「ホラーは希望」賀来賢人・穂志もえかインタビュー『Never After Dark/ネバーアフターダーク』は“誰も置いていかない”複合エンタメとしてのホラー
「忍びの家 House of Ninjas」(2024)で国境を越えたエンターテインメントを共に作り上げた賀来賢人さんとデイヴ・ボイル監督が、映像製作会社「SIGNAL181」を共同設立。
その第1弾作品として制作された劇場用作品『Never After Dark/ネバーアフターダーク』が全国公開中です。
本作で賀来さんはプロデューサーとして企画を牽引しながら出演も果たし、主演には「SHOGUN 将軍」(2024)での熱演で世界を魅了した穂志もえかさんを迎えました。お二人にとってほぼ初めてとなる取り組みの「ホラー」というジャンルについて、公開を前にお話を伺ってみました。
愛里というキャラクターについて
──愛里というキャラクターは、演じるにあたり、コントラストが強い一面がありつつも、機微が求められる、繊細さを伴った存在だと感じました。穂志さんは演じるうえでどんな風に愛里を捉えていましたか?
穂志もえかさん:私は、いつもどの役も難しいと思うタイプなので、特段、愛里が難しいと思って臨んだ感覚はなかったですね。ただ、彼女の世界観は独特ですし人には無い能力も持っている。
彼女には何が視えるのか、どういうバックグラウンドでどういう生い立ちを経てきたのか、ということをとにかくデイヴ(デイヴ・ボイル監督)には聞きましたね。それについてもデイヴはハッキリとした細かい答えをすべて持っていたので、すごく助かりました。ですので、彼女を演じるうえで特に困ることは無かったですね。
──賀来さんは愛里というキャラクター造形について、デイヴ監督とどんなことを話し合われましたか?
賀来賢人さん:もともとはデイヴのアイデアをベースに構築されてきたんですけれども、設定として珍しいバックグラウンドの持ち主だし、普通の人とは違う経験をしてきたキャラクターなので、実は僕たちも決めきれなかった部分があったんです。決めたくなかった、というのもありますが。
それで、穂志さんって、記号的なものが一切ないお芝居をされる方なんです。今回、穂志さんをキャスティングさせていただいた理由のひとつはそこなんですね。まさにアイデアにぴったりだったんですが、それって、なんて言うか……すごく難しいんですが、狙って言って作れるものじゃないんです。
先ほども穂志さんがおっしゃったように、穂志さんの思う“愛里”像、僕やデイヴが思う“愛里”像をすり合わせながら作っていくんですけれども、現場での穂志さんのひとつひとつのリアクションが、僕たちの想像と全く真逆のことがある。そこで「ああ、愛里ってそうだったんだ」と思わされることがむしろ多かった。だから、本当に穂志さんに助けられましたし、教えていただいた感じですね。
作品を観客として観た印象
──完成した作品を観た感想を教えてください
賀来さん:僕は立場上、何回も観てるんですけれども、段階を経るごとにすごくエンターテイニング(entertaining)になってきたな、と感じてました。僕が一番、気を付けた部分でもあるんですが、「届く人に届けばいいな」という映画は作りたくなかったんですよ。現場ではどうしてもわからない“説明”のバランスが、編集していくごとに良くなっていくのを目の当たりにしていました。
すごく幅広い世代の人たち、どんな人も置いていかず、ちゃんとストーリーに追いつけるような、エンタメ性のある映画になったと思います。デイヴの手腕ですね。
穂志さん:エンタメ色の強い映画になったんだな、という感想はもちろんあったんですけれども、何より、ちょっと観たことのないテイストの映画だな、っていう。
私は自分が主演で出てるからあんまり客観的に見られない部分がありつつも、見たことのない感じがして。
デイヴやカメラマンのパトリック(パトリック・オウジエル Patrick Ouziel)が持ち込んだ、ウェスタンのカルチャーや価値観と日本のクルーやキャストのそれが良いコラボレーションをして、どっちにも染まっていない感じっていうのがなかなか珍しい。なんて言ったらいいんだろう……楽しかったです(笑)。なんか、アトラクション乗ってるみたいな。初めてのアトラクションに乗ってる感じがしました。
ルックにこだわった結果の“和洋”
──今、穂志さんがおっしゃったように、和洋のバランスが絶妙で怖さの種類はもちろん、美術にも現れていました。
そういったロケーションやビジュアル面でのこだわりを細部から感じたのですが、作る段階でどういったところにこだわったりしましたか?
賀来さん:すごく素敵な質問をしていただいて!(笑)
あくまで、賀来賢人調べなんですけれども、映画予算の割り振りにおいてビジュアル面の割り当てが他の部署に比べて低い、と感じていたんです。
僕はわりと洋画で育ったので、視覚的な部分をすごく大切にしたかったんですね。だから今回は結構、ルックに(予算を)振りました。ルックからチャレンジしてみようかな、という思いで、衣装や(作中の個性的な)小道具も一から作っていただいたりしました。回転する鏡とかああいうのは、海外のオーディエンスからもすごく聞かれました。「あれは何なんだ?!本当に実在するのか?!」って(笑)。そういう説得力をちゃんと持たせていただいたのはすごくありがたいです。
穂志さん:美術セットも素晴らしくて、そこにいるだけで映画の世界に入れる感じがありました。衣装に関しても、一から作っていただくことは、私は多分初めてだったような気がするんですけれど、そういうところからも、作品に対する思いを感じました。ディティールのひとつひとつが、私の役作りの全ての糧になる。すごく楽しかったですね。
楽曲へのこだわり
──今回、音楽にも強いこだわりを感じました。以前にもデイヴ監督とタッグを組んだ「忍びの家 House of Ninjas」(2024)では、場面ごとの楽曲でプレイリストを作って、現場で共有したというお話を伺いました。
https://getnews.jp/archives/3507521
賀来さん:「忍び~」の時と同じく、ジョナサン・スナイプス(Jonathan Snipes)にオーダーして、劇伴も作っていただきました。だから今回の『Never After Dark/ネバーアフターダーク』の音楽も彼のオリジナル作品です。音楽だけは先に作っておいて、それを現場で流して、穂志さんに踊ってもらう、っていう(笑)撮り方をしたんです。
彼は、教授とかもやってるのかな。(※編注・カリフォルニア大学で2008年から講師を務めている)
技術的にも理論的にも音楽を作れる人で、映画音楽ということもちゃんとわかっている人。デイヴとの会話もやっぱり、意思疎通が早いみたいですね。
──必要なところにすっぽりとピースがハマったかのような心地よさがある楽曲でしたね
賀来さん:ありがとうございます!
ホラーで笑いの起きる海外オーディエンス
──日本公開に先駆け、米カルチャーの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2026」ミッドナイター部門に出品され、観客賞を受賞したとのことですが、そこでのお客さんの反応で想定と違った部分があったとか
賀来さん:あったよね。結構、シリアスなところでの場面、ネタバレになるんですが。
穂志さん:ありました。(※編注・伏せます)のところ。
賀来さん:観客のリアクションが「オイオイオイオイ! マジかよ~~www」みたいな。
(一同笑い)
賀来さん:ホラーって、あっち(海外)からすると笑える要素もたくさんあるみたいで、そういうところは日本とはちょっと逆というか。それを体感できたのは面白かったですね。
穂志さん:面白かったですね。そこが一番印象的。笑った!って(笑)
──現場でもデイヴさん的には「ここ笑う人いるかもね」って感じでしたか?
賀来さん:いや、デイヴはずっとニヤニヤしながら。基本「ホラーは笑うもんだから」っていつも言ってるんで。そういうのも僕は新鮮だったし、実際に体感できました。
ホラーには希望がある
──本作、ホラー映画というジャンルにくくられるかとは思うんですが、ホラーって好みの出るタイプのくくりだと僕は勝手に思ってるんですね。お二人がホラー映画との向き合い方や気を付けた部分について教えていただけますか?
賀来さん:僕はホラー自体にものすごく可能性を感じていて。予算次第で作品の質が変わってしまうジャンルが多い中で、ホラーはバジェットに関わらず比較的クリエイティブなことができるという意味でも、全クリエイターにおいて“希望”みたいなジャンルなんですよね。
今回の「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2026」上映もそうですけど、お客さんがちゃんと面白がってくれるっていうことも含めて、やっていて楽しかったです。
ただ、やっぱり一番ちゃんとしなきゃいけないのはキャラクターとストーリーでしかない。そこを突き詰めれば、ホラー映画としてちゃんと怖がらせる部分もあるしヒリヒリする部分もあるし、最後──なんていうんだろう、読後感が残せるというか。何かを残せたんじゃないかな、というのは思います。
僕自身は、ホラー映画自体の経験はあまり無いんですけれどね。
穂志さん:私もホラー映画の経験は多分初めてな気がします。『Never After Dark/ネバーアフターダーク』に関して言えば、お化け的な怖さっていうより現実に起こっていることの怖さがフィーチャーされていると思います。……『ミッドサマー』(2019)はホラーになるんですかね?
賀来さん:どうかなあ。
穂志さん:人間関係のズレとかが結果としてどう出るかとか、あの作品をホラーと言っていいのであれば、ホラーは一面的なジャンルじゃないんだな、って。『Never After Dark/ネバーアフターダーク』もそうですけど、「怖いもの!」みたいに簡単にくくれるものではなくて、複合的な要素があって怖さが生まれてる作品は面白いな、と思います。
賀来さん:ただ、お客さんにとっては、僕は(ネバーアフターダークは)もう「ホラー」で良いと思っています(笑)。みんなで「怖がりに行こう!」って思って劇場に来ていただくっていう時代にまたなってほしいし。日本映画でも、今、ホラーの調子が良いので、この作品でまた更に勢いづいて欲しいですね。
──ありがとうございました!
(撮影:稲澤朝博)
ヘアメイク:渡嘉敷愛子
スタイリスト:髙山エリ
【ドレスクレジット】
ジャケット¥33000、スカート¥30800(共にリーバイス®︎ ブルータブ™︎/リーバイ・ストラウス ジャパン)
ヴィンテージのリング¥11000(フィズ)
※全て税込価格
【問い合わせ先】
・フィズ TEL 03-5306-6552
・リーバイ・ストラウス ジャパン 0120-099-501
『Never After Dark/ネバーアフターダーク』
ストーリー:
霊媒師一家に生まれた愛里(穂志もえか)と、ある事件によって霊となった姉・美玖(稲垣来泉)。
霊と交信できる力で全国の怪事件を解決して回る姉妹のもとに「屋敷に出る男の亡霊を祓ってほしい」という依頼が舞い込む。
目撃した張本人の禎子(木村多江)は愛里の仕事に興味津々だが、息子・群治(賀来賢人)は霊の存在に懐疑的。
しかし屋敷では怪現象が相次ぎ、除霊の儀式を始めた愛里はさっそく亡霊に遭遇する。
おぞましい見た目をし、部屋の壁に隠された“何か”を必死に探す亡霊の願いとは?
真実のベールがはがされるにつれて浮かび上がってくる、屋敷にひそむ秘密、姉妹を縛る恐ろしい過去、亡霊の驚愕の正体。
そしてついに惨劇の幕が上がる――。
『Never After Dark/ネバーアフターダーク』
公開中
企画・製作:SIGNAL181
脚本・監督:デイヴ・ボイル
プロデューサー:賀来賢人
出演:穂志もえか 稲垣来泉 賀来賢人 吉岡睦雄 正名僕蔵/木村多江
上映時間:105分
映倫区分:PG12
配給:TOHO NEXT
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■公式サイト: neverafterdark.toho-movie.jp / 公式X:N_after_D_film
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