「休むほど疲れる」の科学的理由──スタンフォード研究が示す、歩行による細胞の再起動

「休むほど疲れる」の科学的理由──スタンフォード研究が示す、歩行による細胞の再起動
疲れを感じると「今日は動くのをやめよう」と思う。それは自然な反応です。
でも、もしその「休み方」が疲れを深めているとしたら──?

休息とは、ただ止まることではありません。
体の奥では、私たちの意思とは関係なく、ひとつひとつの細胞が休まず働き続けています。
その中心にあるのが「ミトコンドリア」──酸素と栄養を燃やしてエネルギー(ATP)を作る“細胞の発電所”です。

心臓、脳、筋肉、肝臓、腎臓、骨のように常に動く部位にはミトコンドリアが多く存在します。
しかし、動かさない時間が続くと、体は「それほどエネルギーはいらない」と判断し、ミトコンドリアの働きを落とします。
これが「寝ても疲れが取れない」「休んでも頭が重い」という現象の正体です。

研究では、軽い歩行のような運動でもミトコンドリアを新しく作り出す遺伝子が活性化することが明らかになっています。
筋肉が刺激を受け、血流が促され、酸素が全身を巡る──その瞬間、細胞は再び再起動します。
歩くとは、体の中でエネルギーを「消耗」する行為ではなく、「生成する」行為なのです。疲労が抜けない状態は、ミトコンドリアの酸素不足を知らせるサインです。

私自身もかつて、疲れたときほど動きたくありませんでした。
けれど、一度思い切って外に出て歩いたとき、不思議と体が軽くなるのを感じました。
歩くことで頭が整理され、気分が和らぎ、呼吸が深くなる。
それは“気のせい”ではなく、歩くことで酸素が全身に供給され、ミトコンドリアが活性化している科学的な証拠です。特におすすめなのが、足の人差し指・中指・薬指の3本で地面を蹴り出す「3本指歩行」です。
この歩き方は、足裏全体を使って重心を支え、姿勢を自然に整えます。
わずかな力で前に進めるため、関節に負担をかけずに血流を促し、ミトコンドリアが効率的に再起動できる環境をつくります。
歩行は「頑張る運動」ではなく、「体を再起動させる習慣」です。
最初は5分で構いません。トイレへ行くときの歩き方を3本指歩行に変える、近所を少し歩くだけでも良いのです。
体温が上がり、呼吸が深くなり、思考がクリアになります。
その変化は、あなたの体の中でミトコンドリアが再起動したサインです。

本当の休養とは、止まることではなく、軽く動かすこと。
歩くことで、体は回復し、脳は静まり、心が整っていきます。
「疲れを取るために歩く」──その一歩が、あなたの細胞を再起動させる最も確実な方法です。

【参考文献】
Conger, K.
Researchers create a body-wide map of molecular changes linked to exercise and health.
Stanford Medicine News Center.

Golen, T. & Ricciotti, H.
Does exercise really boost energy levels?
Harvard Women’s Health Watch.
Shaw, J.
Your Brain on Exercise.
Harvard Magazine, 2021.

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