「ルフィグループ」はなぜ凶暴化したのか 最高幹部への30回超の面会で迫った犯罪組織の実態

「ルフィグループ」はなぜ凶暴化したのか 最高幹部への30回超の面会で迫った犯罪組織の実態

 後に多くの模倣犯を生み出し、現在「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」と呼ばれる犯罪集団にも通じる手口が見られた「ルフィグループ」事件。2022年から2023年にかけて、フィリピンのビクタン収容所に収容されていた男たちが「ルフィ」などを名乗り、SNSなどを通じて集められた実行犯たちに指示を出し、日本各地で強盗を繰り返した事件ことです。

 グループのメンバーたちはどのようにこれらの犯罪をおこない、その内部では何が起きていたのか――。特殊詐欺から広域強盗事件まで、指示役の犯行を間近で見てきた幹部との30回超に及ぶ面会や200通の手記、「伝説のかけ子」と呼ばれた女性が獄中から寄せた400枚の手紙、そしてフィリピンでの現地取材などをもとに、ノンフィクションライターの栗田シメイ氏が書き上げたルポルタージュが『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』です。

 もともとは、渡邉優樹被告をトップとした特殊詐欺集団だったルフィグループ。フィリピンのマンションの一室を事務所とし、電話口で警察官や金融庁職員、銀行員といった職業を名乗り、さまざまな理由でカネをだまし取ることで莫大な収益を上げていました。古典的な詐欺手法でありながらも彼らのグループが規模を拡大した背景には、徹底的な成果主義を取り入れたり、裏切り者には凄惨な拷問を加えたりするなど、渡邉被告が作り出した組織の仕組みがあったと、本書では指摘されています。

 現地で酒や高級車など我が世の春を謳歌していた幹部たちですが、彼らがビクタン収容所に収容されたことで、風向きが変わります。そこは、食事から金品の受け取りまで何をするにもカネが必要で、収容者たちが豪華な生活を送るためには、所内にいながら生活費を稼ぐ必要に迫られる環境だったそうです。さらに、脱走計画のための資金作りが最優先事項となりつつあった渡邉被告とその幹部らは、後に「ルフィ」として知られる今村磨人被告と所内で合流し、凶暴な強盗団へと変貌を遂げていったのです。

 そんな彼らには同志としての強固な絆があったのかと思いきや、実情はそうではなく、自らの利益のためには仲間内でも騙し合う関係性であったことが本書を読むとわかります。今村被告が名乗った「ルフィ」は人気漫画『ONE PIECE』の主人公にあやかったものですが、裁判で明らかになったのは、漫画とはかけ離れた世界観でした。

「『檻の中』という特殊な環境のなか、欲望のみで繋がっていた犯罪集団の姿は、『仲間』や『友情』と呼ぶにはほど遠い特異な関係性」(本書より)

 強盗致死罪などに問われた幹部の一人・藤田聖也被告に無期懲役を言い渡した東京地方裁判所の判決では、「海外から自らの手を汚さずに指示を出し、生身の人間に残忍な暴行を加えている現実感や抵抗感がないまま、金品獲得に執着して人命を軽視し、犯罪をエスカレートさせた」(本書より)との趣旨の指摘がなされました。

 詐欺で培った手法を強盗に転用したことで、過去にない新しいタイプの凶悪犯罪へとつながった「ルフィグループ」事件。「闇バイト」を利用した犯罪は現在も被害を生んでおり、警視庁の「トクリュウ」への警戒は年々高まっています。いつ、誰が巻き込まれてもおかしくないこうした犯罪を警戒する意味でも、本書で実態を把握することは有益といえそうです。

[文・鷺ノ宮やよい]

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