【連載コラム】遊津場の関西アーティスト週報vol.123「あなたに雨を贈るアルバム、ポンツクピーヤ」

【連載コラム】遊津場の関西アーティスト週報vol.123「あなたに雨を贈るアルバム、ポンツクピーヤ」

こんにちは。神戸在住の音楽キュレーター、遊津場(ゆつば)です。普段は邦ロック系インディーズアーティスト情報をSNS、メディア寄稿、自主イベント開催など、様々な手法で発信する活動をしています。

そして今回、OTOTOYで私のメインの活動地域である関西エリアで活躍する若手アーティストの様々なトピックを発信する機会をいただきました。これを読めば、関西邦ロックシーンの最前線が分かります。どうぞ、ご贔屓に。

「あなたに雨を贈るアルバム、ポンツクピーヤ」

京都のポップロックバンド・ポンツクピーヤが3rdアルバム『曇り空に描いたブルー』をリリースします。今作は9/18からの東名阪ツアー「まだ夢を見ている」の会場販売となり、ツアー終了後に配信が予定されています。東名阪ツアーの対バンには大阪・忘れらんねぇよ、名古屋・炙りなタウンとミニマムジーク、東京・フリージアンと実力派揃いです。

アルバムを一足早く聴かせていただいたのですが、人間の感情の変化を繊細かつ大胆に描いたアルバムです。グラデーション的になっているところもあれば、途端に色が変わったり、気付かぬうちに戻っていたりもしています。人間の感情ってそんなものですよね。ずっと落ち込んでいても、コンビニでたまたま買ったスイーツが美味しかったら嘘みたいに元気出ますし、逆に朝からスムーズに過ごしてたのに、昼飯のパスタの乾麺を床にぶち撒けただけで、一気に絶望に堕ちますから。

“昔ヤンチャしてたのに今は幸せそうな奴”とか、“何でそんな稼いでいるのか分からない奴”、“こちとらまだ思ってるのに他に大切な人ができてるあの人”への嫉妬や未練から生まれるポンツクピーヤらしいエネルギーの軸はそのままに、重ねた経験から少し大人になってそれらへの彼らなりの感情の対処を音楽で示す強い覚悟と、次への一歩を感じるアルバムでした。

その感情の描き方に感動するのは、当然共感があるからですが、それはポンツクピーヤと僕らはタガを外せない者同士だからだと思います。言うなれば、どれだけ気持ちが沈んでも曇天止まりなのです。そういうのが分かってるからこそ「笑っておくれ」の歌詞の〈雨に打たれない悲劇など誰も見ない〉は歌っている彼ら自身にも辛辣に刺さるでしょうし、「おかしくなれない」の狂気さには正直不慣れさも感じました。そんな彼らが歌うからこそ「もしここで土砂降りくらいどうしようもなくなれたら」と思ってもできない人に、心ばかりの青色の雨粒を与えることができるんですよね。それだけで時を進められる人は多いと思います。雨が降るということは時が進んでいる証拠ですから。配信版ではラストを飾る曲「泣きたくなるけど笑うみたいな」は、それまでの感情の動きの総まとめとなっている楽曲で、その動いた時計の未来に向かいたくなります。それがハッピーエンドかバッドエンドかも分からない、確かめようがないように思える終わり方も、このアルバムならではと思いました。

今まではRADWIMPSの影響を強く感じましたが、今作はもう1つの影響元であるというBUMP OF CHICKENの影響を強く感じたのも特徴です。ひょっとするとこの2組みたいに、バンドサウンドっぽさから逸脱する面も、今後ポンツクピーヤにも出てくるかもしれませんが、そうなってももう大丈夫なくらい遺しているアルバムです。ぜひ聴いてみてください。

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