Z世代のカリスマの素顔とは? Kemioの写真展「裏アカ」に行ってきた
現在、「PARCO MUSEUM TOKYO」で、2025年10月20日(月)まで開催中の「Kemio photo exhibition「裏アカ」」に行ってきた。
古風な言い方をすればマルチタレント、今様にいえばインフルエンサーということになるのだろうか。ファッションモデルや俳優、エッセイストなど多彩な才能を発揮するkemioが、30歳を迎えるにあたり刊行した初の写真集『kemio by kenta』の発売を記念して開催された企画である。

まず最初にことわっておくが
白状するが、この人について本当に一切何も知らなかった。「ほう、最近はいろんな人がいるものですな」とか思いながら検索すると、芸歴は軽く10年を超えており、YouTubeのチャンネル登録者数は210万人いたので、本当に驚愕(きょうがく)した。とかいうと「はいはい、有名人知らない自慢乙」とか言われてしまうのだろうが、そんな寒い逆マウントをする気などは毛頭なく、単に本当に知らなかったのである。
今回の取材に入るにあたり、世代も趣味嗜好も違う友人数人にkemioについて尋ねてみたが、全員普通に知っていたし、その中の1人は「ライターとかやっててkemio知らないの普通にやばいよ」と言われた。只々己の無知蒙昧(むちもうまい)に恥じ入るばかりである。
とまぁ、そんなワケで、何も知らない人間が果たしてこのような企画に取材に行ったところで、何か書けるものがあるのだろうかと思うのだが、とりあえず書いてみる。
マジですげえハンサムだと思った
取材当日は、kemio本人が来場しており、一緒に写真撮影ができるブースがあったのだが、「一蘭」の原宿店ぐらい爆並びしており、さっそくびびってしまった。少しインタビューなどきたらいいな、などと甘い考えを抱いていたのだが、完全にそれどころではなかった。
仕方なく、来場した人たちと写真撮影に興じる様を遠巻きに眺めていたのだが、マジですげえハンサムだと思った。本当にありえないぐらいカッコよかった。ベージュのセットアップを着たkemioが醸し出すオーラは、このうえなく清潔でうっとりするほど洗練されており、彼の周囲がぱあっと明るく輝いて見える程だった。

スタイルも抜群、股下は体感で2メートルはあったし、そして何より、彼が発する柔和でフレンドリーな空気は、少しも気取ったところがなかった。屈託のない笑顔を振り撒き、なめらかな仕草でファンと気さくに対話し、時折ギャグを飛ばす。表情豊かな彼の姿は、数時間ぶっ続けでファン対応しているとは思えないほど、友好的なムードにあふれていた。
ほんの数分、離れた場所から眺めていただけに過ぎないが、おそらく彼は大変な善人なのだろうと思う。ヨイショでもなんでもなく素直にそう思う。それが立ち振る舞いからよく伝わってくる。あと全体的にノリがギャルい感じも最高だ。
すごくふつう(とてもいい意味で)
それから会場を見て回った。今回刊行される写真集からセレクトされた作品がパネル展示されているのだが、正直いって劇的なものや強烈なものがあるとは言えない。そしておそらくこの写真集は、最初からそういうものを目指していない。
kemioは2019年に出版した著書において、「ゲイ・ピープル」であることをカミングアウトしているそうだが、そのセクシャリティを暗喩(あんゆ)したような写真は、レザーコスチュームに白ブリーフの下半身を写したもののみであり、本展でみられる作品は、ことさらにスキャンダラスでもなければ、いたずらにエモーショナルでもない。


自撮り、ポラ、プリクラ、一眼レフ、あらゆるフォーマットで撮影されたそれらは、気の置けない友人との一コマであったり、ネオンがまたたく夜景であったり、ごくごくパーソナルなもので、アーティスティックさを標榜するところがない。いい意味で、と前置きさせてもらうが、すごくふつうである。ふつうとは、ノーマルではなくスタンダードという意味合いだ。被写体の自然な素顔を切り取るという点において、本展は撮影もセレクトもとても成功していると思う。
展示の目玉は、証明写真機であろう。証明写真機が設置されており、来場者はそこで撮影した写真を、指定された壁一面に貼ることができる。その壁には「ウチらの裏アカ」「好きなだけ写真撮ってね」というフレンドリーな言葉が記されており、すでに夥しい数の写真がそこには掲示されていた。


そしていうまでもないかもしれないが、この証明写真機にも新型iPhoneの発売日ぐらい長蛇の列が出来ており、オレはこの機会も断念せざるを得なかった。写真を貼る用に常備されたマスキングテープも、赤黄青緑と4色をラインアップしており、こういう細かいところの気配りも素敵だと思った。
ポリパーソナリティー時代の寵児
で、本展タイトルの「裏アカ」って何じゃいなという話なんだけれども、これはキャプションによれば「kemio(芸名)とkenta(本名)のボーダーを保つための空間」ということらしい。なるほど、たしかに考えてみると裏アカってそういうものだ。ペルソナでもなければ完全な本性でもない、ことさら公にはしないけれど、でも別に完全に秘匿しているわけでもない、ハンドルの「あそび」みたいなゾーン。

この端的なネーミングセンスから、kemioがパーソナリティーに対してはっきりと自覚的であり、さらには社会や個人が抱える病や痛みに敏感な人なのだということがうかがえる。各個人がハンドルネームをいくつも持って使い分けるというのが完全に一般化した現代において、彼が時代の寵児になるというのはすごくよくわかる。
物販も色々あるでよ
ちなみに物販もかなり充実していた。写真集はもちろんのこと、Tシャツ、ロンT、バッジ、ボールペン、ポストカード、マグカップ、ライター、ステッカーに至るまで、ファン垂涎(すいぜん)のアイテムが多彩にラインアップしている。

その内容のパーソナルさやスタンダードぶりからして、「kemioのことを何も知らなくても楽しめる」とは言い難いが、逆にいえば、彼について興味がある人ならば、行っても損のない企画だと思う。いずれにせよ、大変興味深い人である。
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