弱者への住宅支援はなぜ難しいか

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弱者への住宅支援はなぜ難しいか

今回は今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

弱者への住宅支援はなぜ難しいか

別エントリでも書いたけれど、ホームレス問題と家計に対する家賃の圧迫問題は別だと思うのだよね。もちろん圧迫しないに越したことはないが、多少家賃が負担でも、だからといって人はホームレスにはならない。他の出費を切り詰めて、最後まで住宅は確保するはず。衣食住は人として最後の砦だからね。

ホームレスは失業など定期収入が断たれた人が住居を追い出されてなるのだから、失業率を減らさなければ解決しない。家賃を多少安くしたり、住宅供給を増やしたところで解決しない。

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では家計に対する家賃の圧迫問題。そもそも圧迫されているのか?がはなはだ疑問なのだよね。払う家賃が上昇しているという統計があるようだけれど、同じ条件の物件の価格は上昇していないという統計もある。となるとより条件のいい物件を「好む」ようになっただけではなかろうか。

何に金をかけるかはその時代の流行に依存する。よく最近の若者は車を買わなくなったとか言われる。車を買わない代わりに、よい住居を求めるようになったのかもしれない。

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そういうことを保留にして、家賃の負担を減らすことが正しいという仮定で考えてみる。それでも問題の解決は簡単ではない。まず思いつくのが、国が金をばら撒く方法。一番簡単ではある。

でもこれをすると単に家賃が上昇するだけの可能性が高い。それまで1万円の家にしか住めない人に、国が5000円支援したとする。つまり1万5000円まで出せるようになったわけだ。貸す側からすれば家賃を1万5000円に値上げしても借りてくれることになる。

それなら家賃を値上げするよね(苦笑)。単に賃貸業者の懐に入る金が増えただけ。下手をすると以前の住宅バブルみたいになってしまうかもしれない。

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じゃあ国が公営住宅を建設して直接貸せばいいだろうか。つまり同じ条件の住居を民間の業者よりも安く貸すわけだ。でもそれは見方を変えれば賃貸業者にとってはダンピングする強力なライバルが現れたのと同じ。

場合によっては民間業者も家賃を下げなければならないかもしれない。だってそうしないと借りてくれる人がいなくなってしまう可能性がある。

結果的に家賃が全体的に下がるかもしれない。借りる方は嬉しいけど貸す方はいままで1万円で貸せた物件が5000円でしか貸せなくなると、大損だよね…。それでいいのか?という話になる。そんなんで住宅市場が健全な形で発展してくのか…。わりに合わない商売となったら、民間業者は撤退しちゃうよね。するとますます国がやらなければならないことが増えていく。

一方で住宅を建設するために政府が土地を買い占めれば、土地の値段は上がるだろう。やっぱ土地を売る方も商売だから、なるべく高く政府に売りつけようとすると思うのだよね。

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となると結局は本当に安い住宅が必要な人に限定して、人数も市場価格に影響を与えないように最小限に絞り込んで、補助をするなり公営住宅を斡旋するなりすることになる。いまやってるのがそれだよね…。

政府が気前よく補助金を出せば、あるいは公営住宅をバンバン作れば、解決するという単純なものではない。都市部の住宅環境を整えすぎると、地方の過疎化も助長してしまいそうだし。政府は確かに金を持っている。でも金があれば問題が解決するというものではない。意外とできることは少なかったりする。いろんなモノがいろんな理由でバランスして現状があるわけで、国といえどもそれを強引に変えるのは容易じゃない。

そもそも誰でも常に「もう1ランク上の住宅に住みたい」と思うものだ。それは客観的に現状どんなに快適な住宅に住んでいる人でも、常に上を望む。ホームレスか否かはある程度客観性があるだろうが、住宅費が負担になっているかどうかは、そういう心理的なもの。

こんな笑い話がある。鉄道会社が列車のダイヤに何か不満があるかを利用者に尋ねた。利用者は「おおむね不満はないが、あえていえば全体的に発車時刻をあと5分遅らせてくれないか」。

執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年01月21日時点のものです。

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