アクション映画で“存在感のある美術”を作るということ『モータルコンバット/ネクストラウンド』種田陽平(プロダクション・デザイナー)インタビュー
1992年の誕生以来、世界中のファンを熱狂させ続ける伝説的格闘ゲーム「モータルコンバット」。その実写映画化作品として、世界的ヒットを記録した『モータルコンバット』(2021)に続く最新作『モータルコンバット/ネクストラウンド』が、6月5日(金)より日本公開中です。
【ストーリー】世界の命運を賭けた最終ラウンド。最強の戦士たちが、新たにハリウッドスター、ジョニー・ケイジを迎え、ついに集結。地球界を守る戦士たちと、魔界の皇帝シャオ・カーンが率いる最凶のファイターたち。二つの世界の命運を賭け、両陣営の戦士たちが激突する究極の格闘大会ーーモータルコンバット。すべての戦士が揃ったとき、人類の未来を賭けた最後の戦いが始まる。
本作のプロダクション・デザイナーを務めているのが、『キル・ビル』、『思い出のマーニー』(2014)、『国宝』(2025)など国内外の幅広い作品を手掛けている種田陽平さん。貴重なスケッチと共に、美術へのこだわりについてお話を伺いました!
種田陽平さん Photo by Mitsuyuki Nakajima
▲「ブルーポータル」のスケッチ/Yohei Taneda
▲実際の映画でのシーン
──本作大変楽しく拝見いたしました!まず、参加の経緯からお聞きしてもよろしいでしょうか。
実は前作の『モータルコンバット』(2021)にもお声がけをいただいていました。プロデューサーのE・ベネット・ウォルシュと、『キル・ビル』の頃から20年以上の付き合いがあって。ただ、その時はコロナ禍で僕のスケジュールが色々と変わってしまい、参加することが出来なかったんですね。そして2022年頃に「『モータルコンバット2』をやるから、今度こそ参加してくれ」と話をくれて、無事にジョインすることが出来ました。
最初にベネットから聞いたのは、「これはただのアクション作品では無いんだ。4つのファンタジー世界を自由に作って欲しい」というコンセプトでした。さらに、「前作よりも予算があるから、セットをたくさん作れるよ」とも(笑)。
──それぞれの世界が独立しているのに、一つの作品としてまとまっていることが素敵でした。
ありがとうございます。それぞれの世界同士が良い具合にマッチしてくれたので安心しました。
大きな世界観として「エデニア」という王国があり、ここはキタナという新しいヒロインの故郷となっています。このエデニアを中心に物語が広がっていくので、この架空の世界をどう作るかということを考えました。
エデニアに関してはゲーム自体に情報や参考資料がほとんどなかったため、全く新しい世界を自由にデザインしています。エデニアの街全体と城をスケッチしていく中で、ヨーロッパ風の雰囲気を持ちつつ、そこにアジア的な要素も加えています。
▲「エデニア」の街並み/Yohei Taneda
──映画の冒頭では美しかったエデニアが、魔界の皇帝シャオ・カーンによって闇に沈んでいく変化もありましたね。
キタナの父であるジェロッド王の治世下では緑豊かで美しい街なんですよね。それが、シャオ・カーンの支配下では死んだような醜い姿になってしまいます。お店も閉まっていたり、人気も無くなって。色味も、最初はブルーを中心にカラフルだったのですが、それが全て炭色になってしまう、そんな変化も描きました。映画の中のエデニアの8割くらいは、その炭色の世界なのですが、冒頭ではイキイキした世界ですので、そんな所も注目していただきたいです。
▲「エデニア」の王室/Yohei Taneda
───エデニアで暮らしている市民たちの暮らしを想像させる、細部までこだわった美術ですね。
エデニアの市民たちの姿が物語の縦軸になっているなと感じたので、細かな所まで作り込みたいなと思いました。自然が多い場所なので、外ロケの様にも見えると思うのですが、エデニアの街はスタジオの中に作っています。すごく大きな、100メートル以上ある、日本には無いサイズの大きな格納庫みたいなスタジオがオーストラリアにあって。セット、VFX、ロケを組み合わせて完成しています。
坂の上にお城があって坂道を降りていくと、広場があり、そこが戦いの場所となっているのですが、アジアのテイストとヨーロッパのテイストをミックスしたような街並みで、そこに様々な人種が住んでいるイメージです。
▲「エデニア」の地図/Yohei Taneda
──セットの中にあるなんて考えられないぐらいの壮大な景色ですよね。
現場では担当のアートディレクターがそれぞれいて、話し合いながら進んでいきました。皆さん造形力がすごく高いので、ボリュームの多いセットも作ることが出来たのだと思います。街並みの屋根の雰囲気も、直線ではなくて歪んでいるのですが、こういう造形は力が無いと作ることが難しいのです。
──真田広之さん演じるハサシ・ハンゾウが佇んでいる場所も、美しく悲しく、魅力的でした。
この世界は、好きに作っていいよということだったのですが、黄泉の国の様なイメージにしたいと思っていたんですね。ハサシ・ハンゾウがが枯山水で三途の川を静かに整備しているという。
桃の木が出てくるのですが、この桃は古事記にも出てくる描写で、僕が提案して採用されていて嬉しかったです。真田広之さん、浅野忠信さんら日本の俳優さんが出演していますので、日本的なイメージが裏側にコンセプトとして入っている部分もあって。現場でも3人でお話をしたりして、意欲的な制作が出来たなと感じています。
▲ハサシ・ハンゾウが佇む日本庭園/Yohei Taneda
──そうやって美術の面からストーリーに深みを与えていらっしゃることが素晴らしいですね。
アクションが中心となる映画ですが、少し視点をワイドにした時に、存在感のある世界観を作ることを目指しました。激しいバトル、残虐なアクションがある映画に、登場人物たちがどう暮らしているのか、どう歴史が紡がれてきたのかという背景がしっかりと描かれているとより広がりが感じられるかなと。「モータルコンバット」というゲームの世界観を知らない観客の皆さんにも楽しんでいただけると思っています。
物語自体も爽快感がありますので、ぜひ映画館で細部まで味わっていただきたいです。
──今日は貴重なお話をありがとうございました!
Yohei Taneda
『モータルコンバット/ネクストラウンド』
公開表記:6月5日(金)より全国公開
©2026 Warner Bros. Ent. All rights reserved
配給:東和ピクチャーズ・東宝
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