【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

まるでまだまだ冬であることを思い出させるような冷たい風が渋谷の街に吹いた、2025年3月3日。Spotify O-EASTにて、青色をコンセプトに活動するヴォーカル・ユニット、CYNHNの〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉、そのファイナル公演が開催された。

全国10箇所を回るファン待望のバンドセットでの東京公演。タイトルに掲げられている「INVERSION」とは、反転、逆転を意味する単語。グループのコンセプトカラーである“青”からの反転、メンバーによる“青”への抗い、そして現代音楽シーンへのCYNHNの反撃といった想いが込められているという。これまで様々な楽曲を表現してきたCYNHNが、このライヴでどんな世界を見せてくれるのか。時が進むにつれて胸が高まっていく。

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

開演の時刻を迎えると、ステージにはバンドメンバーがすでにスタンバイ。スクリーンには、「CYNHN」というロゴが一文字ずつ表示され、少しずつ形を変えながら青く輝いていく。映像が高揚感を高めるなか、メンバー4人が姿を現し、ステージ中央にて円陣を組むようなフォーメーションを作る。お互いを見つめ合うように、セットリストの1曲目は“2時のパレードへ”を披露。アカペラで歌声を響かせ、軽やかにステップを踏みながら、会場を青く染め上げていった。

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

続いて披露された“インディゴに沈む”では、青い衣装で舞うメンバーをオレンジの照明が照らす。暖色系のオレンジは、寒色系のブルーとは色相環で正反対に位置するカラーであり、照明の効果でもライヴのタイトルである「INVERSION=反転」を表現しているのだと感じた。ライヴはさらにファジーなワウ・ギターの音色が印象的な“解けない界面論”へと展開。続く“くもりぎみ”では、拳と共にシンガロングが客席から上がり、会場の一体感が高まって絶頂のまま続けて披露されたのは、ライヴの起爆剤として歌われることも多い“ジンテーゼ”。圧巻のヴォーカルでオーディエンスを惹きつけ、ライヴの序盤の空気を作り上げていった。

いったんMCとバンドメンバーの紹介のあと、続いてのブロックでは、“キリグニア”、“Tokyo stuck”、“リサイズ”を立て続けに。2023年11月にはじめてバンドセットでのライヴを行ったCYNHN。そこから何度もこのスタイルを重ねるうちに、ライヴもかなり完成度を増しているように思う。複雑な楽曲を演奏するバンドチームも、それを歌い上げるメンバーのヴォーカルとしての技量も、高い次元に到達していた。もはやその佇まいは、ヴォーカル・ユニットとバンドメンバーという枠を超え、まるで『ヴォーカル4人編成のバンド』のようだった。

また今回のライヴは、映像や照明も素晴らしかった。CYNHNの楽曲の音楽の世界を届けるため、このライヴのためにあらゆるチームが一丸となって、それぞれの楽曲を表現することに命をかけていたことが伝わってくるステージだった。

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

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ここでメンバーがステージを去ると、ここでカラフルな光を放つキューブが現れる。インタールードを挟み、再び登場した4人はキューブに腰をかけ、ピアノのリフレインから“はりぼて Remix”へ。歌声を全面に押し出したようなアレンジが施され、その美しい旋律を、暖かな光が優しく包んでいった。

ライヴはさらに「いまからあなたにありったけのおまじないをかけます。わたしたちの言葉です。」という綾瀬志希によるセリフから、綾瀬自身が作詞を手がけた新曲“バニラ”をこの日初披露。「今見ている当たり前の風景が宝物だと考える反面、消したい傷や想いたちもなかなか消えてくれることはない」という想いをポストロック・オルタナティブのサウンドに乗せてスパイスとしての残り香を感じさせ、聴く者の心をグッと掴んだ。

【ライヴレポ】CYNHNは進む。見ぬ青い景色を求めて。──〈CYNHN TOUR 2025 – INVERSION -〉

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楽曲の世界を存分に堪能する前半パートを終え、ここからの後半線は「みんなで盛り上がっていきたい」という言葉とともに、スケールの大きなロック・ナンバー“飴玉”やCYNHNきってのキラー・チューン“アンサンぶる”を叩き込み、フロアを熱狂の渦に巻き込んでいく。さらに“ノミニー”では「後ろの方、クラップやってないの見えてますよ!」「2階の関係者のみなさんもやってください!」と本当に会場中でクラップを巻き起こし、ヴォルテージをMAXまで高める。“楽曲派”として紹介されることも多いCYNHNだが、彼女たちの魅力は楽曲の強さだけでなく、こういったライヴにおけるパフォーマンスの熱量の高め方も素晴らしい、ということをここで改めて言及しておきたい。

ライヴはさらにここからクライマックスへ。ファイナル公演ということで“楽の上塗り”では、今回の〈INVERSION〉のツアーの記録映像が流れ、それぞれのご当地のものを美味しそうに頬張ったり、ライヴの舞台袖で士気を高め合う姿に、客席も笑顔に。そしてライヴはさらに“水生”で盛り上がりは最高潮に達し、本編が終わったように思えたが、本当のラストは“氷菓”で儚く締めるのが、とてもCYNHNらしい。

星のように瞬き光る、輝きに包まれメンバー4人はステージを後にした。

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アンコールでは、“AOAWASE”、“いいおくり”の2曲をパフォーマンス。「反転、逆転」をテーマにしたこのツアーでは、「いつも、やってることと違う事をやっていく」というコンセプトのもと、「大切なことをそのままに挑戦的なセットリストにした」というCYNHN。その想いはしっかりとオーディエンスにも届いていたし、グループとしての新たな成長にも繋がっていくだろう。

最後は、特大のジャンプで盛大に大団円を迎え、バンドメンバーとともに、最後の最後まで来てくれた観客に感謝の言葉を伝えた。終演後にはエンドロールに乗せて、海岸沿いを歩くメンバーの映像が映し出されていく。(この映像は、のちに発表された新曲「バニラ」と繋がる匂わせなのだと後に知ることになる。)
その景色はまるで、まだ見ぬ青い景色を求め、進み続けるCYNHNの姿を象徴しているかのようだった。

CYNHN – バニラ Blue – Vanilla

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取材&文:ニシダケン
Live Photographer:真島洸

ライヴ情報

CYNHN TOUR 2025 – INVERSION –
2025.03.03(月)@Spotify O-EAST
セットリスト

M1 2時のパレード
M2 インディゴに沈む
M3 解けない界面論
M4 くもりぎみ
M5 ジンテーゼ
M6 キリグニア
M7 Tokyo stuck
M8 リサイズ
M9 はりぼてRemix
M10 バニラ
M11 飴玉
M12 アンサンぶる
M13 ノミニー
M14 楽の上塗り
M15 水生
M16 氷菓
en. 1 AOAWASE
en.2いいおくり

アーティスト情報

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Web https://cynhn.com/

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