映画『消滅世界』蒔田彩珠インタビュー「非現実的な設定でありながら、近い未来のお話のようにも感じられる」
芥川賞作家・村田沙耶香氏のベストセラー小説「消滅世界」が著者初の実写映画化。今春英語版が刊行され、アメリカのニューヨーカー誌でも映画化が報じられるなど世界的注目を浴びる原作を、気鋭の映像ディレクターである川村誠が初監督・初脚本を手掛けが『消滅世界』が公開中です。
原作「消滅世界」は、現在累計170万部を超える芥川賞受賞作「コンビニ人間」直前の2015年12月に刊行された長編小説。超少子化の先、「性」が消えゆく世界で激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄される若者たちを描いた本作は、「常識」という枠の中でもがく現代の私たち自身を映し出した合わせ鏡のような作品です。
世間の常識と自分の中の欲情に挟まれ、向き合い続ける主人公の雨音を演じた蒔田彩珠さんにお話を伺いました。
<STORY>
人工授精で子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為はタブーとされ、恋や性愛の対象は「家庭の外」の恋人か、二次元キャラというのが常識に。そんな世界で「両親が愛し合った末」に生まれた主人公・雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。家庭に性愛を持ち込まない清潔な結婚生活を望み、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園(エデン)で一変するーー。
――本作楽しく拝見いたしました。ストーリーの第一印象はどんなものでしたか?
「難しそうだな」ということが第一印象です。なかなかすんなり理解することが難しくて。非現実的な設定でありながら、近い未来のお話のようにも感じられました。台本を読むだけだと、どう演じられるのか想像出来なくて、自分の解釈だけだと難しかったので、現場に入ってみて、栁さんなど対峙するキャストの方と一緒にお芝居をしながら雨音というキャラクターを理解していきました。
監督は「まずは好きなように、やってください」という感じで任せてくれていたので、お芝居をしながら、空気感を掴んでいきました。
――そんな中で、雨音というキャラクターをどうとらえましたか?
周りの“正常”に合わせたいけれど、母に教えられてきたことと違うので、そこの葛藤が強くあるキャラクターだと思います。でも、本作に限らず、「自分が周りと歩幅を合わせる」ということをしない人も多いと思うので、雨音は優しさがある人だなと感じていて。しっかりとした強さと優しさのある人物にしたいなと思いました。
――映像も美しく、独特の雰囲気が特徴的でしたね。好きなシーンも教えてください。
すごくカメラワークが凝っている印象がありました。完成した作品を観た時に全てが新鮮というか、「こういう感じに撮っていたんだ」と楽しませていただきました。
栁さんとワインを飲みながら職場で踊っているシーンが好きです。すごく可愛らしいシーンで、ここがクランクインしてすぐのシーンで、栁さんとはほぼ初めましてだったので、ちゃんとお話出来て、そういう意味でも印象に残っています。
――エデンの描き方もすごく世界観がありますよね。
綺麗すぎて「ここで暮らすんだ」という違和感を感じましたし、エデンにいる子供たちが本当にずっとこの空間にいたんですね。撮影中もずっと遊んでいて、それがすごく無邪気なのですが、みんな真っ白な服で、同じ髪型をしていて奇妙な感じがありました。「世界がこうだから、自分もこうしなきゃいけない」というのがくっきりとしている世界で、もし自分がここに住むのだとしたら大変だろうなと思います。「自分が間違っているかもしれない」と思い続けながら生きるのは辛かっただろうなと思いますね。
――雨音もそうやって「本当にこれで良いのだろうか」と自問自答しますよね。
今は個人の自由が尊重されている時代だなとも思うので、この映画のように「世間がこうだから自分はこうじゃなきゃいけない」みたいな考え方が薄まっていると思います。私も、もちろん常識や礼儀は持ち合わせていたいですが、自分の好きなものとかやりたいことを自分の意思でしたいと思っているので。そういうことを考えさせられる作品でもあると思います。
──「やりたいことを自分の意思で決めたい」というのは本当に素敵なことだと思います。蒔田さんは作品選びはどの様にしているのですか?
今はとにかく色々な役に挑戦したい時期なので、何でもやりたいなと思っています。これまではシビアな作品に出ることも多かったのですが、最近は明るい女の子の役も多くて勉強になります。その中で、「どうしてもやりたい」と思うのは、自分以外の人がその役柄をやった時に悔しいと感じるものです。絶対後悔するだろうな、自分以外の俳優さんが演じている予告を観たら悔しいだろうな…と思うものを(笑)。
――ぜひ今後も色々なキャラクターを見させていただきたいです。今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:稲澤朝博
ヘアメイク:辻村友貴恵
スタイリスト:小蔵昌子
『消滅世界』全国公開中
@2025「消滅世界」製作委員会
配給:NAKACHIKA PICTURES
原作:村田沙耶香『消滅世界』(河出文庫)
出演:蒔田彩珠 栁俊太郎
恒松祐里 結木滉星 富田健太郎 清水尚弥
松浦りょう 岩田奏 落井実結子 /山中崇/眞島秀和/霧島れいか
音楽:D.A.N. 主題歌:D.A.N.「Perfect Blue」
劇中アニメキャラクターデザイン:Waboku
監督・脚本:川村誠
プロデューサー:成瀬保則 川村誠 三好保洋 伊藤聖 アソシエイトプロデューサー:伴健治
企画協力:河出書房新社 高木れい子 坂上陽子 / 近藤良英
脚本協力:作道雄 キャスティング:杉野剛 助監督:伊藤一平
撮影:豊田実 照明:田中洵 美術:前田巴那子 録音:木原広滋 伊豆田廉明
衣裳:石原徳子 ヘアメイク:柿原由佳 制作担当:百々勲 井上純平
編集:石原史香 川村誠 音響効果:井貝信太郎 写真:渡辺一城 宣伝プロデューサー:三原知之
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