禁断の体験ができるスリリングなイベント「盗-TOH-」で、はじめての盗み体験(辛酸なめ子)

「音を立てなければ、全商品盗める市場」そんなフレーズに引き寄せられ、話題の体験型ショップ「盗-TOH-」のチケットを購入してみました。ラッパーのTaiTanと玉置周啓(MONO NO AWARE)がパーソナリティを務めるTBSラジオ「脳盗」プロデュースのイベントで、今回は第二回目。スリリングな体験ができると大人気で第一回は最大4時間待ちの行列ができたそうです。今回は時間指定のチケットなので待ち時間も短くてすみそうです。

市場を再現した会場で、60秒以内に音を立てずにアイテムを持って帰ればその商品がもらえるというルール。ただ、商品には鈴など音が鳴る仕掛けがほどこされていたり、会場内にはTBSラジオの高感度マイクが約200台も設置されていたりで、難易度が高いです。

サイトには「このイベントは犯罪行為を推奨・容認するものではありません」と書かれていました。私もこれまで万引きなどしたことはなく、今後も犯罪はしないと思いますが、盗むという体験を合法的な空間でならしてみたいと思い、単独で参加しました。ちなみにチケットは1人参加1000円、2人参加1800円、3人参加2400円と人数が多くなるとちょっと割安になりますが、そのかわり団体行動で1人でも音を立てたら連帯責任で失格になってしまいます。

予約した時間の少し前に、会場のTBS赤坂BLITZスタジオに到着。時間指定の同じ回の数十人ずつ会場に入ります。驚いたのは外国人の多さ。前にいたのはおしゃれなアメリカ人っぽい女性2人で、後ろはフランス人らしき男女3人、他にも4.5人欧米人がいて、楽しみに並んで待機していました。日本で泥棒体験とは、忘れられない思い出になりそうです。

完全入れ替え制なので前のグループが出るのを待ち、市場の中へ。戻ってくる人々を見ると戦利品を持っている人は思ったより少なくて4分の1くらいでしょうか。ポスターによると、古本や麺、駄菓子、Tシャツにキャップ、枕などさまざまな商品があるようです。もしブランド品があったら、もっとやる気が出るかもしれません……。

この日は音がしなそうな服を着て、アクセサリーも外すなど、それなりに準備してきました。花粉が多い日だったので、くしゃみが出ないように念のためマスクも装着。中では靴を脱いで入ることを推奨されました。グループごとに60秒ずつ挑戦するのですが、その間自分の荷物はそのへんに置きっぱなしなので、ガチで手癖が悪い人がいたら危険かも、という心配が。もちろん杞憂でしたが……。

「カーン!」という音とともに盗みスタート。橋を渡って、古本や麺、おもちゃ、駄菓子、アパレルなどのコーナーに行って無事に音を立てずに盗って来られれば成功です。高そうなアパレルは奥の方でした。トップバッターの、一つ前の回も参加していた男性は、スタートして数秒後に撃沈。「ウィーンウィーン」という警報とともに赤い光に照らされました。「灰色の地面がめっちゃきしむ」とのこと。続いてアメリカ人女子2人は、会話からダンサーのようでしたが、柔軟な身体能力のたまものか、古本をゲットして戻ってきました。「I’m scared.」とかなり緊張しているようで、次に控えていた私にも伝染。

いよいよスタートとなり、橋を渡って左側のコーナーに入ってみたら、とくに欲しいものが見当たらず……。喉が乾いていたのでミネラルウォーターのボトルを盗むことにしました。全然チケット代の元を取れていませんが……。最後、橋までは戻ってこられたのですが途中で音を立ててしまい、警報が鳴ってあえなく終了。やはり慣れない行為をしているので、足が震えました。でも戻って来たとき、フランス人の方々が拍手で迎えてくれて感動。盗み仲間同士不思議な連帯感が芽生えていました。
参加者の中にはやたらうまい人がいて、足音を立てずに早足で目的の場所に行って盗ってくる、盗みの手際に見とれました。カップルの参加者の彼氏が、なんと彼女のぶんまでキャップ2個も盗むことに成功。彼氏が盗むのがうまい、というのはなかなか自慢しづらいスキルですが、いつか何かのライフハックに役立つのでしょうか。

他にも、Tシャツを盗み出した外国人男性、パーカーを盗んだ女性など、後半になると脳内でシミュレーションできているからか成功率が上昇。それでも盗み出せたのは全体の3分の1程度だったようです。あきらかにドゴッという足音を立てているのに、アウトにならない場合もあって、マイクの床からの距離や向きにもよるようでした。次回こそ……とリピートしたくなります。盗みに成功した人々が嬉しそうな笑顔で戻ってくるのを拍手で迎えました。実際の泥棒の緊張感はこんなものではないと思われます。アラフィフからの盗み体験は失敗という結果に。やってみて、泥棒にはなれないことを実感し、そんな自分に安心しました。
(イラスト・文:辛酸なめ子)

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