『ズートピア2』監督に直接、聞いた!「キャラがすごく動物っぽくて、すごく人間っぽい理由」/ジャレド・ブッシュ(監督/脚本/CCO)×イヴェット・メリノ(プロデューサー)インタビュー
絶賛上映中の『ズートピア2』、もうご覧になりましたか?
前作「ズートピア」は、ディズニー・アニメーション作品としては『アナと雪の女王』以来、初めて世界興行収入が10億ドル(日本円にして 1,500億)を突破。日本でも興行収入76億円超えの大ヒットを記録し社会現象も巻き起こした、名実ともに高い人気を誇る名作です。
その待望のシリーズ最新作『ズートピア2』、今回もすごいです。その愛くるしいキャラクターたちの動きもしゃべりも、個々が織りなすやりとりも、作品から発せられるすべての情報が繊細でいてダイナミックなのです。ずっと見ていられるし、何度も観たい、って思わせるモーションと物語のうねりがありました。
ウサギの耳を付けたウサダ記者、前作『ズートピア』のインタビューに引き続き、「ズートピア2」のキャラクターの秘密について制作陣にお話をうかがいました。
(※ウサギ姿のウサダ記者と制作陣が対面。ちなみに今回はオンラインインタビューです)
──こんにちは!
ジャレド・ブッシュ監督:耳、いいですね!
──ありがとうございます。ズートピアに行く準備をしてきました!
イヴェット・メリノP:大好き、その耳!
ジャレド・ブッシュ監督:ほんとにいいね(笑)。ずっと見てても飽きない(笑)。
──嬉しいです(笑)『ズートピア2』拝見しました。前作にも増してキャラクターの濃さが本当にすごいですね。個別のキャラクターでスピンオフができるぐらいの描き込みがされていました。前作以上にキャラクターの性格描写をこんなにも緻密にできた秘訣を教えてください。
イヴェット・メリノP:私たちがアニメを作るプロセスとして、まずストーリーについて何度も話し合うのですが、ストーリーの前にキャラクターの話から始まるんですね。
それぞれの個別キャラクターについて、じっくり時間をかけて話し合います。そうすることで、彼ら彼女らが私たちにとって、ものすごくリアルな存在になるわけです。彼らがそこにいるんじゃないか、私たちの世界で「生きる」ようになるまで話し込んでいきます。
でも、本当に何を置いても、この私の隣に座っているジャレド・ブッシュには感謝するしかありません。
彼がどうしてそんなふうに思いつくのかわからないぐらいの思考力で、素晴らしく色々なアイディアをくれたおかげもあり、キャラクターがリアルになってると思います。秘訣があるとしたら、彼の存在そのものですね。
──例えばジュディの動きひとつにしても、感嘆するポイントがありました。例えば……親との電話を切った後、「あーっ」て投げ出すような、脱力するようなアクションがありましたよね。親と話した後に出た、あのリアクションが、なんともリアルでした。
動物的な部分で言いますと、ニックが留置所の中で、狐というか、獣ならではの動きを一瞬見せたりしていました。本当に一瞬ですが。また、ゲイリーは蛇特有の泳ぎ方や、鎌首を持ち上げたあとに重心が定まる、一瞬のモーションを見せてくれました。僕は山間部(長野県)の出身なので、こうした動物特有のモーションが本物だと感じました。けれど、動物園ではこうした動きを確認するのはとても難しいと思います。
野生の動物の動きを作品に取り入れるために、スタッフのみなさんはどんなことをされたんですか?
<▲写真:「蛇が鎌首を持ち上げているところ」を説明するウサダ記者>
ジャレド・ブッシュ監督:うん!すごくいいく質問です。そういうところ全部見てくださったっていうことがすごく嬉しいです。
本当に、私たちがそうした動きを表現できたのは、700人以上の素晴らしいアーティストたちと一緒に仕事をするという、贅沢な環境にあったからだと思うんですね。
──700人!
ジャレド・ブッシュ監督:私たちは、とにかくリサーチにものすごく時間をかけました。オンラインでリサーチするだけではなく、実際に専門家の方々とお話をして、実際に動物を観察するために現場に赴き、アフリカで動物たちと時間を過ごしました。
そのあと、それぞれの声優さんたちと話し合い、各キャラクターの動物的な部分と人間的な部分──それぞれの比率について、どのくらいにするのかを本当に深く考えました。この部分は、私が制作プロセス全体の中で僕がとても気に入っている部分の一つでしたね。
そうそう。湿地帯のところ、水棲動物がいるところなんですけれども、あそこはですね、「人間」対「動物」の比率の中でも、「動物」の比率を少し増やしたんですね。だから、アザラシはアザラシらしく見えるといった感じで、動物的な動きの方に少し重きを置きました。で、それを一コマづつ見ていって、それぞれのキャラクターのバランスが適切になるポイントを探っていったんです。
そうすることで、キャラクターたちがコメディ要素も感情表現などを備えた、エンターテインメント性を得ることができるのです。
でも、最終的には「やっぱり動物だよね」っていうところをきちんと見せるのが“ズートピアらしさ”だっていう風に思っています。
──人間寄りにしすぎてもいけないし、動物寄りにしすぎてもいけない、と。そこのバランスが本当に素晴らしかったです。そして、シーンごとにその度合を調整しているというのを知って、びっくりしました。
今回、新キャラクターとして蛇やヤマネコといった新キャラクターが登場するんですけれども、本作のリサーチで新たに得た学びなどを教えてください。
ジャレド・ブッシュ監督:それはもう……100万通りありましたね! リサーチという名前はついていますが、私たちは動物大好きの動物オタクなんで、動物たちとずっと過ごせるならば、ずっとそればかりやっていたいぐらいでした。そんな楽しい時間の中で、面白いことがたくさんわかりました。
まず、オオヤマネコ(Lynx)というのは寒いところが好きなんですね。それに対して、蛇のゲイリーは爬虫類なので暖かいところが好きです。そうするとオオヤマネコと蛇のキャラクター同士で対立構造が生まれると思い、あえてこの組み合わせにしたところもあります。
そしてオオヤマネコの食事の90パーセントがですね、実はウサギなんです! そうすると今度はジュディが彼らと対峙することにもなりますよね。そういうところもまた面白いなと思いました。
ほかにも、オオヤマネコはネコ科なんですが、キツネはイヌ科なんですね。つまり猫とイヌが対立する、という対比なんかも含まれていたりするんです。
また、オオヤマネコは「機会があれば獲物を狙う」という“日和見的なハンター”という性質があります。その性質が、ミステリーや物語の流れがどのように展開していくかという点において、極めて重要でした。
──だからヤマネコだったんですね!蛇についても色々ありそうです。
ジャレド・ブッシュ監督:私たちは蛇についてだけでなく、あらゆる爬虫類について色々調べました。私にとって最も大きな気付きの一つは、爬虫類に関する研究は(他に比べて)少ない、という事実です。なぜなら、我々人間は哺乳類であり、爬虫類の研究にはそれほどコストをかけないからなんです。これは私たちにとって、本当、目からウロコが落ちる事実でした。この映画がそうした研究の現状についても、光を当てられれば良いと願ってます。
また、私たちは調査を通じて、例えば「ある種のヘビは、子育てをちゃんとする」とか、「友達同士の蛇は、二匹並んで這ったりする」といったことを知りました。
──蛇にも親子とか友達という関係性が存在するのですね。驚きです。
ジャレド・ブッシュ監督:ゲイリーのモデルとなっているのは、タイツリー・ピット・バイパー(アオマダラアオハブ)という種類です。プロダクション・デザイナーのコーリー・ロフタスがあの美しい青色を採用したのは、哺乳類の中には青い生き物が存在しないからなんです。あのゲイリーの美しい青色で、これまでの『ズートピア』には無かった印象が欲しかったんですよね。
こうした形で、この世界のすべてのキャラクターに対して、その動物固有の性質を入れ込んでいます。動物たちの姿形はもちろん、その特徴や性質を採り入れることがズートピアという物語の魅力になっていると信じています。
──驚きばかりです。こうしたことを踏まえると、改めて作品を観たいと思いました。ありがとうございます。
ジャレド・ブッシュ監督・イヴェット・メリノP:ありがとう!
<▲おまけ:「蛇特有の泳ぎ方」を説明するウサダ記者>
▼「ズートピア2」日本版本予告|大ヒット上映中!
URL:https://youtu.be/LPTWNA21REg?si=bH4FolC1XioP4c07
「ズートピア2」
監督:ジャレド・ブッシュ(「ズートピア」、「モアナと伝説の海2」)
バイロン・ハワード(「ズートピア」、「塔の上のラプンツェル」)
オリジナル・サウンドトラック: ウォルト・ディズニー・レコード
日本版声優:上戸彩、森川智之、下野紘、江口のりこ、山田涼介、梅沢富美男、三宅健太、Dream Ami、髙嶋政宏、水樹奈々、柄本明、高橋茂雄(サバンナ)、熊元プロレス(紅しょうが)、高木渉、山路和弘、ジャンボたかお(レインボー)
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