映画『氷血』北山宏光&加藤千尋インタビュー ホラー作品初挑戦で見えたもの
雪に閉ざされた世界を舞台に、家族の平穏な日常が突如“白い怪異”に侵されていく《侵蝕感》ホラー『氷血』が公開中です。
【ストーリー】幼い息子・晶を連れて、豪雪地帯にある夫の実家に移住した稔(北山宏光)と悠希(加藤千尋)の夫妻。穏やかな日常を願った二人だったが、認知症の父・茂は、なぜか悠希にだけ激しく怯え、亡き妻の名を叫ぶ。ある朝、茂は異常な姿で怪死する――その瞬間を境に、家族は疑念と恐怖に苛まれ、やがて、家の中には不気味な“白い女”が次々と現れ、日常を侵していく―稔は気が触れたかのように、“白い女”の絵を描き続け、幼い晶の目には母の姿が次第に“別の何か”へと映りはじめ、家族は一人、また一人と壊れていく――。雪の結晶に魅入られ、理性を失った稔、侵蝕される悠希、そして危険にさらされる晶。これは、呪いか、幻想か、それとも現実なのか。雪原が鮮血に染まるとき、未知の“白い恐怖”が姿を現し、残虐に暴走するー
本作の主演を務めた北山宏光さんと、加藤千尋さんにお話を伺いました。
──本作楽しく、怖く、拝見いたしました。お2人共ホラー作品への出演は初となりますね。
北山:映画出演自体も7年ぶりとなりました。そして僕自身、環境を変えてから1本目の映画であり、ホラーというジャンルにも初挑戦ということで、新しいことに飛び込んでいくことに、とてもワクワクしました。脚本を読んだ時には、ホラーの演出もそうですし、「どのくらいの雪なんだろう?」と雪景色について想像がつかない部分がありました。未知数な部分があるからこそ、稔という人物が抱える恐ろしさをどこまで深く掘り下げられるか、トライしてみようと思いました。
加藤:私はもともとホラーが大好きで。
北山:僕はホラーが苦手で…。タイプが逆なんだよね(笑)。
加藤:そうなんです(笑)。このお話をいただいた時は本当に嬉しくて、絶対に成し遂げたいと思いました。内藤監督作品のファンでもあったので、「今回はどんな作品なんだろう?」とワクワクしながら脚本を読ませていただきました。ホラー作品の脚本を読むのは初めてで。読んでみると「あー」「うー」という叫び声やうめき声が飛び交っているので、難しそうだなと思うと共にワクワクしました。
──お2人が演じたキャラクターについてお伺いします。稔は作中の中で印象が変化していく人物ですね。
北山:稔の心の動きに関しては、内藤監督と「何パーセント」と、数字で共通認識をつかみながら考えていました。観客の方々が違和感を感じる瞬間があったとして、「この段階ではそこから裏の顔を何パーセントくらいにじませてみよう」、「ここでは何パーセントくらい引いてみよう」と、少しずつ揺らしていく感じで作っていきました。
──悠希は儚くて、観客が「この先どうなってしまうのだろう」と心配してしまう人物でしたね。
加藤:悠希は基本的に孤独や弱さを抱えた役柄ですが、だんだん状況が変化していき、私が大好きな展開を迎えていきます。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、これまでホラー好きとして作品を見てきた経験が、大活躍しました!
撮影に入る前に、監督から「参考に『ババドック 暗闇の魔物』(2014)を観ておいてほしい」と言われました。現場でもたくさん話し合いながら、悠希の顔や首、腕の角度や、動かすスピードについても研究を重ねていきました。
Ⓒ2026映画「氷血」製作委員会
──本作の魅力の一つが雪景色ですが、観ているだけで凍えてしまいそうでした…!
北山:道路も見えなくなってしまうほどの、ものすごい量の雪が積もるので。撮影場所に行く時にも、本来曲がるべき道が雪で見えなくなっていたり、本番中にも雪がどんどん積もっていくので、車両部の皆さんが雪かきをして帰り道を作ってくださって。
加藤:本当に寒かったです。雪景色は本当に美しくて目には喜びがあるんですが、体は正直なので…。どうやったら体が温まるのかという研究をしていました。
北山:そんなことしてたの?
加藤:毎日温かいスープを水筒に入れて、寒くなったらそれを飲んだり。薄着のシーンでは、体がぽかぽかするホットジェルを塗るようにしていました。
北山:そんなものあるんだ! 僕はやっていなかったので、すごく寒かった…。それ、早く教えて(笑)。
加藤:すみません(笑)。悠希が雪に倒れ込むシーンは本当に寒くて、体がガクガク、ブルブル震えて。悠希の表情や声も、すべてリアルな反応です。
北山:ずっと泊まり込みで撮影をしていたので、みんなで雪国で生活しているような雰囲気もあって。現場にはスタッフさんも含めて僕らも「撮り切るぞ!」という団結力があったような気がします。
加藤:本当にそうですね。「このスープ、美味しいよ!」って声を掛け合ったり。
北山:そうそう。「ここ、あったかいよ!」とか「ここ、電波入るよ!」とかね。湖の上を歩くシーンは、僕たちもガチガチに震えていたのに、晶(劇中での2人の息子)はしっかりやり遂げたので素晴らしかったです。カットがかかった瞬間、「寒い、寒い!」って車の中に走って行きました(笑)。
加藤:すごく天真爛漫な子で、可愛かったです。撮影中、お誕生日が近かったのでプラレールをプレゼントしました。
──皆さん一丸となって乗り越えたのですね。メインとなっている絵をはじめ、美術の恐ろしさが素晴らしいですね。
加藤:ずっと薄暗かったですよね。とても大きな絵が飾られていて、本当に怖かったです。美術部さんのお力で、この映画の雰囲気を存分に作っていただいているなと思います。
北山:撮影中も絵を見るとビクッとしてしまうほど恐ろしかったです。僕はもともとホラーが苦手ですけれど、こうしてホラー作品の裏側を見ることが出来て、美術や特殊メイクはもちろん、たくさんの人の力でエンターテイメントを作っているんだなと実感しました。僕のようにホラーが苦手な方もいると思うのですが、エンタメとして楽しんで欲しいです。誰よりも僕が一番怖がる、いいお客さんかもしれません(笑)。
加藤:みんな寒い中、己の仕事、己の表現に向き合っていて、プロフェッショナルで本当にカッコ良かったです。全員の力で完成した映画だなと、自分が参加出来たことに感謝の気持ちでいっぱいです。
──今後挑戦してみたい作品や、本作での経験をどう活かしていきたいか教えてください。
北山:僕は、全てのやりたいこと=出来ることでは無いと思っていて、求められてはじめて力を出せるのだろうなと感じています。「北山にこれやらせてみたいな」と思ってもらえるように、与えられたものに対して全力で挑みたいですね。
加藤:内藤監督というディスカッション出来る方とお会い出来たことで、ワクワクする瞬間にたくさん出会えました。私自身のお芝居はまだまだまだまだ…なので、何事にも貪欲に挑戦して、限界を決めずに勉強していきたいです。今回、ホラーが大好きだなと改めて実感したので、好きなものを好きとちゃんと言い続けようと思います。
──お2人共アーティストとして活躍されていますが、俳優とアーティスト、お互いの活動はどう影響しあっていますか?
北山:表現は違うものの、同じものだと思っています。歌う時にも表情を変えていくアプローチもありますし、ライブでの表現は芝居と通じ合っていますよね。切っても切れない関係です。
加藤:私は普段あまり難しく考えていないタイプなのですが、ライブでふとした瞬間、「今の表現って、前の私だったら出来なかったな」と思う時があるんです。自分の中で表現方法の“枝”が増えている感覚があります。恥ずかしいと思うことがどんどんなくなってきました。
──最後に、加藤さんから北山さんにオススメしたいホラー作品があれば教えてください!
加藤:そうですねえ、どんなのが良いかなあ?(北山さんを見ながら)
北山:基本は観たくないのよ(笑)。でも、一番はビックリさせてほしくない!
加藤:ホラーではなくて、ダークファンタジーなのですが『パンズ・ラビリンス』(2006)とかどうですかね。怖くて、美しくて、色々な想像力を掻き立てられます。
北山:そういうのいいね。ぜひ観てみます。
──今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
撮影:たむらとも
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