「令和の赤ひげ先生」——ワンオペ診療で患者に寄り添う医師・大和行男の信念

医療法人社団先陣会の理事長として、複数の病院を経営する大和氏。しかし、一般的な「医師」のイメージとは少し異なり、その活動は非常にユニークで信念に溢れている。「令和の赤ひげ先生」と呼ばれる彼の背景に迫る。
すべてを診る、受け入れるという覚悟
私はもともと児童精神科が専門です。しかし、大田区にある「池上おひさまクリニック」では、内科、皮膚科、小児科、精神科、児童精神科と、幅広い診療を行っています。大きな病院では診療科目ごとに専門医が分かれており、「それは専門外なので他で診てもらってください」と言われたり、同じ病院内でも2~3時間待つこともあります。お子さんを持つ親御さんにとっては、とても不便ですよね。
私はこれまでの知識と経験を活かし、「自分の専門分野以外は診ない」のではなく、まずは何でも診る、受け入れるという覚悟でやっています。それが「令和の赤ひげ先生」としての理念であるべきだと考えています。でも、最近の若い人は「赤ひげ先生」を知らないみたいですね(笑)。イメージとしては『Dr.コトー診療所』の先生に近いかもしれません。
私は「池上おひさまクリニック」をほぼワンオペで運営しており、以前フジテレビの『イット!』で特集された際には「ワンオペ院長」と紹介されました。

何があっても患者の味方に立つ
ワンオペなので、受付から診察、会計まで全て自分で対応します。当初は患者さんに「えっ、先生だったんですか?」と驚かれることも多かったです(笑)。
待合室では、特に初診の患者さんは緊張しています。そこで、クリニックの内装にはあまりお金をかけず、家具はほぼニトリで揃えています。その代わり、ぬいぐるみをたくさん用意しており、最近は「ちいかわ」が人気ですね。初めて来院したお子さんが「ちいかわだ!」と喜んでくれることも多いです。
診療の際は、まず患者さんをリラックスさせることを重視し、会話の中で1回は笑ってもらうようにしています。実際にお笑いの映像をたくさん見て、患者さんがツッコミを入れられるような「ボケ」を研究したりもしています。そうした「話しやすい雰囲気作り」を大切にしています。
児童精神科や小児科では、親御さんとお子さんの意見が対立することがよくあります。例えば、お子さんは学校に行きたくないけれど、親御さんは通学させたいというケースです。こうした場面では、私は常に患者(子ども)の味方になります。お母さんには「少しだけ外してもらえますか?」と伝え、子どもと二人きりで話します。そして、「後でお母さんに話すことはないから、何でも話していいよ」と伝えます。
患者さんが元気になることが全て
児童精神科が専門ですが、皮膚科の診療を行うこともあります。思春期の女の子は、ニキビや肌荒れが原因で心が塞ぎがちになります。こうした場合、心療内科的なアプローチだけでなく、スキンケアや治療方法を提案した方が、回復が早いこともあります。そこで、私自身も肌のケアを研究したり、1年間で10キロのダイエットをするなど、自ら実践しながら学んでいます。医師として、どんな方法でも患者さんの回復を支えることが重要だと思っています。
児童精神科は、半年から1年待ちが当たり前で、人気の病院では2年待ちということもあります。しかし、それでは患者さんが必要な治療を受けられません。私は基本的に1週間以内に診察するよう努めていましたが、ワンオペのため最近は難しくなっています。今後は、他の小児科の先生や学校の先生とも連携し、地域に根ざした医療を提供していきたいと考えています。

■プロフィール
大和行男。
東京大学教育学部卒業。新潟大学医学部卒業。精神科・児童精神科を専門に、複数の医療機関で経験を積む。2024年1月、池上駅近くに『池上おひさまクリニック』を開業。
https://ikegami-ohisama-clinic.com/

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