ウォンバットは糞で“会話”をしているかも? 四角い糞をする理由を示唆(彩恵りり)
「ウォンバット (Vombatus ursinus)」という動物は、立方体の糞をするという変わった特徴で知られているのよ。おそらく糞が転がってどこかに行くのを防ぐためにあると言われているんだけど、でもなぜそんな工夫をするのかが分かっていなかったのよね。
タスマニア大学のKate McMahon氏などの研究チームは、ウォンバットの鼻の構造の調査や、よそから持ってきた糞に対する野生のウォンバットの反応を調査した結果、ウォンバットはよそから来た個体を識別するくらい鼻が利くことが分かったのよ。
研究チームは、他の動物の事例を参考に考えると、ウォンバット同士が糞の臭いで“会話”をしているのではないかと予想しているのよ。ウォンバットの糞が立方体なのは、“会話”をするために必要だからなのかもしれないね。
【▲図1: マリア島に生息するウォンバットの個体。 (Credit: Charles J. Sharp) 】
「ウォンバット」の糞は四角い!でもなぜ?
【▲図2: ウォンバットは立方体の糞を、岩や丸太のようなちょっと小高い場所にする傾向にあるのよね。また、複数のウォンバットが同じ場所に糞をするよ。 (Photo: Scott Carver) 】
「ウォンバット」という動物を知っているかな?オーストラリア大陸とタスマニア島、および周辺諸島に生息する、体長1mほどのずんぐりした体格の夜行性の草食哺乳類で、身近な動物で言うと、一番近い仲間がコアラになるよ。
このウォンバット、交尾と子育ての時期以外では基本的に単独で生息していて、数日ごとに巣穴を変えるなど、群れや縄張りというのを持たないのよね。そして面白いのが、立方体と形容される四角い糞をすること。これは腸の中でそのような形になるようにこねていることが分かっているのよ。こねる作業ができるように、腸の内壁は部分的に硬さが異なるという工夫がみられるくらいよ。この研究はノーベル賞のパロディである「イグノーベル賞」が贈られているのよ (2019年イグノーベル物理学賞) 。
ところでなんで立方体の糞をするんだろう?これはウォンバットの“トイレ”の様子から理由が考察されているよ。ウォンバットが糞をする場所は、岩や丸太のような、ちょっと高くて目立つような場所。どうやらわざと目立つ場所に糞を置いているっぽいのよね。こういう理由なら、わざわざ腸の中でこねて、転がりにくい立方体にすることの理由になるよね。
ただ、ウォンバットは群れや縄張りを作らない動物。一見すると目立つ場所に糞を置く理由がなさそうだよね?ただこれについても理由が考察されているよ。実はウォンバットの“トイレ”は公衆便所のような感じで、周辺の巣に生息する複数のウォンバットが同じ場所に糞をするんだよね。そうなると、ウォンバットは他のウォンバットがした糞の臭いを嗅いでるはずだよね?
一般的に動物の糞の臭いは、ただ臭いだけでなく、糞をした個体の健康状態や、発情期に入ったかどうかなどを示す様々な情報が含まれているのよね。だから動物は糞や尿でマーキングをして縄張りを主張したり、メスが繁殖可能な時期に入ったかどうかを判断できるのよ。
そして多くの哺乳類は、臭いをより深く識別しようと、「鋤鼻器 (じょびき)」あるいは「ヤコブソン器官」と呼ばれる器官に臭いを送り込むのよね。この送り込む行動は「フレーメン反応」と呼ばれていて、ウマが上唇を上げたり、ネコがしかめっ面をしているように見えることで知られているよ。そして2017年の研究では、どうやらウォンバットもフレーメン反応っぽい行動をしていると観察されているのよね。
これらの前提を踏まえると、一見すると群れを作らないウォンバットは、公衆便所で糞を通じた“会話”をしていてもおかしくないと考えられるよね?ただ、縄張りを持たない草食動物の嗅覚に関する研究は限られていることから、本当にウォンバットがこんな“会話”をしているのかは確証が持てなかったのよ。
ウォンバットは鼻が利く!
タスマニア大学のKate McMahon氏などの研究チームは、「本当にウォンバットの鼻が利くのか」「糞の臭いは個体ごとに異なるのか」「臭いを嗅ぎ分けられるのか」という3つのアプローチからウォンバットの嗅覚に迫ったよ。
まずはウォンバットの鼻がいいのか。これは鼻の構造を見てみると分かるのよ。今回の研究では交通事故により安楽死せざるを得なかった個体を解剖し、鼻の仕組みを調べてみたよ。すると、鼻の中に鋤鼻器と解釈できる独特の構造が見て取れたのよね。行動の観察結果も合わせると、ウォンバットは身体の仕組みから見ても、本当に臭いを細かく区別することができるみたいなのよ。
【▲図3: 化学分析にかけられた13個のウォンバットの糞から検出された分子をプロットしたもの。簡単に言えば、違う色の円があまり重なっていないことから、それぞれが違う臭いをしていることを表しているのよ。 (Credit: K. McMahon, et al.) 】
では、ウォンバットは本当に糞の臭いの細かい違いを見分けているのかという点を調べるため、タスマニア島の東にあるマリア島にて、野生のウォンバットの行動観察と糞の採集・分析を行ったよ。まずは糞に含まれる化学物質を分析してみると、44種類の分子が見つかったよ。そしてこれらの組み合わせが個体ごとに違うこと、言い換えれば糞の臭いが個体ごとに異なることが化学分析の観点から示されたよ。
最後に、本当に臭いが違うことを嗅ぎ分けているのか?という点を調べる観察研究も行ったよ。異なる “トイレ” から持ってきた糞を置いた後の行動を観察してみると、ウォンバットはトイレに滞在する時間が長引く傾向にあることが分かったよ。これは他の違いに左右されないことから、ウォンバットは糞の臭いだけで「見知らぬウォンバット」がそこにいることを識別している可能性が高いことを示しているのよね!
糞の臭いで“会話”をしているかもしれない?
今回の研究は、縄張りを持たない草食動物の嗅覚という、あまり研究がされていない分野を開拓したという点で新規性があるんだけど、限界もあるよ。例えば今回の研究の場合、ウォンバットが見知らぬ個体を臭いで感じ取っていることは分かったけど、それ以上の情報を得ているのかどうかは示唆レベルに留まるのよね。
ただ、鋤鼻器を持つような動物は、糞や尿の臭いから個体の識別だけでなく、個体の性別、年齢、発情期など、様々な情報を得ているのよね。これはいわば臭いによる“会話”とも言えるね。
今回、鼻が利くことが明らかにされたウォンバットが、糞の臭いによる“会話”をしていないとは言い切れないと思うのよ。そうなってくると、ウォンバットの糞が立方体で転がりにくいのは“会話”をするために必要だから、という可能性も出てくるのよ。
研究チームはこの先も追加の調査を行い、臭いが個体識別以上の情報を持っているのかどうか、ウォンバットの“会話”の実態についてさらに明らかにすることを試みているよ。
(文/彩恵りり・サムネイル絵/島宮七月)
参考文献
● K. McMahon, et al. “Deriving the functional significance of olfaction in a solitary non-territorial herbivore: The bare-nosed wombat Vombatus ursinus”. Journal of Zoology, 2025; 327 (4) 386-397. DOI: 10.1111/jzo.70068 (※注意: ウォンバットの解剖写真があります)
● Allison Floyd. (Dec 16, 2025) “Why do wombats have square poop?”. University of Georgia.
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