『池の水ぜんぶ抜く』『笑ってコラえて』あのヒット番組・名企画誕生のウラ側 不可能な企画と思われても押し切る「強引さ」も時には必要?

テレビ番組の企画というのは一体どのようにして通過し、放送にこぎつけるのだろうか? そんな企画成立にまつわる秘話を、ヒット番組の実例を挙げながら語っていきたい。

ダメ出しを浴びた「池の水ぜんぶ抜く」

『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』という番組がある。テレビ東京らしい、思い切った企画である。タイトル通り、池の水をぜんぶ抜くことで、そこに棲んでいる生物を一挙に見ていこうというものだ。
 
ロンドンブーツ1号2号・田村淳、ココリコ田中直樹、さらに毎回のゲストが奮闘するドキュメントバラエティだが、誕生するまでには、あるテレビマンのちょっとした“策略”があった。

そのテレビマンは企画を考える中で、「掻い掘り(かいぼり)」という作業を知る。かいぼりとは、池や沼の水をくみ出して泥をさらい、魚などの生物を獲ることを指す。農業用の溜池を維持するために昔からおこなわれてきたことだ。
 
これは面白いと踏んだテレビマンはストレートに「池の水ぜんぶ抜く」ことを企画書に謳いあげたという。ところが編成部からは「抜いたって何にもならない」「2時間成立しない」とダメ出しを浴びてしまう。

日本の空港に降り立った外国人に来日の目的を聞き出して同行する『YOUは何しに日本へ?』など、直球勝負の番組が多いテレ東といえども大義名分が必要なのだろうか。そこでそのテレビマンは、「危険生物から池を救え」という企画書に書き換えて再び提出したところ、みごと採用されたという。ただ現在の番組からは「危険生物から池を救う」要素は、そこまで感じられない。
 
2017年のスタート以来、放送時間や曜日などを変えながら、今でも月1レギュラーとしてテレ東の看板番組となっている、この『池の水』。企画書のテイストを変えたら編成部からのゴーサインが出て通ったわけだが、結局どんな企画でも、実際にやってみないと分からないのだ。

やってみないと分からなかった「ダーツの旅」

 
さらにこの「やってみないと分からない」ことを伝える好例が、日本テレビ系の番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』のヒット企画「ダーツの旅」だ。これは言わずもがな、司会の所ジョージが日本地図めがけてダーツを投げ、その矢が刺さった日本各地の村や町にスタッフが突撃取材。村民や町民に誇れることを聞いて回るというロケ企画だ。

ところが撮影前、周囲からは「素人を撮りに行っても面白くないでしょ」と反対されたという。それでもスタッフは撮影を敢行。完成したロケ映像を見て周囲は初めて「面白い!」と、この企画の面白さを認識したという。

このエピソードは、頭で考えて難しいと判断した企画でも、実際に試すと意外と面白いこともあるということを教えてくれる。つまりこれは面白いと思ったら、無謀と思われても時には押し切る強引さも必要なのかもしれない。

(執筆者: 田中周作)

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