坂本龍一、最後の3年半の軌跡を辿る『Ryuichi Sakamoto: Diaries』 大森健生監督インタビュー「親しみやすい存在であり、計り知れない存在」

世界的音楽家・坂本龍一がガンに罹患して亡くなるまで、その最後の3年半に渡る闘病生活と創作活動の軌跡を辿るドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』が11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開中です。

命が尽きるその瞬間まで音楽への情熱を貫き、創作し続けた坂本龍一。本人が綴った「日記」を軸に、遺族全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレート、未発表の音楽を交え、稀代の音楽家の最後の3年半の軌跡を辿る。今なお国も世代も超えて我々の心を掴み続ける坂本龍一は、命の終わりとどう向き合い、何を残そうとしたのか──。大森健生監督にお話をお伺いしました。

——本作を制作することになった際、まずはどの様なことから取材や調査をしましたか?

もともと、坂本さんの晩年のご様子が情報として出てこないこともあって気になる存在ではありました。そんななか、亡くなられた2日後にNHK「クローズアップ現代」で特集を放送することになり、ディレクターの一人として参加したことが始まりです。その後、ご遺族のみなさんと会話を重ねていくうちに、このような形になっていきました。坂本さんの最後をお伝えする上で、日記や映像の全てがないと中途半端になってしまう可能性があることはご遺族も理解されていましたし、どのような作品にしたいかを最初にお伝えしてから、対話を重ね、判断をお待ちしていました。僕は坂本さんと直接お会いしたことがないので、坂本さん自身を知るために、彼が残した音楽や出演されている映像、これまでどんなことにアプローチしてきたのかなどできる限りの情報は触れましたね。

——それまでに坂本龍一さんに抱いていた印象と、制作が進むにつれて印象が変わった部分はありましたか?

イメージは皆さんと同じで、「スタイリッシュ・洗練・かっこいい」みたいな。そこから制作を通して親しみやすい存在になった気はします。同時に、計り知れない存在といいますか、僕は71年間のうちの3年間という記録された側面を丁寧にみただけに過ぎないので。また違う時代の坂本さんの姿を見ると全然違いますし、同じ人ではあるけれど同じ人なのか?というくらい色々な顔をもっていらっしゃるんだと思いました。

——「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く | 展覧会」に若い世代の方がたくさん来ていることが印象的でした。坂本さんが世代を超えて多くの方に惹かれる理由はどんなことだと思いますか?

まず、かっこいいですよね。そして、名前は知っているけれど知らない、『このひと誰なんだろう?』という部分が常にある。それで『知りたい』と思うのかなと。坂本さん自身が様々な人や物事に参加したり、関わろうとする、だから広がっていくのだろうなと感じました。

——大森監督がドキュメンタリーを作る際に一番大切にしていることを教えてください。

文化芸術と”像”をテーマにしていますかね。偶像・パブリックイメージといったものがありますが、僕は”生身の姿”が知りたいので、できる限りの資料を通してアプローチしてきました。そういう部分は一貫してやっていますね。声なき声を拾い上げるのもドキュメンタリーですが、著名な方を取り扱うケースも、「ある人生の、見えない一面を垣間見る」という意味では、同じことをしている気がしています。その人や、残した作品を知るきっかけになるのでは?という想いをもってやってきました。

——今後はどのような作品の制作を目指していらっしゃいますか?

色々な人へ間口を広げていくような作品をつくっていきたいです。手が届かなさそう、難しそうな印象がある事柄や、知りたいけど知る機会がなかったような事、そういうものへの橋渡しのような仕事を続けていければ幸せだなと思います。

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』
11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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