Web3時代の「賢いお金」ステーブルコインとは? 既存の電子マネーとの違いを銀行員が徹底解説【ステーブルコイン前編】#2

みんなの銀行 CXOオフィスの市原です(広報を担当しています)。
「Web3って、結局なんなの?」から始まった本連載。前回の連載#1では、Web3世界のパスポートとも言える「ウォレット」について学びました。

連載#1(ウォレット編)

さて、Web3の世界を旅する上で、もう一つ欠かせないものがあります。それが「お金」です。今回は、Web3時代の新しいお金のカタチ=「ステーブルコイン」について、AI先生と一緒にその正体をじっくりと紐解いていきましょう!

導入: 「未来のお金」の光と影

生徒(広報 市原):AI先生、いよいよ「ステーブルコイン」ですね!

前回、(価格が変動する)暗号資産の課題を解決する「ステーブルコイン」という言葉が出てきてから、既存の金融システムにどんなインパクトがあるのか、非常に興味を持っていました。

ただ、正直に言うと、少し不安な気持ちもあるんです。……数年前に、米ドルと連動するはずのステーブルコインの価値がある日突然ほぼゼロになって、世界中で大騒ぎになった事件がありましたよね?

「価格が安定している」はずなのに、なぜあんなにも価値の連動が崩れてしまったのでしょうか?(このような状態をデペッグと呼びます)

運営会社の信用に問題があったのか(このような取引相手の信用リスクをカウンターパーティリスクと言います)、それとも価値を支える仕組み自体に無理があったのか、その根本的な原因が気になっていました。

AI先生(Web3.0開発グループリーダー 渋谷):よく覚えていましたね。

おそらく、市場で「テラショック」と呼ばれている、2022年のステーブルコイン「TerraUSD(UST)」の崩壊事件のことでしょう。

そして、その数年前の事件こそ、私たちがこれから学んでいく「本当に安全なステーブルコイン」の本質を理解するための、最高の教科書になります。

生徒:数年前の事件が、ですか?

AI先生:ええ。なぜなら、あの歴史的な事件は、ステーブルコインが持つ「光(可能性)」と「影(リスク)」を、何よりも雄弁に物語っているからです。

あなたが感じた「未来へのワクワク感」は、まさにステーブルコインがもたらす「光」の部分。そして「怖いイメージ」は、その「影」の部分。

多くの人が「光」だけを見て熱狂しますが、私たちはまずその「影」を直視することから始めましょう。そうすることで、初めて「光」の価値が本当に理解できるのです。

生徒:「影」から始めるんですね……!

AI先生:その通りです。あの歴史的な事件は、「『安定』の裏には、信頼できる『裏付け』が不可欠である」という、お金の不変の真理を私たちに突きつけました。この「裏付け」というキーワードこそが、今回の旅のコンパスになります。

1章【光と影】: なぜ悲劇は起きたのか? 2つの「設計図」

生徒:ステーブルコインには「未来のお金」というワクワクする「光」の側面と、テラショックのような「影」の側面があることが分かりました。まずは、その「影」の正体から知る必要があるんですね。

AI先生:その通りです。「影」を直視して初めて「光」の価値が分かりますからね。この章では、なぜあの悲劇が起きたのか、その原因をステーブルコインの「設計図」から紐解いていきましょう。

「影」の設計図:アルゴリズム型ステーブルコイン

AI先生:「テラショック」を引き起こしたTerraUSD(UST)は、「アルゴリズム型」と呼ばれる設計図で作られていました。

通常のステーブルコインが、銀行にある米ドルなどの現実資産を「裏付け(担保)」にするのとは違い、USTは担保を持ちません。

その代わり、「もし1USTが1ドルより安くなったら、LUNAというもう一つの暗号資産と交換すると得をする」「もし1ドルより高くなったら、逆の交換で得をする」という自動的なプログラムを動かし、参加者の利益誘導によって「1UST≒1ドル」の価値を保とうとしたのです。それは非常に複雑で野心的な仕組みでした。

生徒:現実の準備資産による裏付け(担保)がなかった、ということですか……。それはまさに無担保の状態で、要するに砂上の楼閣と同じですね。

AI先生:まさしく。だからこそ、一度信頼が揺らいだ時に、一気に価値が崩壊してしまったのです。

「光」の設計図:法定通貨担保型ステーブルコイン

AI先生:一方で、現在主流となっている安全なステーブルコインは、「法定通貨担保型」という、非常にシンプルで堅牢な設計図で作られています。

下の図1を見ると、左側のビットコイン(BTC)の価格がいかに大きく変動しているか、そして右側のステーブルコインの一種であるUSDコイン(USDC)(※)の価格がいかに安定しているかが一目瞭然ですね。

図1:ビットコイン(BTC)とUSDコイン(USDC)の価格チャート

※USDコイン(USDC):米ドルと価値が連動する代表的なステーブルコイン。その準備金は、安全性の高い現金および短期米国債で構成され、高い透明性を確保しています。ただし、市場の極端な変動など、特定の状況下では一時的に1ドルの価値から価格が乖離する可能性もあります。

生徒:本当だ! 全然違う動きをしてますね。ステーブルコインの価格は安定しているので、これなら普段のお金に近い感覚で使えそうです。

AI先生:その通りです。例えば「1USDCが、おおむね1米ドル」と価値が連動するステーブルコインの場合、その運営会社は、利用者が1米ドルを預け入れるごとに、1USDCを新たに発行します。

発行されている全てのコインの裏には、同額の米ドルが「準備金」として保管されているのです。

生徒:つまり、発行したコインの分だけ、ちゃんと米ドルを「準備金」として持っているから、価値が安定する、と。なんだか、銀行の預金準備率の考え方に少し似ていますね!

Q.準備預金制度とは何ですか?
準備預金制度とは、対象となる金融機関に対して、「受け入れている預金等の一定比率(これを「準備率」といいます)以上の金額を日本銀行に預け入れること」を義務付ける制度です。このようにして日本銀行に当座預金または準備預り金として預け入れなければならない最低金額を、「法定準備預金額」(または所要準備額)といいます。本制度は、1957年(昭和32年)に施行された「準備預金制度に関する法律」により、金融政策の手段として導入されました。
準備預金制度の準備率については、日本銀行の政策委員会が金融政策決定会合において設定・変更・廃止します。

出典:日本銀行サイト「教えて!にちぎん」

AI先生:そう。その「信頼できる裏付けがある」という一点こそが、光と影を分ける決定的な違いなのです。

2章【必要性】: なぜ「安定した」お金が必要? お金の3つの役割

生徒:なるほど、1章で学んだように、悲劇の原因は「裏付け」のない設計図にあったんですね。そして、信頼できる「法定通貨担保型」こそが「光」をもたらす、と。

AI先生:その通りです。その「信頼できる裏付け」が「安定性」の源泉なのです。ではこの章では、そもそもなぜ、その「安定性」がお金にとってこれほど重要なのか、お金が本来持つべき「3つの役割」に立ち返って、その核心に迫ります。

お金が持つ「3つの役割」?

AI先生:そもそもお金には、「①価値の保存」「②交換の手段(決済機能)」「③価値の尺度」という3つの大切な役割があります。

例えば、八百屋さんで「このリンゴは150円」と値段が分かり(価値の尺度)、その150円でリンゴを買い(交換の手段)、使わなかった150円は明日もほぼ同じ価値で持っていられる(価値の保存)。これが当たり前にできるから、私たちは安心して経済活動ができるわけです。

ビットコインなどの従来の暗号資産は、先ほど学んだ3つの役割のうち、特にこの「価値の保存」の安定性に課題がありました。

そこで、この課題を解決するために開発されたのが「ステーブルコイン」なのです。

3章【比較】:既存の電子マネーとは似て非なるもの

生徒:お金が「①価値の保存」「②交換の手段(決済機能)」「③価値の尺度」という3つの役割を果たすために、価格の「安定」がいかに重要かを理解できました。ステーブルコインはそのために生まれたんですね。

図2:既存の電子マネー(スマホ決済/電子マネー)とステーブルコイン

生徒:でもAI先生、少し基本的な質問なのですが、日本には既に○○Payや交通系ICカードなど、円と1:1で価値が担保された便利な「電子マネー」が普及しています(図2)。

それら既存の電子マネーに対して、ステーブルコインならではの付加価値や、インフラとしての優位性はどこにあるのでしょうか?

AI先生:今ある既存の「電子マネー」で十分ではないか? そんな疑問が湧いてきますよね。この章では、それらとステーブルコインの「設計図」の決定的な違いを比較していきましょう。

「中央集権型」と「分散型」という設計図の違い

図3:従来型の中央一元管理とブロックチェーンによる分散管理のイメージ(出典:総務省「情報通信白書平成30年版」図表3-3-3-1)

AI先生:上の図3を見てましょう。多くの既存の電子マネーは、特定の運営会社が管理する「中央集権的(中央集権型)」なシステム上で動いています。

「AさんがB店で1,000円使った」という取引の記録は、すべてその運営会社のコンピューター(サーバー)に保存されます。いわば、運営会社という「信頼できる第三者」を介して、私たちのデジタルなお金は成り立っているのです。

一方で、ステーブルコインは、「ブロックチェーン」という、世界中のコンピューターが同じ取引記録を暗号化して共有・管理する「分散型」の技術を基盤に作られています。

生徒:中央集権型と分散型……。その設計図の違いで、何が変わるのでしょうか?

AI先生:大きく4つの違いが生まれます。

①相互運用性(決済アプリの垣根を越える)

例えば、ある決済アプリの残高を、別の決済アプリで使うことはできませんよね。でも、「イーサリアム」に代表されるパブリック・ブロックチェーン上で発行されたステーブルコインは、同じ規格に対応する世界中のどんな決済アプリやウォレットでも、原則として利用できます。特定の企業に縛られない、オープンな性質を持っています。

②グローバル性(国境を越える)

日本の電子マネーは、基本的に日本国内でしか使えません。でも、ステーブルコインは国境の概念がなく、インターネットさえあれば、世界中の誰とでも直接やり取りができます。

③パーミッションレス(イノベーションを加速させる)

中央集権的なサービスでは、新しい機能を追加するのに管理者の「許可(パーミッション)」が必要です。一方、分散型ではその「許可」が原則不要です(パーミッションレス)。つまり、誰でも既存のステーブルコインを「利用」して、新しいサービスや決済アプリを自由に開発できるのです。

④トレーサビリティ(追跡可能性)

最後に、ブロックチェーンの大きな特徴である「トレーサビリティ(追跡可能性)」です。取引の全貌は運営会社にしか見えませんが、ブロックチェーン上の取引は、参加者が共有する台帳に記録されるため、原則として誰でもその流れを追跡できます。この取引履歴の透明性は、企業の会計監査を効率化したり、マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策にも役立つと期待されている、非常に重要な性質なのです。

AI先生:ただし、ここが非常に重要なポイントです。

誰でも自由にサービス開発はできますが、「お金を発行する」となると話は別で、そこには法律や信用の「裏付け」が不可欠になります。しかし、こうした制約がある中でも、Web3の「誰でも開発に参加できる」というオープンな性質は、世界中のイノベーションを促進するのです。

この「分散型」という特徴によって、ステーブルコインは、単なる決済手段を超えた、「プログラムできるお金(プログラマブルマネー)」としての可能性を秘めているのですよ。

生徒:驚きました! たった一つの「設計図」の違いが、決済アプリの垣根を越えたり、イノベーションを加速させたり……。単なる決済手段というだけではない、とんでもない可能性を秘めているんですね!

AI先生:その通りです。そして、その根幹には「ブロックチェーン」という共通の技術基盤があります。

この技術こそが、ステーブルコインを単なる「安定したコイン」から、契約を自動実行する「プログラムできるお金」へと進化させる鍵なのです。

4章【仕組み】:契約を自動実行する「プログラムできるお金」の正体

生徒:ふぅ、既存の電子マネーが「中央集権型」であるのに対し、新しいステーブルコインは「分散型」の設計図で作られていることがよく分かりました! その違いが、特定の決済アプリや国に縛られない、オープンな可能性を生むんですね。

AI先生:ご名答です。そのオープンな性質こそが、イノベーションを加速させる鍵です。

この章では、その可能性の核心である「プログラムできるお金」とは一体何なのか、契約を自動実行する「スマートコントラクト」の仕組みに迫っていきます。

人の手を介さない「スマートコントラクト」とは?

AI先生:これを実現するのが、ブロックチェーン上で動く「スマートコントラクト」という仕組みです。「あらかじめ定められた条件が満たされたら、契約内容を自動で実行する」プログラムのことですよ。

身近な例で言えば、自動販売機のように「お金が投入されたら、商品が出てくる」という一連の取引を、人の手を介さずにデジタルな世界で実現するもの、とイメージすると分かりやすいかもしれません。

これにより、例えば「商品が納品された」という商流の情報と、「代金を支払う」という金流の動きを、プログラムで直接結びつける(リンクさせる)ことが可能になるのです。

生徒:なるほど、契約の自動実行ですか……! 非常に効率的ですね。でも、その「あらかじめ定められた条件」が満たされたかどうかは、「誰」が「どうやって」判断するんですか?

例えば、現実世界の出来事を条件にする場合、その情報がもし間違っていたら、契約はどうなってしまうのでしょうか?

AI先生:銀行員ならではの、非常に鋭い指摘ですね。それはWeb3の世界で「オラクル問題」と呼ばれています。

「オラクル問題」は、スマートコントラクトが抱える大きな課題の一つで、ブロックチェーンの外からどのように正確で信頼できる情報を取り込むか、世界中の開発者が解決策を模索しています。

生徒:単に便利になるというレベルではなく、社会の仕組みそのものに大きなインパクトを与えそうですね。

5章【可能性】:未来を拓く3つの扉

AI先生:スマートコントラクトによって「プログラムできるお金」になることで、ステーブルコインは3つの扉を開く可能性を秘めています。

「①個人の金融」の扉、「②企業のビジネス」の扉、そして「③社会のシステム」の扉です。

生徒:3つの扉! それは、私たちの社会や生活を根底から変えるような、まさに新時代の可能性を秘めている、ということですね! 具体的には、どのような場面で活用されるのでしょうか?

AI先生:国境を越えた送金や決済、クリエイターへの収益分配、さらには行政サービスに至るまで、社会のあらゆる場面を根底から変える可能性を秘めています。

ここまでの学びを踏まえると、ステーブルコインが単に便利な「決済アプリ」とは全く違う、もっと社会の基盤となるような役割を担える可能性が見えてきませんか?

まとめ【結論】:社会のOSは、こうして生まれる

生徒:……! なるほど! 2章で学んだ「安定性」、3章の「分散型」というオープンな性質、そして4章の「プログラム可能性」。

この3つの要素が合わさるから、単なる(既存の)電子マネーではなく、社会の様々な仕組みを動かす……そうだ、まるで「社会のOS(オペレーティングシステム)」のような役割を担える、ということですね!

AI先生:その通りです! まさしく、それこそが本日の結論です。

表1:既存の電子マネー(スマホ決済/電子マネー)とステーブルコインの違い

既存の電子マネーが便利な「決済アプリ」だとすれば、ステーブルコインは社会の様々な仕組みを動かす、より基盤的なOSのような存在だと言えるでしょう(表1)。

しかし、OSがそうであるように、ステーブルコインにも様々な「種類」があり、そこには光と影が存在します。今回私たちが学んだのは、そのOSが持つ輝かしい可能性、つまり「光」の側面です。

生徒:でも、冒頭で触れた「テラショック」は、十分な裏付けを持たない「影」の側面が強い設計図から生まれた悲劇でしたよね。

AI先生:ええ。OSにもバグやセキュリティホールがつきものであるように、ステーブルコインが抱えるリスク、つまり「影」の部分を正しく理解せずしては、Web3の真の可能性を引き出し、その健全な発展を語ることは困難です。

今回は、ステーブルコインの仕組みや「光」の部分に焦点を当てましたが、Web3を正しく理解し実社会で活用していくためには、メリットとリスクの双方を知ることが不可欠です。

次回のステーブルコイン後編(連載#3)では、まずその「影」の部分、つまりステーブルコインの様々な「種類」ごとのリスクに、より深く切り込みます。

その上で、それらの教訓を経て生まれた世界最先端の「日本の安全なルール」の重要性についても掘り下げていきます。そして、 その安全性が担保された先に、今回お話しした「個人の金融」「企業のビジネス」「社会のシステム」が具体的にどう変わるのか、豊富なユースケースと共に未来図を描いていきましょう。

生徒:なるほど! 今回学んだOSの可能性が、次回学ぶ「安全性」によって初めて現実になるんですね。リスクの話も、未来の話も、両方楽しみです!

連載「Web3って結局なんなの?」、#3ステーブルコイン後編へ続く

※この記事は、みんなの銀行公式ブログ「note」からの転載です。
最新情報やサービス詳細は、みんなの銀行公式サイトをご確認ください。
公式サイト:https://www.minna-no-ginko.com/

(執筆者: みんなの銀行)

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