お金のない社会は心地よい社会なのか

access_time create folder政治・経済・社会
お金のない社会は心地よい社会なのか

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

お金のない社会は心地よい社会なのか

昨今の「貧困ブーム」。もうこれはブームだよね、ブームだから理屈じゃない。ちょっと前に温暖化ブームがあったけど、あれも理屈じゃなかった。とにかく何かすることが大事!効果があるかないかなんて二の次。

この貧困ブームで、すべてがお金中心に回っている現代社会に嫌気がさす人が少なくない。お金なんてなくしてしまって、人々がお互い心と心の信頼関係で助け合う社会の方がすばらしいんだ!と。あるいは自分たちで農作物を作り、自分たちで食べる。自給自足の社会とかを夢見る人…。

   *   *   *

でも、そういう発想は別に新しいものじゃない。カルトとかが信者を集めて集団生活をするとか、良くある話。オウム真理教とか、カルトじゃないかもしれないけどヤマギシ会とか。

お金が存在するから、客観的な価値を与えられる。そうでないと主観的なものになる。子供同士が「この前○○貸してやったんだから、今度はおまえが××を貸せよ」とか言い合うのと同じで、○○と××の価値が同等かは、それぞれの主観で変わる。結果として「恩知らず」と決裂してしまう。

物々交換の取引がその場で完結するならいいけれど、「あの時~」とか過去に遡るともう、ぐちゃぐちゃ。で、取引をその場で完結させるのがお金なわけだ。その時取引に合意したのだから、後腐れがない。

   *   *   *

お金のない社会は、そこらじゅうでトラブルが起きる。あいつは恩知らずだから、もうあいつに何か与えるのはやめよう、と。だからカルトとかが行う集団生活は、教祖が強力なリーダーシップを発揮し、物流の交通整理をする。信者には教祖様が判断したことに異論を差し挟む権利がない。これだけ農作物を作り、これだけ労働をしなさい。そうすれば日々の食事をこれだけ与えます、と。そう考えると共産主義の計画経済と似てるね。お金がない社会というのは原始共産制だから。

「お金で解決できる」から、裁量の自由があるのであって、お金がないとあらゆる自由が制限されると思うのだよね。実際オウム真理教の出家信者なんか、出家する時に財産を寄付しちゃったから、抜けだそうと思っても外部に生活基盤がないので抜け出せない。集団生活を続けてれば、とりあえず食事は得られるわけだ。ただ労働してもお金はもらえないから、外の世界には戻れず、永遠にその中で生活するしかない。

自給自足と言っても電気やガソリンは外部から買わなければならないだろう。自動車とかも必要。医療とかも外部に頼らなければならないだろう。結局そういうものを買う「外貨」を稼ぐために、生産した何らかのものを外部に売らなければならない。自給自足の共同体で外部に売れるものというと、農作物ぐらいしか思いつかないが、それも国内の他の農家と価格・品質の競争をしなければならないわけで、容易な道ではないだろう。オウム真理教はショップブランドのパソコンを作って売ってたが。「うまかろう安かろう亭」というラーメンチェーン店も経営していたな。

   *   *   *

なんかお金がない社会は、自由で、人々が善意で結びついている牧歌的な社会という幻想を抱いてるのではなかろうか。子供の頃はお金を持ってないから、なにか欲しいものがあっても、すべて親と交渉しなければならない。「そんなの必要ないでしょ」と言われれば、それまで。お小遣いを定額でもらえるようになれば、その中で自分でやりくりする自由が与えられる。親から見ればくだらないものでも、買えるようになるわけだ(苦笑)。

お金を廃止すると、大人になっても、そういう自由がないということ。狭いコミュニティの中だと誰がなにをやってるか一日中誰かに監視されるわけだし。何かをやったり手に入れるには、周囲にその価値を説得して回らなければならない。周囲の同意を得ないと何もできないって、かなり不自由だと思うんだけどね。あまり楽しい社会には思えない。大多数が賛成することしかできない社会って、保守的でつまらない社会だと思うんだけどね、特に若者にとっては。

そんな社会がいいんですかねぇ。高齢者が望むのはわからないでもないが、若者にとっては耐え難いと思うのだが。もしそういう社会が素晴らしいなら、小学校生活や大学生活も素晴らしいに違いない。むろんそれらは確かに一面素晴らしい。しかし素晴らしくない面もたくさんあったはず。

   *   *   *

たぶん趣味と実生活を勘違いしてるのだと思うのだよね。趣味で家庭菜園とか作るのは楽しいだろう。嫌になったらやめてもいいのだし。でもそれと生活のために農作物を作る作業は別物。嫌でもやめるわけにはいかない。おいそれと逃げられない。

某プロブロガーがどっかの人口の少ない離島にみんなで住民票を移せば村長になれるとか脳天気なことを言っているけど、それって村の乗っ取りだよね。元から住んでいる人間にとってはえらい迷惑はなし。

オウム真理教が行く先々で猛烈な反対運動にあった。市役所が住民票の移動を拒否することすらあった。拒否は違法だが、そこまで反発が強かったわけだ。

面白半分に地域社会をもてあそんだら、袋叩きにされると思うんだけどね。

参考サイト:
「田舎でのんびり農業でもやって暮したい←農業舐め過ぎだろ」 2013年10月03日 『[2ch]お料理速報』
http://oryouri.2chblog.jp/archives/8078513.html

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年10月10日時点のものです。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. お金のない社会は心地よい社会なのか
access_time create folder政治・経済・社会

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。