金利上昇がリアルな時代到来。リスクに備える借り方は?ミックスローンやペアローンなどを解説
住宅ローンの金利上昇が現実的なものとなってきたが、住宅金融支援機構が2024年4月~9月に住宅ローンを借りた個人を対象に、2024年10月~11月に調査を行った結果が公表された。この間に住宅ローンを借りた人はどんなローンを選んでいるのだろうか?詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」を公表/住宅金融支援機構
2024年9月までに借りた人は、過半数がローンの選択に変化なし
さて、日本銀行が2024年3月に「マイナス金利解除」を決め、7月に政策金利を引き上げた。金利のある世界の到来だ。これを受けて、調査では「住宅ローン選択などに変化があったか」を聞いている。
日本銀行の金融政策変更の影響(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」)
これについては、「変化なし(利上げの影響はなかった)」が54.1%と過半数になった。そもそも「利上げがあったことを知らなかった」が6.8%いる一方で、「変化あり」も39.1%いた。その変化については「借入額を減らした」り、「金利タイプを見直した」りしていた。
では、どんな住宅ローンを選択したかというと、「変動型」を選択したのは77.4%で、借入金利は「年0.5%以下」が37.1%、「年0.5%超~年1.0%以下」の36.4%と合わせると、73.5%が年1%以下の金利を借りている。
調査結果から主流の借り方を想像すると、超低金利の変動型を選んで、頭金1割未満までがっつり借りても、毎月の返済額を抑えられるので、年収に占める返済額の負担率は20%以下に収まるというもの。家計にそれほど無理がないので、リスクを感じないというところだろう。
しかし、それは超低金利がずっと続いた場合だ。
日銀の利上げは住宅ローンの金利に影響する
ちなみに、金利タイプについておさらいすると、35年などの返済期間を通して金利が固定されるのが「全期間固定型」、当初の3年や5年、10年などの選択した一定期間だけ金利が固定されるのが「固定期間選択型」、年に2回金利が見直されるのが「変動型」だ。
変動型のタイプと長期間固定するタイプでは、金利の動きが異なる。国際的な金利上昇圧力を受けて、「全期間固定型」の【フラット35】の金利は、マイナス金利解除の数年前からじわじわと上がり、最近はほぼ横ばいに推移している。大手金融機関などの「固定期間選択型」で10年間固定するものは、日銀の動きを受けて金利が上がった。
一方で、多くの金融機関が「変動型」の参考にする短期プライムレートなどは変わらなかったので、これまで変動型の金利も動きがなかった。ところが、7月の政策金利の利上げで、9月の短期プライムレートが上がり、10月の変動型の適用金利を引き上げた金融機関も多かった。
調査対象者である、2024年4月~9月に住宅ローンを借りた人では、全期間固定型や10年固定型の適用金利に動きはあっても、変動型の金利は9月までは変わっていないことから、住宅ローンの選択に「変化がない」と過半数が回答したのだろう。
さらに、2025年1月の金融政策決定会合で政策金利を追加で引き上げた。これによって、4月に適用される変動型の金利がさらに上昇すると考えられる。このように、変動型の金利が動き始めた現在、どのように住宅ローンを選んだらよいのだろうか?
金利上昇に備えて住宅ローンを借りるには
まずは、超低金利の変動型をめいっぱい借りるのが常識、という考え方を捨てることだろう。長期的に金利の動きを予測することは難しいので、変動型と全期間固定型などのどれが有利かは一概に言えない。一方で、家計の事情はそれぞれによって異なるので、金利上昇による返済額の増加に対してどの程度受容できるかで判断する必要もある。
金利が上昇するとは言っても、過去の水準と比べると低金利ではあるので、返済額の増加を受容できる家庭なら変動型を選んでもよいだろう。また、返済額を変えたくないとか、金利の動きに右往左往したくないということなら、金利の固定期間が長いものを選ぶのもよいだろう。
借入額を抑えるという方法もある。頭金が多いほうが、適用金利が低いというローンも多いので、頭金の増加を考えるのもよいだろう。ほかにも、金利上昇リスクを軽減する借り方がいろいろと考えられる。
調査結果にリスク軽減のヒントが!?ミックスローンやペアローンなども選択肢
調査結果に話を戻そう。今回の調査では、「ミックスローン」の利用率を聞いている。ミックスローンは、金融機関から住宅ローンを借りる際に、異なる金利タイプを選べるもの。金融機関によって取り扱いの有無やサービス内容は異なるが、例えば4000万円を借りるときに、変動型のタイプと長期間固定するタイプを組み合わせて、2000万円ずつ、あるいは1000万円と3000万円などに分けて借りることができる。
こうしたミックスローンの利用率は12.8%。中でも、同額ずつミックスする方法が多かった。
ミックスローンの利用(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」)
長期的な金利の予測が難しい中、ミックスローンは、返済額が変わらない安心感と低金利のメリットの両方をまぜることで、変動型オンリーで借りる場合よりも金利上昇リスクを軽減できる。借りた後も、金利の動向次第でどちらかのタイプを繰り上げ返済することも可能だ。
同じような考え方で金利上昇リスクを軽減するのが、「ペアローン」だ。これは、同じ金融機関で、夫婦それぞれで住宅ローンを利用するもの。調査結果を見ると、ペアローンの利用率は26.4%だった。4世帯に1世帯以上がペアローンということになる。
※括弧内は前回調査結果
ペアローン・収入合算の利用(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」)
ペアローンを利用する際に、例えば夫は長期間金利を固定するタイプ、妻は変動型のタイプを選ぶことで、世帯全体で先ほどのミックスローンと同じ効果を得ることができる。ミックスローンでは、返済期間を変えられないものが多いが、ペアローンであればそれぞれの返済期間を変えることで、変動型のみ返済期間を短くするなどの借り方もできる。
一方で、気になる調査結果もあった。「返済期間」の結果を見ると、「35年超~40年以内」(16.5%)・「40年超~50年以内」(4.4%)といった超長期返済が増えていることだ。
※1:「40年超~50年以内」は、2023年10月調査より選択肢に加えて設問している
※2:2023年4月調査までは「35年超」として設問している
返済期間(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」)
最長返済期間が40年あるいは50年といった、返済期間が最長35年を超す住宅ローンを、一般的に「超長期住宅ローン」と呼んでいる。【フラット35】の場合の超長期ローンで【フラット50】があるが、これは住宅が長期優良住宅などに限られる。一方、まだ提供している金融機関は少ないが、民間の住宅ローンなどでは住宅に制限はない。
返済期間を超長期にすれば、返済額を抑えることができる、あるいは借入額を増やすことができるが、借り過ぎにつながって、金利上昇時に返済が難しくなるリスクも考えられる。さらに、低金利であっても返済期間が長いほど元金の減り方が遅くなる。そうしたリスクがあることも、知っておいてほしい。
住宅ローンの低金利が当たり前の世界から、金利が上がる世界へと転換した。かつ、住宅ローンは35年などの長期間返済をしていくものなので、その間に金利がどう変わるか予測が難しい。住宅ローンをどう選ぶかが、これまで以上に重要になっている。金利が上昇した場合を想定して、返済額をシミュレーションしてみるなど、無理がない資金計画をしっかり検討しておきたい。
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