斬新な恐怖の世界が話題に『みなに幸あれ』下津優太監督インタビュー「固定の価値観を疑う癖がついているかもしれない」
2021年日本で唯一のホラージャンルに絞った一般公募フィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」の初大賞受賞作品である『みなに幸あれ』が、長編となり全国公開中。主演は、今最も注目を集める俳優の一人で、若手俳優の中でも確かな演技力で評価の高い古川琴音。古川自身初めてのホラー映画への出演。メガホンをとるのは、「日本ホラー映画大賞」にて同名タイトルの短編映画として大賞を受賞した下津優太。商業映画監督デビューにして、早くも世界各国の映画祭で称賛を浴びており、今までに観たことのない斬新な恐怖の世界を創り上げています。
下津監督に本作へのこだわりや、今後の展望などお話を伺いました!
――原案も監督によるものとなっていますが、どの様な時にこのお話の着想を得ましたか?
都市伝説で「地球上感情保存の法則」というものがあると知りまして、それが地球上に住む幸せな人と不幸な人を足し合わせると、ゼロになるみたいなものなんです。それをベースに考えてきました。もしその法則が本当であれば、「不幸な人を意図的に作り出せば自分たちの幸せが得ることが出来る」という発想をする人が生まれるのではないかと。
それを3、4年前に知ったんですけど ずっと頭のすみにあって。この映画を作る時にもう一回見直そうと思ったんですけど その動画が見つからず、あれが本当だったのか分からないのですが。
――田舎のおどろおどろしさという、ホラーファンがたまらない映像を見せてくださいました。ロケや美術でこだわった点を教えてください。
作るからには国内だけでなく、海外でも評価を得たいなと思っていました。そうなると日本の田舎の風景というのは欧米の人から見ると新しいものもあるし、日本の民家や高齢者もフックになるのかな、と。
ロケ地となった民家は本当に良いお家でしたよね。あの2階の奥の部屋が、“秘密の部屋”になっているんですけれども、間取りもちょうどいい感じのホラーにうってつけのロケ地だったなと思いました。
――福岡でのロケというのはどういう理由からですか?
本作の前身となる短編映画の11分の「みなに幸あれ」をまず福岡県の田舎で撮りました。僕が福岡出身だったということもありまして色々なツテだったり、フィルムコミッションさんがいろいろ動いてくれて。関東近郊で電車の中のシーンとかって、まず撮れないんですよ。そのあたりの撮影もかないましたし、メインのキャスト以外、福岡のキャストの方を使っていて、端々に出る方言感が良い味を出しているのかなと思います。
――好きな田舎ホラーや、こんなものを作りたいと思った作品・物語があれば教えてください。
田舎とか村ってなると、近年ではアリ・アスターの『ミッドサマー』がすぐ出てきますね。狂ってる映画だなと思いつつ、あのように僕も狂いたいなというのが頭のどこにあったかもしれないですね。
――古川琴音さんの鬼気迫るお芝居が凄かったです。古川さんに監督からお願いしたことはありましたか?
古川さんにほとんど僕から何も言ってなくて、古川さんご自身が考えて自分のビジョンを持って現場に来られていたので、ほとんど言うことなしでした。作品の規模感的にそんなに時間がなかったので、ほとんどワンテイクで進めていったという感じで、僕のイメージしてた演技もしくはイメージを超えてくるような演技を毎回してくださったので。古川さんだからこそ本当に成り立った映画だなと思います。
――物語を作るために、アイデアを作るために日頃から心がけていることを教えてください。
ホラーって映画の中で特にアイデア勝負だなと思うところがあるので、アイデアの本で読んだことなのですが、新しいものというのは何かと何かの組み合わせであったり、知識がないとその組み合わせもできないので、知識やアイデアをストックしておくっていうのが一つかなと思います。あと固定の価値観を疑う癖と言いますか、何事もすぐ真に受けるんじゃなくて、立ち止まってちょっと考えてみるみたいな。そういう癖はついているかもしれないです。
――監督はこれまでもいくつかのホラー系の賞に応募をされていますが、そう言った経験を経て学びを得たことなどを教えてください。ホラーを作り始めたきっかけなど。
都市伝説チックなテーマが好きということと、自分の映像のトーンだったり、演出の仕方がホラーに向いてるんじゃないかなと途中で気付きました。ホラーってすごい表現の幅が無限にあると言いますか、基本何やってもいいというか。ホラーがジャンルとして特別好きなわけではなかったのですが、ホラーを作り始めて、ホラー映画の魅力と言いますか、可能性をすごく感じました。
目指せ「清水崇・中田秀夫超え」で頑張ろうと思っています。ホラー業界だとそのお2人がトップにいらっしゃいますし、若手の監督で思いつく方ってそんなにいないんですよね。またJホラーを盛り上げられることが出来るといいなと思いつつ、海外にも出ていきたいなと思っています。ホラーって言葉じゃなく映像で伝えることができるのが一番強みだと思うので海外でも挑戦できるような作品をどんどんやっていきたいと思います
――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会
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