アカデミー賞2冠『エミリア・ペレス』監督が語る“ミュージカルへの本音”【横浜フランス映画祭2025】

ミュージカル映画監督は言った―「ミュージカルが好きじゃない」

カンヌ国際映画祭で女優賞・審査員賞をダブル受賞し、ゴールデングローブ賞では最多4部門を制覇。さらに、アカデミー賞では最多13ノミネートを果たし、助演女優賞と主題歌賞の2部門に輝いた話題作『エミリア・ペレス』が、3月28日より全国公開を迎えます。

全国公開に先駆け3月21日には、国内最大級のフランス映画の祭典「横浜フランス映画祭2025」で上映が行われ、来日したフランスの名匠ジャック・オーディアール監督が登壇。映画を鑑賞した観客からの質問に答えました。

魂を撃ち抜く、“全く新しいミュージカル・エンターテイメント”

フランス映画『エミリア・ペレス』は、メキシコを舞台にした衝撃の物語。麻薬カルテルのボス・マニタスは、長年秘めていた「女性として生きたい」という願いを叶えるため、敏腕弁護士リタの助けを借りて性別適合手術を受け、「エミリア・ペレス」として新たな人生を歩み始めます。

主演はゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス、カルラ・ソフィア・ガスコン、カトリーヌ・ドヌーヴと超豪華!歌と踊り、愛と葛藤、希望と再生が交錯する、唯一無二のミュージカル・エンターテイメント…!

監督まさかの発言!「実はミュージカルが好きじゃない」

「横浜フランス映画祭2025」では、上映会後にジャック・オーディアール監督が登壇。鑑賞直後に監督へ質問できるなんて、贅沢すぎません?

監督は終始リラックスした様子で、自分のフランス語を通訳がスラスラと日本語へ訳すのを見て「僕、そんなに話したっけ?」とお茶目なツッコミ。そんな和やかな雰囲気のなか、観客からこんな質問が投げかけられました。

「ミュージカル映画としての強みは?」

すると、監督からまさかの発言。

「変に思われるかもしれないけれど……実は、ミュージカルが好きじゃないんだ」

……えっ?アカデミー賞最多ノミネート作品のミュージカル映画監督なのに?!?!

実は、フランスではアメリカほどミュージカル映画文化が根付いておらず、監督自身も馴染みが薄いのだとか。好きな作品に挙げたのは、『シェルブールの雨傘』のように歴史的背景を持つもの。

では、そんな監督がどうやって『エミリア・ペレス』を作り上げたのか。その裏には、30年越しの約束がありました。

約30年前、過去作『つつましき詐欺師』で音楽を担当した作曲家と「いつかオペラ作品を一緒に作ろう」と誓い合ったそう。その約束が、ついに『エミリア・ペレス』として結実したのです。慣れないミュージカル映画の撮影では、入念な準備を重ね、一つひとつ丁寧に取り組んだと振り返りました。

さらに、舞台をメキシコに設定した理由について尋ねられると、監督はこう答えます。

「自分じゃないものに興味がある。僕にとって映画は自伝ではないんだ」

ミュージカルが好きではなくても、挑戦する。その好奇心と柔軟な発想こそが、オーディアール監督の真骨頂だと感じさせる瞬間でした。

新たな映画体験へ。『エミリア・ペレス』の魅力とは?

『エミリア・ペレス』は、単なるミュージカル映画ではありませんでした。
犯罪、ジェンダー、アイデンティティ、贖罪――重厚なテーマを、音楽とともに鮮烈に描き出しています。

「ミュージカルが苦手な監督だからこそ、生まれた作品かもしれない」そう思わせる唯一無二の個性を持った映画でした。3月28日、全国公開。気になった方はぜひ劇場で♪

●映画『エミリア・ペレス』

3月28日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

【STORY】弁護士リタは、メキシコの麻薬王マニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタの完璧な
計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、イギリスに移住し新生活を送るリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリア・
ペレスだった。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみが交錯する中、運命は思わぬ方向へと大きく動き出す――。

監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『パリ13区』 
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス
制作:サンローラン プロダクション by アンソニー・ヴァカレロ 配給:ギャガ

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ぴかっとさん

ぴかっとさん

北海道生まれのアラサーです。たくましく生きたいので、筋肉をつけようとしていますが、プロテインは苦手です。読書とオシャベリが好きです。

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