2025年1月から不動産取引の囲い込み規制が始まる!そもそも囲い込みとは?規制方法は?を分かりやすく解説

2025年1月から不動産取引の囲い込み規制が始まる!知らないと怖い囲い込みのリスクとは?規制方法は?を分かりやすく解説

さくら事務所グループのらくだ不動産が「2025年開始の囲い込み規制で不動産業界は変わるのか」というメディア向けウェビナーを開催した。テーマになっている「囲い込み規制」とは何か?どういった影響が生じるのか?などについて、詳しく説明していこう。

規制される、不動産取引の「囲い込み」とは?

まず、不動産取引で生じる「囲い込み」とはどんなものかを説明しよう。

囲い込みとは、売却の仲介を依頼された物件を故意に他社に紹介しないなどで、自社でその物件を買う人を見つけ、売却も購入も自社でのみ成約させようとすること。なぜ故意に他社に紹介しないのかというと、売主からも買主からも仲介手数料が入る「両手取引」にしたいから。

不動産会社は売却の仲介を依頼された場合、成約に至れば売主から仲介手数料を受領できる「片手取引」が成立する。本来は物件が早く成約するように、多くの不動産会社を通じて広く買主を探すべきだが、自社の利益を優先して他社が仲介できないようにするわけだ。

そうなると、売主にとっては成約に時間がかかり、場合によっては値下げをせざるを得ないという大きなデメリットになる可能性がある。買主にとっても、買おうと思う物件にたどり着けないという大きなデメリットになる可能性がある。囲い込みは、消費者に不利な状態を作り出すものなのだ。

なお、仲介手数料は、売買であれば片手取引で一般的に「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限となる(例外あり)。両手取引ならこの2倍を受け取れるので、1物件で2度おいしいことになる。賃貸借の仲介手数料は、貸主から賃料の0.5カ月分+消費税、借主から賃料の0.5カ月分+消費税、あるいはいずれかから1カ月分+消費税が上限となる。

「囲い込み」が発生する仲介の仕組みとは?

ではなぜ、囲い込みができるかというと、不動産仲介の複雑な仕組みがある。

メディア向けウェビナーの資料を使って具体的に説明していこう。らくだ不動産副社長の山本直彌さんによると、囲い込みは不動産取引の流れの中、主に下図の流れの2と3のタイミングで起きるという。

出典:らくだ不動産開催のメディア向けウェビナー資料より

出典:らくだ不動産開催のメディア向けウェビナー資料より

まず、売主側を仲介する不動産会社が集客活動を始めると、他社から「物件の確認」や「資料の請求」がされる。その際に、物件の販売図面を作成しないなどで、他社側の購入希望者に具体的な情報を提供できない状態にする方法がある。

また、他社から「資料の請求」や「内見の依頼」などがあった際に、「自社で商談中のために紹介できない」と虚偽の説明をする方法。「内見の依頼」に対して、日程の調整をなかなかしない方法もある。山本さんによると、内見候補日が2カ月先になるといった事例もあったという。

ほかにも、自社のみに仲介を依頼された場合に、情報交換をするための指定流通機構※のデータベース(Real Estate Information Network System=「レインズ」という)にその情報を登録することが義務づけられているにもかかわらず、登録をしないといった方法もある。
※指定流通機構とは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した組織で、不動産会社間で不動産情報を交換して、円滑に不動産取引を行うことを目的としている。

なお、不動産会社に仲介を依頼する場合は、正式な媒介契約を結ぶ。1社としか媒介契約を結ばない「専属選任媒介契約」と「専任媒介契約※」、複数社と同時に媒介契約を結ぶ「一般媒介契約」の3種類がある。1社だけしか媒介契約を結ばない場合は、「レインズ」への登録や依頼者への業務報告などが義務づけられている。
※専任媒介契約の場合は、依頼者自ら取引相手を見つけることが可能

「囲い込み」防止の対策としての「ステータス管理」とは?

政府も、不動産取引の囲い込みを防ぐための手を打ってはいる。2016年1月に、不動産会社間で利用する「レインズ」に、「取引状況(ステータス)管理機能」を導入した。

これは、1社だけに仲介を依頼する媒介契約をした売主が、“自分自身の物件の登録状況”を確認できるようにしたもの。レインズは不動産会社(宅地建物取引業者)ではない者が利用することはできないが、自分の物件に関してレインズにどのように登録されているか、確認用IDを使って閲覧できるようにした。

閲覧画面では、取引状況が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類のうちいずれになっているかをチェックできる。売主が紹介停止を依頼していない、購入申し込みがあると不動産会社から伝えられていないといった場合は、他社に物件を紹介できる「公開中」となっているはずだ。

レインズの登録に要するタイムラグを考慮する必要はあるが、「取引状況(ステータス)管理機能」は、売主自身が囲い込みの可能性に気づくことができる仕組みだ。とはいえ、売主がこうしたことを知らなければ、囲い込みの可能性に気づくことは難しいだろう。

出典:「取引状況管理」機能について(公益財団法人東日本不動産流通機構)より

出典:「取引状況管理」機能について(公益財団法人東日本不動産流通機構)より

2025年1月から始まる「囲い込み規制」とは?

では、この囲い込みをどのように規制するのだろう?

「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」などの改正によって、まず、「レインズ」に登録する物件情報について、「取引状況(ステータス)」を最新の状況で登録することを求めている。次に、レインズに登録したら指定流通機構が発行する「登録証明書※」を売主などの仲介依頼者に渡して、データベースから最新の取引の状況が確認できることを分かりやすく説明することを求めている。
※登録証明書には、確認用のURLやID、パスワードが記載されている。

特に、1社にのみ仲介を依頼する媒介契約を結んだ場合で、「取引状況(ステータス)」が事実と異なるときには、宅地建物取引業法の指示処分の対象となるので、違反すると一定の処分が科されることになる。

「囲い込み規制」の効果はどの程度あるか?

では、こうした方法で、囲い込みの規制に効果はあるのだろうか?冒頭のメディア向けウェビナーで、囲い込み規制の実効性についてどういったコメントがされていたか、紹介しよう。

らくだ不動産の山本さんは、罰則規定ができたことで一定の効果はあると思うが、現場での囲い込みがさらに巧妙になるのではないか、と懸念するコメントをしていた。また、現場の若い社員は、先輩や上司に言われた通りしているだけで、自分が囲い込みをしていると認識していない場合も多いという。囲い込みに関するリテラシーを高めていく第一歩にはなると思うが、不動産会社を教育するという根底から取り組まないと囲い込みを是正することは難しいかもしれないといった指摘もしていた。

また、さくら事務所会長の長嶋修さんは、アメリカでは囲い込みについて業界全体で監視する体制ができており、違反が度重なるとMLS=Multiple Listing Service(アメリカ版のレインズ)が使えず、結果として仕事ができないなど厳しい処分がなされることを例に挙げ、いま程度の罰則では実効性が薄いのではないかとコメントしていた。

たしかに、今回の規制だけでは抜け道もあるので、囲い込みができなくなるわけではないだろう。しかし、政府が不動産取引の囲い込み防止に対して、強い姿勢で取り組むことを明らかにしたことの意味は大きいと思う。

また、自身が売主や貸主になる場合は、できるだけ早く高く成約するように、不動産会社がどういった活動をしているか、状況の報告を求めたりレインズで確認したりしてほしい。もしかしたら、消費者の意識が変わることのほうが、囲い込みを抑制する効果が高いかもしれない。

SUUMOジャーナル

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