【第8回日本スケートボード選手権大会・パーク】永原依弦&長谷川瑞穂が初優勝!東京五輪から4年を経て大復活劇を見せた岡本碧優が2位

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10月18日~19日に茨城県笠間市にあるムラサキパークかさまで、第8回日本スケートボード選手権大会パーク種目が開催され、男子はオリンピアンの兄を持つ永原依弦(14歳)が初優勝。
今年4月に行われた日本オープン王者の志治群青(14歳)が2位、前回大会(第7回日本スケートボード選手権)王者の猪又湊哉(16歳)が3位と続いた。
日本選手権を過去に3回制覇し、表彰台の常連でもある笹岡建介は進化した滑りを決勝で見せたが惜しくもフルメイク(ミスなく滑りきること)の滑りを見せることができず、8位となった。

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女子は長谷川瑞穂(15歳)が日本選手権初優勝。
2位は東京オリンピック出場から4年の歳月を経て、今年競技に復帰を果たした岡本碧優(19歳)。
3位は12歳の佐竹晃が自身初となる表彰台入りを果たした。

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今大会、個人的に大注目だった選手はなんと言っても岡本碧優選手。
東京オリンピック開催前、当時15歳だった彼女は女子で初めてとなるバックサイド540や、キックフリップインディなど前人未踏のトリックを次々と自分のものにしていくと、一気に世界ランキング1位に。
東京オリンピックでも当然活躍を期待されたが、ノーミスの滑りを見せることができず結果は4位に終わる。その後スケーターたちの間でも彼女の消息はたびたび話題になったが、ふたたび彼女がスケートボードに乗る姿を見ることはなかった。
それから4年が過ぎ「まだ滑ってるのかな?」の声も聴かなくなった今年7月。
鵠沼海浜公園で開催されたムラサキ湘南オープンにて、背格好も大きくなって立派な大学生となり、以前と変わらぬ攻めの滑りを見せる岡本選手の姿があった。
それから3カ月後となる今回の日本選手権。
日本最高峰の大会で、また一つ次のステージに進んで楽しそうに滑る岡本選手の姿は、オリンピックでは見ることのできない感動を与えてくれた。
スケートボードのいちファンとして、彼女の新たな挑戦に心からの賞賛を送りたい。
【変更になったパーク種目のルール】
パーク種目決勝は45秒のランを3本行い、上位5名が4本目となるゴールデンランを行い最終的に一番得点の高かったスコアで順位が決まる。
※前回大会までは3本のみだったが、ロサンゼルスオリンピックのルールに合わせてゴールデンラン方式に変更された。
トリックを失敗した時点で試技は中断され、それまで決めたトリックの結果で得点が決まる。
【念願の初優勝/長谷川瑞穂】

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長谷川瑞穂、決勝のラン1本目。
気持ちが先走ったのか、スターターの合図の前に滑り出してしまう場面もあったが、1本目からバックサイド540やバックサイドブラントスライド、マドンナ、バックサイドテールスライド、フロントサイドに飛ぶジュードーエア、アーリーウープのバックサイドディザスター、バックサイドフィーブルグラインド フェイキーアウトからキャバレリアルというフルメイクの滑りを見せ65.19点を獲得する。
2本目のランではボルケーノ越えのキックフリップインディを決め、ラストでさらに攻めたフェイキー540を狙うが失敗(60.70点)。

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3本目のランでは2本目の最後にミスしたフェイキー540を完璧に決め、81.24点を獲得。4本目は最後まで滑りきることができなかったが、今大会唯一となる80点台で優勝に輝いた。
【笑顔の復活劇/岡本碧優】

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岡本碧優、決勝のラン1本目。
序盤にミスがあったが本人も「8てーん」と笑顔でおどけ、競技を楽しむ姿を見せた(8.87点)。
岡本2本目のラン。
フロントサイドテールスライド、フロントサイドオーリー、オーリーアップからのフロントサイドスミスグラインド、フロントサイドエア、フロントサイドクレイルスライド、ジュードーエア、バックサイド5-0グラインド、ウェドル(ミュート)540、ボルケーノをステイルフィッシュで抜けると、フロントサイドボンレス、バックサイドスミスグラインド、バックサイドエア、メロングラブでボルケーノを全越えすると最後はフロントサイド5-0グラインドをフルメイク。
69.46点を獲得し、リラックスしたリアクションを見せる。
岡本3本目のラン。
ジュードーエアをバリアルに難易度を上げ、さらにボルケーノ越えのメロングラブをバックサイド360に変えてふたたびフルメイク。
本人も大満足の笑顔と、最高のリアクションで75.80点を獲得。
4本目ではさらに難易度を上げたランに挑むが、序盤で失敗(9.48点)。
しかしミスした後も、自身がやりたかったウェドル540からボルケーノをキックフリップインディで抜けるコンボを完璧にメイクして会場を盛り上げ、オリンピックでは見ることができなかった心からの笑顔をメイク。
自分がやりたかったトリックをやって、自分が最高に楽しんでまわりも笑顔になる。
この1シーンにスケートボードが持つ素晴らしい一面を垣間見た。
【キラリと光るトリックで初の表彰台/佐竹晃】

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佐竹晃、決勝1本目のラン。
バックサイド540、フロントサイドノーズグラインド、フロントサイド540、キックフリップインディ、アーリーウープのキックフリップインディ、ラストにバックサイドブラントスライドを決めるフルメイクのランをいきなり見せると72.10点を獲得。
1本目を首位で終える。
佐竹2本目のラン。
1本目最初に見せたバックサイド540をボディバリアル540に変更し、ラストトリックはアーリーウープのバリアルキックフリップインディと1本目よりトリックの難易度を上げたランをフルメイク。
73.73点を獲得し、ここまで決勝に残った選手の中で唯一の70点台で2本目を終える。
残念ながら3本目と4本目ではスコアを伸ばすことができず、長谷川と岡本に上位の座を明け渡したが、今後のきらめきを予感させる滑りを見せた12歳が初の表彰台となる3位に輝いた。
【圧巻の滑りで初優勝/永原依弦】

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兄の悠路に勝るとも劣らないエアの高さをもつ、永原依弦のラン1本目。
オーリーアップからのバックサイドリップスライド、高さが光るノーグラブのオーリー、コーナーを誰よりも流すバックサイドテールスライド、コーナーでフロントサイド5-0グラインド、バックサイド540、ボルケーノをフロントサイドオーリーで抜け、フロントサイドノーズブラント、アーリーウープのキックフリップインディ、ボルケーノ越えのバックサイド360、マドンナ、アーリーウープのノーズグラブバックサイド360でボルケーノを抜け、最後はジュードー360をフルメイクし80.03点を獲得して首位に立つ。
永原依弦のラン2本目。
1本目の中盤で見せた、ボルケーノ越えのノーズグラブ バックサイド360をインディグラブのバックサイド180に変えると、キャバレリアルディザスター、アーリーウープのノーズグラブバックサイド360でボルケーノを抜け、ジュードー360までをふたたびフルメイク。
本人も雄叫びをあげる快心の滑りを見せると、さらにスコアを上げて83.54点を獲得。2位以下を突き放す。

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永原依弦のラン3本目。
オーリーアップからのバックサイドリップスライド、高さのあるノーグラブのオーリー、コーナーでのバックサイドテールスライドから驚異のショービットアウト。
その後はコーナーでフロントサイド5-0グラインド、バックサイド540、ボルケーノでキックフリップインディ。
フロントサイドノーズブラント、アーリーウープのキックフリップインディ、ボルケーノ越えのバックサイド180、キャバレリアルディザスター、アーリーウープのバックサイド360でボルケーノを抜け、ジュードー360をフルメイク。
1本目、2本目を大きく越える衝撃のランで89.66点を獲得。
ウイニングランとなった4本目はフルメイクの滑りを見せることはできなかったが、さらなる高難度トリックに挑戦する姿勢をみせた。
これまでの日本選手権や日本オープンでは、観客を唸らせるエアの高さや技のキレを見せるも、思うような結果を残せてこなかったが、今大会は2位に11点差以上をつける大勝を見せ、仲間たちからの祝福を受けた。
優勝直後のインタビューで今後の目標を聞かれると…
「オリンピックに出ていい結果を残したいです」と答え、今後海外での活躍にも期待したい。
【ヒョウ柄セットアップで鬼攻め/志治群青】

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ヒョウ柄のセットアップで、ファッションでもリードする志治群青のラン1本目。
いきなり高さの入ったロデオ540を見せると、フェイキースタンスに変えてフロントサイドキャバレリアル、フロントサイドエア、ボルケーノ越えのオーリー、バックサイドテールスライド、オーリーアップからのバックサイドスミスグラインド、オーリーアップからのバックサイドリップスライド、ジュードーエア、ボルケーノ越えのバックサイド360、ウェドル540、ボルケーノ横を抜けるオーリーを次々にメイクしてノーミスのランを見せると、1本目から74.86点の高得点を獲得し、他をリードする。

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志治のラン2本目。
1本目の後半で見せたボルケーノ越えのバックサイド360をフロントサイド360に難易度を上げてフルメイク。
会場から歓声が沸き起こる滑りで78.30点を獲得し、さらにスコアを伸ばす。
3本目以降は攻めの滑りを見せるも、フルメイクすることはできなかったが、見事準優勝に輝いた。
【完全フルメイク劇場/猪又湊哉】

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猪又湊哉、決勝のラン1本目。
ボディバリアル540、フロントサイドエア テールバッシュ、コーナーでのフロントサイドノーズグラインド、バリアルキックフリップインディ、キックフリップインディ、オーリーtoフェイキー、キャバレリアル リーンtoテール、ボルケーノ越えのワンフットオーリー、フロントサイドディザスター、ボルケーノを横に抜けるバックサイドオーリー、フロントサイド5-0グラインド トランスファー、フロントサイドワンフットオーリー、最後はステイルフィッシュをフルメイクし69.73点を獲得。まずは1本目をセーフティランで終える。
猪又のラン2本目。
バリアルキックフリップインディからキックフリップインディのコンボの後、バックサイドノーズスライド フェイキーからキャバレリアルでスタンスをメインに戻し、ボルケーノ越えのインディエア、ワンフットフロントサイドディザスター、ボルケーノを横に抜けるバックサイドオーリー、フロントサイド5-0グラインド トランスファー、最後はアーリーウープのバックサイドエアからのディザスターをフルメイク。
71.35点を獲得して順調にスコアを伸ばしていく。
猪又のラン3本目。
ボディバリアル540、フロントサイドエア テールバッシュ、コーナーでのフロントサイドノーズグラインド、バリアルキックフリップインディ、キックフリップインディ、オーリーtoフェイキー、キャバレリアルを決めると、ここで難易度を上げてボルケーノ越えのバリアルフリップインディを見せる。
その後はフロントサイドディザスター、ボルケーノを横に抜けるバックサイド ワンフットオーリー、フロントサイド5-0グラインド トランスファー、最後はアーリーウープのバックサイドエアディザスターまでをフルメイク。
さらにスコアを伸ばして、73.31点を獲得する。
猪又のラン4本目。
バックサイド540、フロントサイドエア テールバッシュ、コーナーでのフロントサイドノーズグラインド、バリアルキックフリップインディ、バックサイドオーリー、バリアルキックフリップ インディ540、フロントサイドディザスター、ボルケーノを横に抜けるバックサイドワンフットオーリー、フロントサイドテールスライド トランスファー、最後はアーリーウープのバックサイドエアディザスターをフルメイク。
77.91点を獲得し、暫定4位から見事3位表彰台に食い込んだ。
途中、ランの構成がブレそうになるもさすがの適応能力を見せ、ラストまで難易度を上げたランを滑りきる。
終わってみれば決勝で1度も手をつくことなく、完全なるフルメイクで今大会決勝を終えた。
【第8回日本スケートボード選手権大会・男子パーク結果】

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1位 永原 依弦(14) –80.03/83.54/89.66/7.78 Best/89.66
2位 志治 群青(14) –74.86/78.30/59.08/29.90 Best/78.30
3位 猪又 湊哉(16) –69.73/71.35/73.31/77.91 Best/77.91
4位 西川 有生(12) –72.44/75.69/75.88/46.66 Best/75.88
5位 天野 太陽(17) –12.87/41.68/72.18/30.35 Best/72.18
6位 中島 湊仁(13) –11.97/45.38/71.46/0.00 Best/71.46
7位 乾 瑠玖(12) –12.60/68.97/70.97/0.00 Best/70.97
8位 笹岡 建介(26) –9.48/49.87/39.15/0.00 Best/49.87
【第8回日本スケートボード選手権大会・女子パーク結果】

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1位 長谷川 瑞穂(15) –65.19/60.70/81.24/35.98 Best/81.24
2位 岡本 碧優(19) –8.87/69.46/75.80/9.48 Best/75.80
3位 佐竹 晃(12) –72.10/73.73/71.58/27.29 Best/73.73
4位 菅原 芽依(18) –26.77/69.54/3.66/52.85 Best/69.54
5位 藤井 雪凛(19) –68.10/68.89/5.10/11.59 Best/68.89
6位 貝原 あさひ(19) –68.10/21.52/28.99/0.00 Best/68.10
7位 溝手 優月(19) –45.98/44.62/19.55/0.00 Best/45.98
8位 菅原 琉衣(16) –25.18/3.96/28.95/0.00 Best/28.95
写真 ©ワールドスケートジャパン
文 小嶋勝美 スケートボード放送作家

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