いま見直したい、おうちのセキュリティ。住宅設備のプロ『LIXIL』が考える防犯対策を見に行ってみた[前編]
Photographed by Kaoru Mochida
ここ最近、住まいを狙う犯罪の質が大きく変化しています。空き巣のような「留守宅への侵入」のみならず、在宅時を狙った「強盗」まで起こるように。しかも闇バイトのような組織的な犯行が増えていて、おうちの防犯対策にも進化が求められていると言えそうです。
住宅や店舗への悪質な侵入窃盗のニュースが続くなか、2024年10月ごろから住宅設備建材メーカーのLIXIL(リクシル)へ届いた防犯関連の問い合わせは、これまでの平均の2倍以上に。特に戸建てや古い家にお住まいの方、シニア層からの相談が多いといいます。
日々のおだやかな暮らしを守るためにも、改めて考えたい住まいの防犯対策。LIXIL HOUSING TECHNOLOGY サッシ・ドア事業部の柳通さんに昨今の状況をうかがうとともに、「LIXILショールーム東京」で最新の防犯設備をチェックしてきました。
急増する防犯相談。いま何が起きているのか
2024年の秋以降に強盗事件や車両盗難の報道が相次いだこともあり、防犯のお問い合わせが激増しました。およそ前年の2倍以上のペースです。なかには窓につける面格子のように、生産が追いつかないほど注文が殺到する商品も出ています(柳通さん、以下同)
事件のニュースを見て不安を抱いたお客様から、「玄関ドアを防犯性の高いものに交換できないか?」「今の窓に防犯フィルムを貼り付け可能か?」など、防犯性を強化する手段の問い合わせが増えている、とのこと。
住まいの対策と言えば、以前は地震や台風などの防災対策が中心でした。しかし2024年の秋以降は、防犯への意識が急速に高まっているようです。
強盗が狙う意外な場所。自宅や実家は大丈夫?
「マンションと戸建て。侵入窃盗で狙われやすいのは、どちらだと思いますか?」 そう言いながら柳通さんが見せてくれたのは、警察庁が公開している「住まいる防犯110番」のデータです。
この資料によると、狙われやすいのは戸建てです。マンションなど共同住宅での発生率が12.1%なのに対し、戸建て住宅は33%と、全体の3割以上を占めています
では、犯人はどこから入ってくるのでしょうか。戸建ての場合、なんと7割以上(74.8%)が窓と玄関から(窓53.5%、玄関21.3%)の侵入。意外なのが、侵入手口のトップ3。3位がドア破り、2位がガラス破り、そして1位は……なんと「無締まり」。つまり、住人の鍵のかけ忘れなのです。
家族が在宅中だから、あるいはゴミ出しだけだからと、鍵をかけない方もいらっしゃるかもしれません。でも最近は在宅時の侵入も増えています。基本的な防犯対策として、在宅中でも必ず施錠する習慣をつけることが重要です
「5分」が分かれ目、プロが教える防犯の常識
「防犯対策で、とても重要な数字があるんです」と柳通さん。その数字とは「5分」。
侵入者の約7割が、5分以内に侵入できなければ諦めるというデータがあるそうです。
5分というのは、近隣の方から通報・目撃されるリスクを考慮した時間です。この時間を一つの基準として、侵入に5分以上かかる設備を備えれば、犯罪の防止につながっていくと考えられます
つまり、たとえ狙われたとしても“入りづらい家”をつくることが防犯のカギ。
特に侵入経路の上位を占める窓と玄関は、しっかりとガードすることが肝心です。
防犯は玄関ドアから。最新機能をチェック
ここからは「LIXILショールーム東京」に移動して、最新の防犯設備を見せていただくことに。
まず目に飛び込んできたのは、新築でもリフォームでも取り付けられる最新鋭の玄関ドア「XE」。随所に住まいを守る工夫が隠されています。
まずは「2ロック仕様」になっていること。一カ所だけの鍵では開けられやすいため、二カ所に分散して設置することで、物理的な破壊への抵抗力を高め、ピッキングに時間がかかるようになっているそうです
そしてユニークなのが、施錠時にドアの側面から出てくる突起「デッドボルト」の形状。ここがただの「棒状」ではなく「鎌状」になっていて、扉と外枠の接合部にガッチリと噛み合います。器具を用いる「こじ破り」と呼ばれる侵入手口への対策です。
また、進化しているのはドアの外側や鍵の構造だけではありません。
「実はこの部分が、よく狙われるポイントです」柳通さんが指さしたのは、ドアの内側にある鍵の開け閉めをするための「サムターン」と呼ばれるつまみの部分。
玄関ドアや付近のガラスを割ってから手や器具を隙間に入れ、このつまみを回して解錠する、という手口が増えているのだそう。
なんと、このサムターンは簡単に取り外しができるんです。下のボタンを押すとスルッと外れるので、外出時や就寝時には取り外しておくことができます。これなら、万が一ドアやガラス部分を破られても、サムターンを回して鍵を開けられる心配はありません。
玄関を狙った侵入手口に対しての“つまみを外す”という物理的な対策方法。シンプルながら、とても効果的に感じます。
顔パスが便利!進化系スマートロックの実力
強引な手段から玄関を守るための対策法を知ることはできましたが、侵入手口の第1位は「無締まり」。かけ忘れてしまっては、どんな優れた鍵も無用の長物になってしまいます。
ここで注目したいのが、鍵の締め忘れ対策となるスマートロック(電気錠)システムです。
例えばLIXILの「FamiLock」は、スマートフォンがカギになることに加えて、リモコン、カードキー、タグキーなど、ライフスタイルに合わせて鍵のタイプを自由に組み合わせられるスマートロックシステム。しかも、ドアを閉めると自動で施錠してくれるオートロック機能付き。“うっかり鍵の締め忘れ”も防ぐことができます。
専用アプリを使えば、外出先からでも鍵の施解錠履歴をスマートフォンでチェックできるとのこと。家族の安全と便利さを両立させてくれる、賢い味方になってくれそうですね。
もう一つ、防犯対策として画期的なのが「顔認証システム」です。カメラで撮影した画像を、あらかじめ登録した顔情報と照合し、施錠/解錠を行います。
顔認証システムなら、カギを忘れて外に出てしまっても、顔を映すだけでカギの開け閉めが可能。お好みに合わせて鍵と顔のどちらも認証しないと開けられないモードもお選び頂けます
玄関ドアの防犯リフォーム、思った以上に手軽だった
とても便利な「FamiLock」ですが、残念ながら既存のドアにFamiLockの機能だけを後付けすることはできません。これらの機能を使うためには、「FamiLock」に対応できるドア本体と枠への交換が必要です。
大掛かりな工事が必要なのでは?と感じてしまいますが、リフォーム用玄関ドア「リシェント玄関ドア3」なら工事自体はわずか一日で完了できるとのこと。既存のドア枠を活かしながら、新しいドアを取り付ける「カバー工法」という施工方法を採用しているからです。
午前中に工事を始めて、お買い物から帰ってきたら完了しているというくらいのスピード施工が可能です
防犯機能を強化しながら、暮らしをより快適にする。住まいの「安全・安心」が、こんなにスマートに手に入れられる時代になったんですね!
ここまで、家を狙う犯罪に関する基礎知識と、玄関からの侵入を防ぐためのノウハウをお届けしてきましたが、この記事は[前編]。
続く[後編]では、窓まわりの防犯対策と、IoT技術を活用した最新の防犯システムについてをご紹介します。
侵入経路に最も選ばれやすい「窓の防犯」。気になる人はぜひ後編もチェックしてくださいね。
[後編に続く]
記事内の一部画像提供:株式会社LIXIL
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