古川琴音インタビュー「葛藤や情熱 いろいろな想いを丁寧に救っていかなくては」 最新写真集『CHIPIE』で俳優業への想い新たに

俳優の古川琴音さんが、7年ぶりとなる写真集『CHIPIE』を刊行しました。その撮影の舞台は、古川さんが映画祭のために訪れたドイツ・フランクフルトです。

「主人公はすごくわかったような気がするが、結局何もわからない人というイメージにしたい」というご本人が抱いたイメージを基に本作は制作され、朝から晩までスケジュールの合間や映画祭の裏側までもカメラが5日間古川さんを追い、ドキュメントに近い手法でシャッターを重ねました。

古川さんの現在地をたっぷり収めた一冊についてご本人に聞きました!

●約7年ぶりとなった今回の写真集ですが、最初にお話が来た時はいかがでしたか?

うれしいと怖い半分でした。写真家の松岡一哲さんが写真集を作る際、わたしを思い浮かべてくれたことがまずひとつうれしくて光栄なことでした。1作目の『pegasus』もわたしの中では大きな部分を占めている作品で、事務所に入りたての頃、本当に何も知らない状態で撮っていただきました。再現しようと思っても再現できない瞬間がたくさんつまった本だったので、超える超えないではないのですが、一哲さんとまた写真集を作るということになると、1作目の『pegasus』を意識してしまう。脅威にも感じていたんです。2作目が出たけれど、やっぱり1作目がいいなと思われたら寂しいなと思っていたので、『pegasus』の時とは違った力みや緊張感はありました。

●成長したご自身を見せなくてはいけないというプレッシャーもありそうですね。

そうですね。ただ、一哲さんは成長を見守っていてくださったと思うのですが、ちょっと前に聞いた話では、撮る俳優の作品をあまり見ないようにしているそうです。目の前にいる人の、先入観のない、ありのままの姿を撮るということを大切にされているそうなんです。

●記者会見の際、写真集の撮影で恐怖を覚えたと言われていましたよね。

別の記者の方にも「その怖さとはどういうことなのか?」と聞かれ、みなさんそこが気になっていらっしゃるのかと思ったのですが(苦笑)。初めて参加した映画祭で自分のことをベースとして知らない方たちに見られることで改めて自分は何ができる人で、どういう作品に出ていて、どういう人物なのかということを、常に問われているような気持ちになってしまったんです。

自分自身でもよく分かっていなかったり、よく伝えきれていなかったり、そういうもどかしさを感じてしまって。現地で毎日、大勢の写真集のスタッフさんや映画祭の関係者のみなさんに囲まれているのに、とても孤独な気持ちだったんです。この苦しみや葛藤は、誰にも分かってもらえないなと混沌とした気持ちだったから、その時の自分の顔はどうカメラに映っているのか、写真の原稿を見るまで怖かったんです。

写真家の松岡一哲さんの撮る写真は、わたしのそれに限らず、被写体のありのままの表情を撮られるので、ありのままの自分の姿はどういう感じなんだろうという怖さがありました。

●そうして現像された写真は、ご自身でも納得のものばかりになったのではないでしょうか。

お気に入りの一枚に選んだ白い衣装のものは、頬杖を付いている一枚なのですが、湖での撮影の後の一枚だから本当に疲れ切っていて。何にも考えていないというか、自分の身に起きていることをただひたすら考えているような瞬間なのですが、あの写真を観た時に、自分で言うのも恥ずかしいけれど、いい顔をしていると思ったんです。

あの表情を切り取ってくれた一哲さん、同行してくれたスタッフのみなさんが見守ってくれていた眼差しにも見えました。つまり、葛藤を抱えた自分が美しく写っているということは、みなさんの優しい眼差し、みなさんに支えられてわたしはあの場にいた、ということを発見した写真でした。

●この経験はご自身にとってどのような変化につながりそうですか?

撮影していた時はいっぱいいっぱいだったのですが、完成した写真集を見て改めて、当時の自分を思い返すと、独りよがりだったなという気持ちもありますし、もしかしたらわたしが知らないだけで、一哲さんや同行してくれたスタッフのみなさんもいつもとは違う状況の中、わたしが抱いていた葛藤が、みなさんにも同じようにあったのかもしれないですよね。そういう気づきはありました。

それはお芝居をしていく上で、かなり大事なことだと思っていて、今後も俳優をしていく上で自分がどう演じたいかは大切なことだけれど、その物語の役柄それぞれの葛藤やこみ上げる想い、情熱などいろいろな想いがあるから、そのひとつひとつを丁寧に掬っていかなくてはいけないなと、思いを新たにしました。

■タイトル:古川琴音写真集『CHIPIE』
■撮影:松岡一哲
■発行:講談社
■発売日:2025年7月3日(木)
■定価:4,180 円(税込)
■仕様:B5・176ページ

(執筆者: ときたたかし)

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 古川琴音インタビュー「葛藤や情熱 いろいろな想いを丁寧に救っていかなくては」 最新写真集『CHIPIE』で俳優業への想い新たに
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。