【ライヴレポ】jo0jiが煮ル果実とともに魅せた、自由な音楽の届け方──〈jo0ji 2man tour 馴染〉
2025年3月21日。
鳥取県出身・在住のSSW、jo0ji。今年1月に放送されたテレビ朝日「EIGHT-JAM」の企画「プロが選ぶ年間マイベスト10」にて「漁港で働きながら活動するアーティスト」として紹介され、彼の「眼差し」をいしわたり淳治が1位、蔦谷好位置が10位に選び、川谷絵音も「jo0jiも入れようと思ってた」と言及し、音楽ファンの間で大きな話題を呼んだ人物である。
今回のツーマンライブツアー「馴染」は、東名阪の3箇所を回るツアー、大阪ではOmoinotake、名古屋ではWONKと共演し、熱いライヴを繰り広げてきた。そしてこの東京では、ボカロPとしても知られる、煮ル果実とのツーマンライブ。一体どんな夜が待っているのか、会場に集まった音楽好きたちは期待に胸を膨らませていた。
定刻を迎えると、まずは煮ル果実のライヴからスタート。バンドメンバーたちとまずは“LIFE BAUTE”でウォーミングアップをすると、ステージに設置された機械の花のような舞台装置“ムウ”が「本日は技術を駆使し、皆様と共に特別な時間をお届けします」と挨拶。会場中を異様な空気が包む中、煮ル果実は“アイアルの勘違い”、“ハングリーニコル”を立て続けに披露。ボーカロイドの歌声を、生身の人間の声が絡み合う、新感覚のライヴ表現に自然とオーディエンスも引き込まれていく。
煮ル果実は、ライヴ冒頭に突然のトークに観客が驚いたことを受け、「いきなり話し始めてびっくりしたかもしれませんね」と笑顔を見せた。そして「僕はボーカロイド、つまり合成音声と人間の関係性をテーマに表現を探求しています」と、自身の音楽活動の軸を説明。さらに、楽曲制作においては「インターネット上で完結するのではなく、リアルな場へ拡張し、現実空間に落とし込むことを意識している」とコメント。ライブという形で直接観客とつながることの意義を強調した。
「果実にはさまざまな風味があるように、多彩なジャンルの楽曲を届けたい」という想いで、「煮ル果実」として活動する彼。ライヴはその後も”命辛辛”や、ボーカロイドによる高速ラップが印象的な“ファニーインシピッドキャンディベンダー”、トラメガを使用したパフォーマンスを行う“トラフィック・ジャム”といった彼の楽曲のなかでも、いわゆる「治安の悪い」楽曲を連続で。ダークな雰囲気で、自らの世界を表現した。煮ル果実はその後もタイトなリズムで踊らせる“灰Φ倶楽部”、疾走感のあるロック・チューン“紗痲”といった楽曲を展開。圧巻のパフォーマンスで会場の空気を掌握した。
“トラフィックジャム”まで楽曲をパフォーマンスし終えたあと、煮ル果実はjo0jiとの出会いについて「僕は以前から一方的に彼のことを認知していたんですが、実は2曲目に披露した“アイアルの勘違い”をjo0jiくんがずっと聴いてくれていたそうで」と、意外なつながりを明かした。さらに、「彼からラブコールをいただいた形になり、『これは応えないといけないな』と思った」と振り返り、今回のツーマンライブが実現した経緯を説明。音楽を通じた相互のリスペクトが、今回の共演につながったことを強調した。
その言葉のあと、煮ル果実はjo0jiの“不屈に花”をカバー。原曲へのリスペクトが込められた、この日しか聴くことのできないスペシャルなパフォーマンスがオーディエンスを沸かせる。最後に煮ル果実は自身も思い入れが深いという“ZOO”を披露。春の訪れを告げるような、温かなメロディーがSpotify O-EAST中に響いていた。
煮ル果実の余韻が冷めやらぬままに、次はjo0jiの出番。さざなみの音をBGMにまずはバンドメンバーが登場すると、そこに祭囃子の音が重ねられ、jo0jiがステージへ。彼は「いけるかーい?」とクラップをうながし、“明見”でライヴをスタートさせる。伸びやかなヴォーカルでワンコーラスを歌い切ると、「いいねえ!!」と声をかけ、オーディエンスを盛り上げていく。ライヴはさらに温かなメロディーが印象的な“眼差し”、スケールの大きな“escaper”へと展開。続く、“Nukui”では、「歌うとこあるんすけど、歌ってくれますか?」「頼んだよ?」「もっと、いけるよ?」と声をかけ、「every thing all right」の特大シンガロングを巻き起こしていく。
jo0jiのステージングはとにかく自由だ。メジャーデビューから1年も経っていない経歴ながらも、その佇まいはロックスター然としているし、軽やかにステップを踏みながらステージを闊歩する様子は、ヒップホップのアーティストのようだ。「主人公力」とでも言うのだろうか。彼の一挙手一投足に視線が吸い寄せられる、強い力があった。
今回のツアータイトル「馴染」について、「東京に出てきてから、馴染みの人がどんどん増えてきた」と振り返り、「音楽仲間や、リスナーの皆さんとも、もっと“おなじみ”の関係になれたらと思ってこのタイトルをつけました」と明かす。また今回ゲストに迎えた煮ル果実は、YouTubeで曲を聴いて「かっけえ!」と思い、カラオケで歌っていたとエピソードを語った。
そしてjo0jiは、「次は煮ルさんの曲やります」と宣言し、煮ル果実の“アイアルの勘違い”のカバーを披露。しかし、驚かされたのは、そのイントロである。某「ニル」からはじまるグランジのレジェンド・バンドの超有名なリフからはじまったのである。「ニルはニルでも、そっちかい!」と思いながらも、メロディーはしっかり“アイアルの勘違い”のもので、楽曲をリアルタイムにマッシュアップするようなスタイルで、その自由奔放なパフォーマンスで、オーディエンスを沸かせた。
ライヴは、そこから“BAE”、“ワークソング”、“不屈に花”を披露。jo0jiの楽曲は、コード進行や展開もとにかく変化する。ジャンルも歌い方も、節回しも全く型にはまってない。新しいタイプのアーティストだなと思うのだが、それでいて彼の曲のメロディー・ラインの美しさには、どこか懐かしさや安心感がある。そこが彼の魅力のひとつだ。
jo0jiが次に歌ったのは、友人に子どもが生まれたことをきっかけに作ったという最新楽曲“謳う”。アコースティックなギターの音に、いまの時代に生きることへの希望を持つための歌が乗り、柔らかな光が彼を照らす。本編最後は、“≒”。彼の真摯な歌声が、Spotify O-EASTを温かな空気で包み込んだ。
アンコールは、jo0jiの未発表のピアノ弾き語り曲からスタート。あらゆる音を削ぎ落としたからこそ、彼の歌声がダイレクトに届く、凄まじいパフォーマンスだった。そしてjo0jiは煮ル果実を呼び込み、“ヲズワルド”をふたりで熱唱。新世代の才能がぶつかり合うような、素敵な夜のひとときを演出していた。
こうして幕を閉じた〈jo0ji 2man tour 馴染〉。このライヴで、jo0jiは7月のワンマンライヴの開催も発表。そのタイトルは「onajimi」。jo0jiはこれからも、どんどん馴染を増やしていくのだろう。ただ、ものすごい勢いでその馴染の規模が大きくなるのを感じたステージだったのは、間違いない。jo0jiを見ておくなら、まさに今だ。
取材&文:ニシダケン
撮影:Ayumu Kosugi
フォトギャラリー
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ライヴ情報
■jo0ji 2man tour 馴染 -煮ル果実 Set list-
M1.LIFE BAUTE
M2.アイアルの勘違い
M3.ハングリーニコル
M4.命辛辛
M5.ファニーインシピッドキャンディベンダー
M6.トラフィック・ジャム
M7.灰Φ倶楽部
M8.紗痲
M9.LOST SHIP
M10.不屈に花(jo0ji cover)
M11.ZOO
■jo0ji 2man tour 馴染 -jo0ji Set list-
M1.明見
M2.眼差し
M3.escaper
M4.Nukui
M5.アイアルの勘違い(煮ル果実cover)
M6.BAE
M7.ワークソング
M8.不屈に花
M9.謳う
M10.≒
M11.タイトル未定(未発表曲)
M12.ヲズワルド(煮ル果実コラボレーション)
ライヴ情報
■ライブ情報
jo0ji special oneman live 「onajimi」
チケット購入はこちら:https://sma-ticket.tstar.jp/artist/jo0ji
オフィシャル先行:2025年3月21日(金)21:00~2025年4月6日(日)23:59
日程:2025年7月12日(土)
会場:渋谷 CLUB QUATTRO
時間:OPEN 17:45 / START 18:30
<注意事項>
※譲渡および転売行為はいかなる場合も固くお断り致します。
※会場構造上、場所によってはステージ/出演者が見え辛い場合がございます。
※公演当日は、主催者が定めた観覧ルールに沿ってお楽しみ下さい。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開される場合がございます。
プロフィール
■jo0jiプロフィール
jo0ji(ジョージ) / 25歳 / 鳥取県出身
友人のために制作した「不屈に花」を YouTube に公開し活動をスタート。作詞・作曲・編曲を自ら行う。
Spotifyが2024年に躍進を期待する次世代アーティスト「RADAR:Early Noise 2024」に選出された他、数々のメディアの2025年トレンドアーティスト特集にピックアップ。大型フェスの出演も続々決定し、2025年期待のアーティストとして注目を集めている。
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親父は漁師。地元じゃずっと、負け知らず。
朝焼けと船のエンジン音、波の音色が子守歌。
水平線の向こう、白んだ空の先、漁火に照らされるあんたの影を見た。
“こんな具合になったのは
きっとあんたのパンクをみたから
ロック・アンド・ロールするには
大口叩いてみることだな”
俺は今、誰よりも遠くへ行ける気がしている。
インフォメーション
YouTube:https://www.youtube.com/@jo0ji763
Twitter:https://twitter.com/jo0ji3
Instagram:https://www.instagram.com/jo0ji.t/
TikTok:https://www.tiktok.com/@jo0j_s
公式HP:https://jo0ji.com/

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