映画『嗤う蟲』深川麻衣インタビュー「立場や目線によって結末もどう感じるか変わって来ると思います」

俳優の深川麻衣さんが、城定秀夫監督、内藤瑛亮さん脚本の映画『嗤う蟲』(公開中)で主演を務めています。本作は、日本各地で起きた村八分事件をもとに、ムラ社会のダークサイドをえぐるヴィレッジ≪狂宴≫スリラーとして注目を集めている一作です。

実際に存在する“村の掟”の数々をリアルに描いて、現代日本の闇に隠されているムラ社会の実態を暴く本作。『市子』(23)、ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(24)の若葉竜也さんと田舎暮らしを始めるイラストレーターの杏奈役を演じた深川さんにお話をうかがいました。

●杏奈というキャラクターですが、どのように演じられたのでしょうか?

杏奈は、都心を離れて夫と田舎に移住したけれど、イラストレーターの仕事を続けたい意思ははっきりしている。嫌なものは嫌で、自分の感情と行動が素直につながっているタイプで、しっかり我がある女性なんです。

後半は母親としての側面が強くなり、わたしは子どもを産んだことがないので想像でしか補うことができなかったのですが、かなり大事な部分になると思いました。その点は丁寧に演じたいと思い、城定監督やお子さんがいるまわりのスタッフの方にお話を聞いたりして膨らませていきました。

●脚本の印象はいかがでしたか? これまでにもムラの掟を扱う作品はありましたが、この麻宮村はまた一味違う展開もありましたよね。

日常と非日常のバランスが、どちらかに傾いているわけではなく、間にあるような映画だなと思いました。映画の中のゾワゾワ、ゾクゾク感をエンタメとして楽しめる作品になったと思うので、映画館にゾクっとしに来てほしいです。わたし自身、自分が出てないシーンはどうなったのだろうと楽しみで、特に田久保さんと三橋さんのシーンが楽しみでした。

●精神的に大変なシーンも多そうでした。

緊張感のあるシーンが多かったです。杏奈と輝道(若葉竜也)が言い争いになって杏奈が出ていくシーンがあるのですが、その緊迫した空気をきりとるため城定さんがワンカットで撮影しようと判断してくださったんです。長めのシーンになるための集中力を切らさないようなるべく1回で成功させるためにみんなで調整してから本番に入りました。

●若葉さんをはじめ、田口トモロヲさん、杉田かおるさんなど演技派のみなさんばかりですが、共演の感想はいかがでしたか?

本当にみなさんのパワーがすごかったです。杏奈としてはみなさんのお芝居を受けるシーンが多いので、みなさんに助けられました。最終的には自分の力で状況を打破しようと杏奈は動きますが、それまでは村の住人にどんどん詰め寄られて精神的に崩れていく役柄だったので、村人のみなさんや若葉君がいたからこそ成立出来たお芝居だったかなと思います。

●ちなみにこういうジャンルの映画を普段観ますか?

幽霊系、ホラーは苦手ですが、ミステリーやサスペンスは大好きです。

●役柄を演じる上で大切にしていることや、日常で気をつけていることはありますか?

相手の方との距離感やその場で生まれるものを大切にしています。以前オーディションで自分のしたいお芝居を固めすぎてうまくいかなかった経験があり、それ以降はある程度の芯の部分はちゃんと考えますが、後は撮影現場へ行ってから直接やり取りして生まれるものこそが大事だなと思って意識しています。

人間観察はわりと好きな方です。リアルタイムで参考になるなと思うことはないのですが、後から考えて役を作っている時にあの時の人に似ているところがあるなと、採り入れてみたりすることはありますね。

●今後チャレンジしたい作品や役柄はありますか?

一度もやったことがないものにチャレンジしてみたいです。そういう意味ではやったことがないもののほうが多いのでいろいろと残されていますが、知識が要るような医療もの、専門職などの役にも挑戦してみたいです。普段生活をしていたら出来ないようなことをたくさんやらせていただいているので、まだまだ経験していないことを役として経験出来たらいいなと思っています。でも、どんな役でもうれしいです。

●今回の『嗤う蟲』、みなさんはどのように楽しんでほしいですか?

城定監督もおっしゃっていたのですが、村人と私たち夫婦のどっちかが100パーセント悪いということではなくて、観る立場や目線によってはどちらにも同情出来ることがあると思うんです。立場や目線によって結末もどう感じるか変わって来るはずです。ゾクゾク感、ゾワゾワ感や、この人たちは何を隠しているのだろうという怖さをエンタメとして楽しめる作りになっていると思うので、前情報なしでも気軽な気持ちで観てほしいです。

■ストーリー

田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈(深川麻衣)は、脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保(田口トモロヲ)のことを過剰なまでに信奉していた。

二人は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも新天地でのスローライフを満喫する。そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていく。

一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された<掟>を知ってしまう。それでも村八分にされないように、家族のため<掟>に身を捧げることに……。

(C) 2024映画「嗤う蟲」製作委員会

(執筆者: ときたたかし)

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