のツイートの数々から見えてくるものとは?

 昨年、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの入門書ともいうべき『動きすぎてはいけない』でも話題を呼んだ、哲学家・批評家の千葉雅也さんによる新書『別のしかたで ツイッター哲学』がこの度、刊行されました。

 ツイッターでのフォロワー数が1万人を超える千葉さん。本書には千葉さんが2009年から2014年にかけてツイートした文章の中から、厳選されたものが収録されています。

「新しい順序、見出し、余白、表紙など、造本によって過去のツイートに新しい『作動配列 agencement』(ドゥルーズ&ガタリの概念)を与え」たのだ、と千葉さんは言います。

 またその内容は、「風物への感想、思考法・勉強法、行動、生/性について、芸術論、哲学研究のアイデアなど、色々な内容のフラグメント(断片・断章)が、時系列ではなく、新しいリズムで提示されています」と、あとがきにて述べられているように、哲学的思考の断片を綴ったものから、日常生活の中でのふとした呟きまで、多岐に渡ったツイートの数々が見受けられます。

 ツイッターの140字という限られた文字数。そうした文字数の制約がある中で、千葉さんは自らの考えたこと、感じたことを如何に文章としてツイートしたのでしょうか。その一部を少し見てみましょう。

 2013年1月30日1時22分の、「中古のテーブル」と題されたツイートです。

≪中古のテーブルはいい。新品の天板だと、使い始めの頃は、そこに付く痕跡が「自分の痕跡」だと意識して、気になる。知らない経験を辿ってきたテーブルはスクランブル交差点みたいな感じがして、そこに向かうと自分は匿名者になる。カフェのテーブルがそう。それがなんだかとても気が楽になる。≫

 あるいは2010年4月23日0時58分のツイート「新宿に似合うのは」。

≪やはり新宿に似合うのは椎名林檎ではなく浜崎あゆみなのだが、マジであゆの音楽で泣き、励まされる人々が確かにいて、僕はその脇をすれ違い、ちょっと交わって、一人に戻って肩をすくめる。徹底的に凡庸に恋い焦がれ、デパスを抑えてレンドルミンで眠るような音楽。≫

 これらのツイートのように、日常生活で感じたことを何気なく描写した中に、思いがけない自分自身の価値観や、深い思索へと繋がっていく種が散らばっていることがあるのかもしれません。
 
140字以内で、ふと呟くからこそ現れるもの。自らのツイートも過去に遡って読み返してみると、新たな発見があるのではないでしょうか。

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