長さ829km! 世界最長の雷を世界気象機関が認定(彩恵りり)

「雷」と言えば雲と地面の間を走る大電流のイメージが強いかもだけど、実際には雲の中を走る「雲放電」と呼ばれる雷もあるんだよね。時にその長さは100kmを越えることもあるけど、研究が始まったばかりであり、正確な実態はまだよく分かってないよ。
WMO (世界気象機関) は今回、「世界最長の雷」の記録が更新されたことを発表したよ。その長さは829kmと、東京と札幌の直線距離に匹敵する規模となっているんだよね! この記事では、この長大な雷にまつわるお話をしていくよ。
雷は雲の中を長距離走る!

【▲図1:多くの人は雷と言えば落雷をイメージするかもだけど、他にも雲の中や間を走るだけで完結する「雲放電」という雷もあるよ。時にその長さは100kmを越えることすらあるんだよね! (Credit: NOAA National Severe Storms Laboratory) 】
「雷」は、身近で感じることのできる最も激しいエネルギー現象の1つだよね。典型的な雷のイメージと言えば、地面と雲との間で大電流が走るもので、これを一般的に「落雷」と呼ぶよ。
ただ、落雷は雷のほんの一面でしかないことが分かっているよ。落雷をより専門的に言えば「対地放電」と呼ぶのに対し、雲の中や雲の間を走り、決して地上には降りてこない「雲放電」と呼ばれる雷もあるんだよね。驚くべきはその規模で、普通の落雷 (対地放電) の長さはせいぜい数kmなのに対し、雲放電は長さが100kmを超えることがあるんだよね! これだけの長さを走るため、雷の継続時間も長めで、普通の落雷は数百分の1秒しか存在しないのに対し、雲放電は時に10秒を越えることすらあるよ!
ただ、雲放電の研究は最近になるまで中々進まなかったんだよね。長さが100kmを越える雲放電は1956年には既に見つかっていたものの、地上の雷センサーの密度がまばらで実態を捉えきれなかったことや、気象現象や気象災害としての雷の関心度が低かったことなどが理由として挙げられるんだよね。

【▲図2:雷雲の上空では、放電に伴って赤いスプライトと呼ばれる現象が発生することがあるんだよね。その正確な実態にはまだまだ不明点もあり、研究が進められているよ。 (Credit: NASA/JSC) 】
しかしそれでも、雷雲に伴う「スプライト」など、高層大気における興味深い気象現象の発見、人工衛星のセンサーの改善、精密機器の故障や山火事の原因、航空安全との兼ね合いで雷が認知されるようになったことから、2000年代より雲放電の観測と研究が進むようになったんだよね。
WMOも、2017年から雲放電の長さと継続時間を評価・記録するようになってきたよ。これまでにWMOが認定した世界最長の雷は、2020年4月29日にアメリカ南部からメキシコ湾にかけて発生した、長さ768±8kmの雷だったよ。
長さ829kmの雷が観測されていた!

【▲図3: 今回世界記録と認定された、最大長さが829kmに達する雷はこんな感じだよ。 (Credit: World Meteorological Organization) 】
そして今回、世界最長の雷の記録が更新されたんだよね! この発見の直接のきっかけは、2024年に過去の観測データの解析手法を改善したこと。これにより計算速度が上がり、これまで見逃されてきた雲放電が次々と見つかるようになってきたんだよね。
今回見つかったのは、アメリカの気象衛星「GOES」シリーズの16号機が捉えた雲放電だよ。この雷は2017年10月22日に発生し、アメリカのテキサス州東部からミズーリ州カンザスシティ近郊までをカバーする広い範囲を、7.4秒 (7.391秒) かけて走ったよ。雷が走った範囲の最大距離は829±8kmであり、車なら8-9時間、旅客機なら90分かかる距離であり、東京と札幌の間を雷が走ったと言えば、いかに大規模かが分かるかな?
ちなみに、7.4秒と言うのは普通の感覚で考えれば持続時間がかなり長い雷だけど、これは持続時間が最長の雷ではないんだよね。持続時間が最長の雷は、2020年6月18日にウルグアイとアルゼンチン北部で記録された17.102±0.002秒の雷なんだよね。長さが最長であっても持続時間が最長ではないということは、雷の規模が大きいと持続時間も単純に長くなるとは言えないことになるね。雷の持続時間は、雷の構造次第で大きく変わることがこの観測結果から示唆されるよ。
もちろん、今回発見された世界最長の雷は、おそらく数年後には更新されていると思うよ。大規模な雲放電の観測と分析は始まったばかりであり、まだまだ多くの未知の現象が眠っている可能性があるからね。地球温暖化の進行により、今後ますます気候が極端化する世の中において、大規模な雲放電に着目することは重要になってくると思うんだよ。
(文/彩恵りり・サムネイル絵/島宮七月)
参考文献
● Clare Nullis. (Jul 31, 2025) “WMO certifies megaflash lightning record in USA”. World Meteorological Organization.
● Michael J. Peterson, et al. “A New WMO-Certified Single Megaflash Lightning Record Distance: 829 km (515 mi) occurring on 22 October 2017”. Bulletin of the American Meteorological Society, 2025; Early Online Release. DOI: 10.1175/BAMS-D-25-0037.1
● Walter A. Lyons, et al. “Megaflashes: Just How Long Can a Lightning Discharge Get?”. Bulletin of the American Meteorological Society, 2020; 101 (1) E73-E86. DOI: 10.1175/BAMS-D-19-0033.1
● Timothy J. Lang, et al. “WMO World Record Lightning Extremes: Longest Reported Flash Distance and Longest Reported Flash Duration”. Bulletin of the American Meteorological Society, 2017; 98 (6) 1153-1168. DOI: 10.1175/BAMS-D-16-0061.1

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