『ドンキーコング バナンザ DKアイランド&エメラルドラッシュ』レビュー:ローグライト要素で初めて“完成”する面白さに迫る

3Dアクションゲーム『ドンキーコング バナンザ』の追加コンテンツ『DKアイランド&エメラルドラッシュ』は、本編クリア後のプレイヤー向けの有料追加コンテンツだ。本作を購入することで、新ステージ「DKアイランド」と新モード「エメラルドラッシュ」が楽しめるようになる。特に「エメラルドラッシュ」は、エメラルドの収集、毎回リセットされるスキル収集の戦略性、ランダムで獲得できるパワー等の醍醐味が加わり、本編とは異なる爽快感が魅力だ。
一方でSNS等の感想を見ると、有料であることやボリュームの少なさに対する指摘もある。本レビューでは実際に追加コンテンツをプレイしてみての注目ポイントや、その魅力を解説しつつ、ネット等で見られる評価について改めて検証していく。本稿がまだ現段階で購入を悩んでいる方への一助となれば幸いだ。

新ステージ「DKアイランド」は探索が楽しい自由度の高いエリア
まず新ステージ「DKアイランド」について。
このステージは、いたるところに散らばるゴールドが魅力だ。遺跡チャレンジはすべてゴールドを稼ぎやすいボーナスステージになっている。ドンキーコング(以下、DK)の家もあり、なんと破壊も可能だ。地形としては洞窟や高い山、さらには空に浮かんだ島も存在するため、散策だけでも楽しい。

▲でっかいDKの顔面がインパクトあるDKアイランド

▲SFC版からお馴染み、DKの家も登場!

▲家も破壊できちゃう!

▲もちろんタイヤもあります

▲洞窟などもあり、散策だけでも楽しい

▲懐かしの「タルコンガ(樽型コントローラ)」の島も

▲頂上から見下ろす景色は最高!

▲遺跡も登場するが、すべてボーナスステージだ
さらに、クランキーコング、ディディーコング、ディクシーコングといったシリーズお馴染みのキャラクターたちも大集合。彼らはDKの家の近くにいるが、島のいたるところで出くわすサイのランビに話しかけるとその場に招集してくれるので、記念写真の撮影が楽しめる。

▲ランビを見かけたら話しかけよう!

▲キャラクターに向かってアクションボタンを押すと、ハイタッチ!

▲DJブースで集めたレコードから好きな音楽を選択し、ダンスを楽しむことも。
なおこの「DKアイランド」は、本編購入時から即座に遊べるものではない。本編を「レース場の階層」まで進めることでアクセス可能となる。
「エメラルドラッシュ」はローグライト要素を備えた新モード
そしてもうひとつの追加コンテンツ「エメラルドラッシュ」こそが、メインコンテンツとなる。こちらをプレイするには本編のクリアが前提条件となる(本編クリア後に「バナンザの修練」の話を聞いて、「DKアイランド」まで進める必要がある)。
「エメラルドラッシュ」では、本編の敵役だったヴォイドコングが再登場し、なんとDKがヴォイドカンパニーに入社させられてしまう。

▲半ば強引に入社させられる
ゲームの目的は、ゴールドやバナナから置き換わったステージ内の「エメラルド」を集めること。本編で習得したスキルはすべてリセットされる。時間制限とノルマが存在する中、ステージ上の特定バナナを破壊することでスキルを再取得していく。さらに、化石を破壊するとエメラルドパワーを獲得できる。ここでは「地形を壊すと宝箱の出現率が上がる」や「特定の敵を倒すと得られるエメラルドの量が増える」などのパワーが付与され、集めるほど効率が上がる。

▲ゴールドもバナナもすべてエメラルドに置き換わっている

▲オーラを放つ特定のバナナを獲得すると……

▲スキルを獲得!

▲化石を獲得すると……

▲エメラルドパワーを獲得! 3つのうちから好きなものを選ぼう
遊ぶたびにバナナと化石の位置は固定されているが、取得可能なスキルやエメラルドパワーの種類は遊ぶごとに変化する。いわゆるローグライト要素を備え、何度も繰り返し楽しめる仕様となっている。

▲バナナや化石の位置は固定だが、得られる能力は遊ぶごとに変化。マップで確認できる

▲ヴォイドコングの気まぐれミッションも発動。クリアすると大量のエメラルドがもらえるので無視は勿体ない

▲ミッションによってはバトルが発生することも。敵もエメラルドになっている
初回の難易度はノルマ量も少なく、極めて簡単だ。ラウンドの時間制限内に次の次のラウンドまでの貯蓄を余裕で達成できる。難易度を上げるとノルマが増加し、レベル3からはバナンザ変身が最初から使用不可となって特定のバナナの取得で獲得する必要が生じる。筆者にとっては、このレベル3からが本番という印象だった。

▲レベル1だとこんな感じ。余裕!

▲レベル3以上はバナンザ変身も獲得し直す必要がある
ステージは最初にDKアイランドのみが利用可能だが、クリアを進めることで「貯水湖の階層」や「丘の階層」など、本編の一部ステージでもエメラルドラッシュが遊べるようになる。スキルをゼロから構築し、破壊やバトルを堪能するスタイルは、いわゆる縛りプレイに近い。本編に没頭し、何度もプレイしたユーザーであれば、間違いなくおすすめのコンテンツである。

▲クリアを進めると遊べるステージが増える

▲さらに「エメラルドラッシュ」で得られたチップをスコークスにあげると……

▲フィギュアをゲット!

▲フィギュアはカケラと同じように、持ったり、投げたり、スケボーしたり……めちゃくちゃシュール
「ボリューム不足」の指摘は妥当か? 過去作との比較で検証
一方で、「無料アップデートなら良かった」「ボリューム不足だった」という意見も見られる。これらの指摘は理解できる。
これまで任天堂は、安価な追加コンテンツを提供してきた。例えば、Wii UとSwitchで全3作リリースされた「スプラトゥーン」シリーズでは、追加ブキやステージが無料で提供された。有料追加コンテンツについても、Wii U「ニュースーパーマリオブラザーズ U」の「ニュースーパールイージ U」(2200円)は82コースを追加する内容だった。Switch「マリオカート8 デラックス」の「コース追加パス」(2500円)は48コースと4体の追加キャラを提供した。
それに比べ、本作『DKアイランド&エメラルドラッシュ』(2000円)は、ステージ追加としてはDKアイランドの1つに留まる。「ボリューム不足」と評価されてしまうのもよくわかる。
ただし、上記の過去タイトルの事例とは根本的に異なる側面がある。それはローグライトという本編とは異なる遊び方を導入し、本編ステージで再遊可能という点だ。ローグライトと言えば、Switch「スプラトゥーン3」の有料追加コンテンツ「エキスパンション・パス」(3000円)内の「サイド・オーダー」にも近い。
本編の爽快なアクションを維持しつつ、新ルールで作品の魅力を再発見することができる。これは有料購入の価値を十分に持つ。『ドンキーコング バナンザ』は、本作を加えることで初めて完成形となるのだ。
それでも、購入を躊躇するプレイヤーの心情は理解できる。本編未クリアのユーザーにとっては、そもそもアクセスすらできない。ただそうしたユーザーは、例えば無料の体験版などを提供したところで、最初から遊ばない可能性も高い気がする。
本作は有償ながら、本編をやり込みたいコアなユーザーへ向けての、言わば“ご褒美コンテンツ”とも言える。が、単なるオマケと侮らないでほしい。同一ステージながらルールが一変し、180度異なる風景が楽しめる本作。本編では無理に取得する必要がなかったアイテムも、ここでは意味を持ってくる。そういう意味で『DKアイランド&エメラルドラッシュ』は、『ドンキーコング バナンザ』というコース料理を余すところなく味わうための不可欠なスパイスなのだ。ぜひ堪能してほしい。


※本文記載の価格はすべて税込み
(文:平原学)

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