家や学校に居場所がない若者の姿をリアルに描く 映画『東京逃避行』寺本 莉緒&池田 朱那インタビュー

BABEL LABEL制作 秋葉恋監督の長編デビュー作映画『東京逃避行』が公開中です。本作は、『正体』(24)で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を含む3冠を成し遂げた藤井道人、日本映画界をけん引する俳優・綾野剛が審査員を務めた第2回東京インディペンデント映画祭のグランプリ受賞作の長編映画化作品。

監督自身が新宿・歌舞伎町で過ごした経験をもとに執筆した完全オリジナル脚本で、物語の舞台は、都の条例により“トー横”が封鎖された後の歌舞伎町。居場所を失った4人の想いと運命が交錯する、たった一夜の逃亡サスペンスです。本作の主演を務めた、寺本 莉緒さん、池田 朱那さんにお話を伺いました。

【ストーリー】家や学校に居場所がない女子高生・飛鳥は、”トー横”で暮らす少女が綴った自伝的ネット小説『東京逃避行』に憧れ、新宿・歌舞伎町へ。偶然、作者の日和と出会いすぐに意気投合。トー横に流れ着いた人々を保護し、面倒を見るエドやメリオを紹介され、”集まり”に参加するも、そこで目にしたのは、衝撃的な現実だった…。飛鳥は「一緒に逃げよ」と手を取り、日和と走り出す。しかし、半グレ組織から怒りを買い、街中から追われる2人。一方、閉鎖の危機に瀕していた保護団体という「居場所」を守ろうと戦うエドと、危うい選択を重ねて2人を追うメリオ。やがて警察をも巻き込み、一夜にして事態は急展開を迎える。4人の想いと運命が交錯し、夜明けに出すそれぞれの答えとはー?闇を切り裂くように、命懸けの逃避行が始まった――!

──素敵な映画をありがとうございました。写真撮影の様子を拝見していたのですが、すごく仲良しですね。

池田:嬉しいです。でも、話合わないよね?感覚が違いすぎて、真逆の回答になるんです。

寺本:本当に性格が真反対なんです。

池田:行きつく答えも全部違う。

──全然違うからこそ、自分とは違う意見が聞けそうですね。

池田:台本を読んだ時に「飛鳥ってどんな方が演じるんだろう?すごく難しいだろうな」と思っていたのですが、莉緒ちゃんと会ったら飛鳥が目の前にいたんです。飛鳥はこういう心の動きをするから、こういう行動を取るんだということが納得出来たので。

──凄いですね。寺本さんご自身も飛鳥には共感が出来ましたか?

寺本:すごく似ていると思います。私がそのまま高校生になった感じで。映画の中で飛鳥は日和に憧れて歌舞伎町を訪れますが、私もきっと憧れの人がいたら会いに行っちゃうだろうし、行動力があるところも似ているなと思います。

──池田さんは日和というキャラクターに共感、は難しいと思うのですが、どう理解しようと思いましたか?

池田:共感にたどり着くまではなかなか難しかったのですが、日和の環境を理解しようとしていました。でも、性格の部分は私そのままかもしれないです。ずっとどうしたら良いか分からなくて迷ってしまって、飛鳥みたいな、莉緒ちゃんみたいな子が現れると一緒に行動出来るというか。

──興味深いですね。本作では辛い描写も多かったと思いますが、ご自身の中で噛み砕けましたか?

寺本:全てを理解出来ていたわけではありませんが、撮影で歌舞伎町に実際足を踏み入れたら、すんなり飛鳥たちの気持ちになれたというか。撮影しながら咀嚼していった感覚です。やっぱり独特の雰囲気を持っている街だなと感じたので。

池田:日和というキャラクターを演じる上で、家庭に複雑な事情を抱えている方のSNS等でのリアルな声をたくさん読んで。共感しようと思って読みに行っているので、くらっちゃう部分もあるのですが、その感情も大切にしようと心をオープンにして臨んでいました。
あと、街の雰囲気が役を作ってくれた部分は大いにあると思います。飛鳥と日和が訪れる、メリオが仕切っている溜まり場があるのですが、もう一歩入っただけで異世界で。照明もピンクっぽい感じで、テーブルはお酒でグチャグチャだし。飛鳥が「こっち来なよ」って呼びかけられてソファに座るシーンは、あまりリハーサルを重ねずに撮影したので、莉緒ちゃん自身の戸惑いも現れているなと思います。

──「大丈夫かな…?」という心配もあれば「でも日和もいるし」という安心感もある様な、すごく絶妙な空気感でしたよね。

池田:美術もすごくリアルに作ってくださっていて、飛鳥と日和が「一緒に逃げよう」ときっかけになる部屋は、莉緒ちゃんは本番まで見ていなかったので、本当にギョッとしていたと思いますし、私自身もそういった雰囲気に(役作りを)助けられていました。

──秋葉監督ご自身の経験や見たこと・聞いたことが表現されているからリアルなのでしょうね。

寺本:こんなことが起こっているなんて…と思いながら、本当に起きているのだなって。秋葉監督は色々な出来事に寄り添える心を持っている方だと思うので、こうやって吸収出来たのかなと。

池田:この台本も歌舞伎町の喫茶店に行って、周りの会話の声を聞きながら書いていたと言っていました。

寺本:あと、エドの食堂のシーンでの子供達は、俳優ではなくて、秋葉さんのご家族が来てくださったんです。そのこともあってすごくあたたかくて楽しいシーンになっているなと思います。

──現場での演出はいかがでしたか?

池田:全任せしていただきました。本読みをした後に「こういうシーンにしようと思っているんだけどどう思う?」「こういう行動、実際出来るかな?」と聞いてくれて、逆に私が何かを質問したら100%納得出来るように説明してくれる。こちらから言うことの方が多かったかもしれないよね。

寺本:うん。「この言葉を飛鳥は言えないいづらいです」とか、「2人はその行動はとらないと思います」とか話しながら。

──私が本作を拝見した時に、素晴らしいなと思ったのが、変に大人の目線で作っていないリアルさだったんですね。本当に胸も苦しくなりますし、でも、飛鳥と日和の楽しい瞬間も嘘じゃないしという。お2人の意見を監督が聞きながら作っていたということを聞いて、すごく納得出来ました。

寺本:ありがとうございます。私たちも納得して、感情をのせられていたのだと思います。

池田:そういう環境を作ってくれて、とてもありがたかったです。飛鳥と日和が出会って、最初にプリクラを撮るシーンで、コスプレ衣装を選ぶのですが、飛鳥は初めて歌舞伎町に来ているからウキウキしていて、メイド服を自分にあてて「おかえりなさいませ、ご主人様」って言うんですね。そこは、セリフも演出もなく、「2人で自由に楽しんでください」と言われたのですが、その「おかえりなさいませ、ご主人様」が本当に可愛すぎて!

寺本:採用されていた?(笑)

池田:監督もそのシーンがお気に入りと言っていたのですが、そうやって自由にやらせてくれたからこその自由なシーンなんだなと思います。

──ああいう楽しいシーンがあるからこそ、この子達が辛い目にあって欲しくないなと感じるんですよね。私も印象的でした。そして、作中では“逃避行”の名のとおり、走りまくっていましたね。

寺本:あんなに街中を駆け回ることってなかなか無いから面白い経験でした。ビルから駆け降りていって、人にぶつかって、押し倒すとか、普段絶対に起こらないことがたくさんあって凄かったです。

池田:莉緒ちゃんがずっと私を引っ張ってグルグルしてくれて。私は前を見ている余裕もないくらい、とにかくついていってという感じで。莉緒ちゃんは運動神経が良くてすごいなって。

寺本:いやいやいやいや!私は走ることがすごく苦手だったので、撮影入る前にランニングして体力つけて。朱那ちゃんは、元々野球をやっていたということで、体力もあるんだなって。あの厚底靴でスピード出せるのは普通の運動神経じゃないなって。

池田:他の作品では、ゆっくり走りながら全力疾走に見せたりすることもあるのですが、本作では本気走りをして、とても良い経験になりました。

──2人の出会いから、色々な辛いこともあって、でも乗りこえていって…という表情の変化が素敵でしたが、順撮りではないですよね?

池田:ありがたいことに、ほぼ順撮りです。映像作品の撮影は順撮りで無いことがほとんどですから、何だったらいきなり「トー横での別れのシーンです」と言われる可能性もあります。でもこの作品では何よりも心の状態、動きというものを大事にしてもらっていて。

──素晴らしいですね。最後に、お2人が本作を通して、お互いに刺激を受けたことや、すごいなと思ったことを教えてください。

池田:飛鳥もそうだし、莉緒ちゃんもそうなのですが、「この人の言葉には嘘が無いんだろうな」と確信を持てるんですね。普通だったら、本音なんて他人には分からないじゃないですか。でも、莉緒ちゃんには、全部本音だ、本気で笑いかけてくれているんだと安心出来るパワーがあったので、救われていたことが多かったと思います。

寺本:私も、日和を演じている朱那ちゃん、ではなくて朱那ちゃん本来の性格に助けられていました。朱那ちゃんの「きっと隠しておきたいんだろうな」ということが日和になることによって、出てきちゃうことがあって。飛鳥が日和にかける言葉が、本当に私がかけたかった言葉だったりしたので。

池田:日和を通じると、私自身の本音が出てきて、莉緒ちゃんにバレちゃうんです。

──本作はフィクションですけれど、飛鳥と日和が幸せに生きていてほしいなって思うんですよね。なので今日お2人の素敵な笑顔が見られて嬉しかったです。ありがとうございました。

撮影:たむらとも

■作品情報
出演:寺本 莉緒 池田 朱那
綱啓永 高橋侃
松浦祐也 深水元基 さとうほなみ
監督・脚本:秋葉恋
主題歌:町田ちま『ネオンと残像』(Altonic Records)
エグゼクティブプロデューサー:藤井道人 音楽:堤 裕介
製作幹事:サイバーエージェント 配給:ライツキューブ 制作プロダクション:BABEL LABEL
©2025 映画「東京逃避行」製作委員会
公式サイト:https://tokyotohiko.babel-pro.com/ オフィシャル X:@tokyotohiko2026 オフィシャルインスタグラム:@tokyotohiko2026
オフィシャル TikTok: https://www.tiktok.com/@tokyotohiko2026
#東京逃避行

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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