ノンアル新戦国時代! 筆頭株のサントリー『ベゼルズ』とキリン『ラガーゼロ』の味はかなり違うぞ
今秋、ノンアル市場にふたつの大型新商品が登場したことで、業界がザワついていることをご存知でしょうか。ひとつはサントリーの『ザ・ベゼルズ(以下、ベゼルズ)』、もうひとつは『キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ(以下、ラガーゼロ)』。それぞれの特徴や味わいを、なるべくわかりやすくお伝えします。
『ベゼルズ』は飲みごたえのあるノンアル
まずは9月24日に発売された『ベゼルズ』(参考実売税込価格167円)。800回を超える試作を重ねたそうですが、開発背景には、世の中の声が反映されています。
具体的には、サントリーが実施した『ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査サントリー ノンアルコール飲料レポート2025』において、ノンアルビールにさらなるおいしさを求めているユーザーが9割以上いること。加えて、よりビールに近い味わいを求めていることがわかり、それらを反映させた新商品が『ベゼルズ』ということです。
こだわりを一言であらわすと、缶体にも書かれている“熟成の旨み”となるのでしょう。実際、ビールの貯酒工程に着想を得た熟成でうまみを引き出すとともに、スピリッツ原酒を脱アルコールした「スピリッツエキス」をブレンドすることで、口に含んだときの香り高さ、複層的でじんわり続く余韻を実現したとか。
飲んでみると、すぐさま麦汁を思わせる香ばしい甘みと、ほのかにフルーティーな香りがふわりと。そこからコクがクッと押し寄せ、余韻は甘やかな風味をただよわせつつ、すっきり。
確かに、厚みのある味わいに仕上がっていますね。たとえば、サントリーのロングセラー『オールフリー』はカロリーもゼロですが、対して『ベゼルズ』は100mlあたり7kcal。スペック的にも想像できますが、『ベゼルズ』は飲みごたえのあるノンアルビールといえるでしょう。
『ラガーゼロ』はクリアでキリッと爽快
続く『ラガーゼロ』(参考実売税込価格171円)も、味の設計にはキリン自社の市場調査結果を反映。消費者が求める、“ビールを飲んだ時のような気分になれる本格醸造ノンアルコール”を目指し、4年をかけて完成したそうです。
カギとなっている技術が、近年の新作ノンアルビールで頻用されている『脱アルコール製法』。いったんビールを醸造してからアルコールを抜くメソッドで、有名どころだと『アサヒゼロ』ですね。海外勢はより多く、『ハイネケン0.0』『バドワイザーゼロ』『ヒューガルデン ゼロ』『コロナセロ』といった、これらメジャー銘柄も『脱アルコール製法』で造られています。
で、キリンの場合は伝統のラガータイプの味わいをベースにしているそうで、これはおそらく『キリンラガービール』(『キリンクラシックラガー』も)だと推察。『キリン一番搾り』もラガー(下面発酵)ビールですが、こっちには『キリン 零ICHI』がありますから、『ラガーゼロ』が手本にした味は『キリン一番搾り』じゃないはずなんです。
また、缶の赤い色も『キリンラガービール』的ですし、それこそ『本麒麟』に近いデザインだと思うのですが、『本麒麟』には『キリンラガービール』で採用されているヘルスブルッカーホップが使われています(リニューアルを経た最新版では変更された可能性がありますが)。
こうした観点から、『ラガーゼロ』が手本にしたレジェンドは『キリンラガービール』なんじゃないかと思うわけですよ。“伝統”に関しても、『キリンラガービール』には130年以上の歴史がありますし。
戯言はこのくらいにして、飲んでみましょう。こちらもすっきりしていますが、モルティな厚みとシャープな苦みがナイスに両立していて、キレもお見事。雑味がクリアで、キリッと爽快なノンアルビールに仕上がっています。
『ベゼルズ』と『ラガーゼロ』の違いと共通点
話題のノンアルビール2商品を飲み比べてみましたが、製法も味のキャラクターもけっこう違います。『ベゼルズ』は、“洋酒屋”サントリーのスピリッツ技術とブレンドが生きた、麦汁の香ばしい甘みが印象的。
一方の『ラガーゼロ』は、“麦酒屋”のキリンらしいビール技術を生かした引き算の一本で、モルティかつシャープでキリッとした味が特徴。大きな共通点としては、どちらも爽快で料理にも幅広く合うことでしょう。筆者のように、飲み比べるのもオススメですよ。
(執筆者: 中山秀明)
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