【アウトシュタットbyフォルクスワーゲン】フォルクスワーゲンミュージアム――今も輝き続ける”愛すべき馬鹿”たち
ウォルフスブルク市から少し離れたところに、“フォルクスワーゲンミュージアム”という博物館がある。ここは、フォルクスワーゲングループの歴史的な名車の数々が展示されている、ウォルフスブルクの知る人ぞ知る観光スポットである。
入館してすぐ、展示室に向かう10メートルほどの通路があるのだが、そこには伝統あるフォルクスワーゲングループの昔の広告がずらりと並んでいる。フォルクスワーゲングループは1937年に設立された後に第二次世界大戦など歴史的な出来事を経験しており、そういった社会情勢の影響を大きく感じ取ることができる貴重な資料と言える。
暴走する遊び心! ”愛すべき馬鹿”の歩み
フォルクスワーゲングループといえば、先日お伝えした“ヴェルターゼ”に代表されるように、メリハリのきいた(振り切った)大胆な遊び心を持った現代では貴重な自動車メーカーである。そしてここフォルクスワーゲンミュージアムにも、歴史的価値の高い名車の数々に紛れ込むように、ユーザーが制作したトンデモナイ車が展示されていたので紹介していこう!
参考記事
■【ヴェルターゼbyフォルクスワーゲン】フォルクスワーゲンファンの聖地! 空前のスケールで行われた車好きの祭典
https://getnews.jp/archives/595380
ユーザーの愛情を感じるカスタムカーの数々
“Seifenkiste”というカートレースのために制作されたというこの車。『フォルクスワーゲン』といえば今日まで続く『ビートル(カブトムシ、フランスではテントウ虫と呼ばれることも)』という名車があるため、それにちなんだ塗装にしたものと思われる。
地上を走行する際はレシプロエンジンを使用し、空中を走行(!?)する際は気流を推進力にすることができる画期的な車。なぜ熱気球のシステムを積もうと思ったかは分からないが、地上を走ることに飽きた制作者は空を飛んでみたくなったのだろう。
『ビートル』をモチーフに、木材を加工して制作された作品も。全体的な荒削り感はあるものの、室内の小物類やタイヤに至るまで作り込まれており、制作者の愛情が感じられる一台である。
女性物のハンドバッグのように、大胆にも編み込みボディとなっった車体。カブリオレ仕様であるが、車全体的に防水性が弱点となっている。フルサイズどころか実写のボディを加工しているため保管スペースには困るものの、自宅に飾りたくなる装いである。
まるでディズニー映画から飛び出してきたようにロマンチックな車は、結婚式用につくられた『ビートル』である。スケルトンボディは金属細工となっており、完成度・高級感は確かなものであった。ちなみに「Hochzeitskäfer」でググると実際の結婚式で新婚夫婦を乗せて走る姿がたくさんヒットするのでオススメ。全体的にギャグ成分が高いなかで、少し大人な雰囲気をもつ車であった。
これこそ“愛すべき馬鹿”なのかもしれない、『ビートル』を“ポルシェ”風の外装にカスタムした一台。張り出したレベルではないブリスターフェンダーが車幅を大きく増大させており、この場でなければ『ビートル』とはなかなか気付きにくいと思われる。それだけ完成度が高く、「よく見ると確かにビートル」というシュールさが何とも言えない、ある意味“暴挙”とも言える圧巻のカスタムだ。
大人が真剣に遊ぶとこうなる! もう笑うしかないフォルクスワーゲンの本気
これはカスタムカーではないのだが、第二次世界大戦中に開発された水陸両用車としてマニアの間で有名な『シュビムワーゲン』。筆者も実物を見るのは初めてで、このようにきれいな状態で保存されていることに驚いた。フォルクスワーゲンミュージアムの博物館らしさを分かりやすく伝えてくれる、価値ある一台である。車体後部に取り付けられた跳ね上げ式のプロペラがチャームポイント。
近年、オートクルーズなど自動車の無人技術研究が進んでいるが、その始祖とも呼べるロボット運転仕様の『ポロ』。車体前面にはセンサーと思われる装置が取り付けられており、開発が2001年とは思えない先進性を感じさせられる。中に目を向けてみると、当時最新鋭だったのであろう機械やコンピュータが座席を埋め尽くしている。ツッコミどころとしては、ハンドルやアクセルは物理的に操作する、あくまで”運転する”ロボットという点だろうか。メーカーにしかできない、夢のある一台である。
『ゴルフ』の両脇にボートのようなものが取り付けられた、その名も『シー・ゴルフ』。なんとこの車、変形し実際に水上を走ることが可能。車体とボート部を接続するためのクレーン部分には油圧式のシリンダーが採用されており、当時のフォルクスワーゲンの本気度が想像できる。あえてボートを作らず“水上を走るゴルフ”を作ったところに笑ってしまうのだが、制作に携わった方々も、半ば悪ノリにちかい感覚で笑いながら取り組んでいたことだろう。1983年の“ヴェルターゼ”に出展され、実際にヴェルター湖を走ったというから驚きである。
フォルクスワーゲングループとユーザーが共に歩いた軌跡を知る
フォルクスワーゲンミュージアムは、フォルクスワーゲン公式の博物館でありながら、ユーザーによるカスタムカーも数多く展示されていることが印象的。もちろん、フォルクスワーゲン謹製の“やり過ぎ”感が否めない素晴らしいカスタムカーも展示されているが、メーカーぐるみでユーザーの遊び心を応援している雰囲気を強く伝えてくれる。
車を愛する“車バカ”のなかには、「反メーカー」を掲げる層も珍しくはなく、サードパーティによるカスタムに傾倒したりすることもある。しかしながら、愛車を自分の感性でいじり倒すことの魅力をフォルクスワーゲンミュージアムは教えてくれる。こうした「ファンを後押しする文化」も含めて初めて、フォルクスワーゲンの歴史として語れるのだろう。フォルクスワーゲンとユーザーを繋ぐ確かな軌跡を、ここフォルクスワーゲンミュージアムで実感することができる。
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