デジカメの次はOld iPhone?
テクノロジーの進歩は、皮肉にも人々に古き良きものを再確認させるきっかけになっているようだ。Y2Kの流行がまだまだ続きそうな現在、Z世代は高画質カメラを売りにした最新のスマホではなく、あえて低画質のカメラで撮影することに美的魅力を見出している。
コンパクトデジカメがその「画質の良さ」でファミリー層の人気を集めた2000~2010年頃を第一次コンデジブームと名付けるならば、2022~2023年はY2Kの流行を背景にその「粗い画質」でZ世代を魅了した、第二次コンデジブームであった。国内外のセレブやコンテンツクリエイターが次々とデジカメで撮影した写真をSNSに投稿したことで、アナログカメラを使うことがおしゃれな人のステータス・・・とまではいかずとも、これを機に多くの人のバケットリスト入りを果たしたはずだ。
しかし、流行の移り変わりは速いもの。デジカメのオルタナティブなアイテムとして、Old iPhone(Old iPhoneに正確な定義はないが、本記事では広角カメラが搭載されたiPhone8以前のモデルを指す)がZ世代に注目され始めていることをご存知だろうか?
気になるあの子たちが夢中になる理由は一体どこに…知られざるOld iPhoneの魅力をご紹介。
トレンドはどこから?
韓国のアイドルグループTWICEのメンバー・チェヨンがwebメディアのインタビューにて、10年前に発売されたiPhone5cを撮影用に使用していると紹介したのが2022年8月。そこからファンダムを中心にOld iPhoneで写真を撮ることが広まり、韓国在住のインスタグラマーを中心に撮影用として日常使いされるようになってきている模様。とはいえ、トレンドはいくつもの要素が絡み合って生まれるもの。これはあくまでも一説だ。
なぜOld iPhone?
デジカメがバイラルになっている理由のひとつとして、誰でも簡単に「ノスタルジック」な質感の写真を撮影できることが挙げられるが、これはOld iPhoneでも同じ。ではなぜ、Old iPhoneがデジカメのオルタナティブなアイテムとして選ばれているのだろうか。
最初のキーワードはテンポ感。
デジカメは基本的に、電源を入れてから撮影モードに移行するまで、そして1枚写真(または動画)を撮ってから次の撮影にリロードするまでに少し時間がかかる。対してOld iPhoneは画面をスワイプしてすぐに撮影、連写が可能。普段使っているスマホと同じ感覚で儚い質感の写真を撮影できるハードルの低さは、反射的に撮影をすることの多いZ世代にとって魅力的に映っている。
加えて、撮影後の工程にも違いがある。デジカメは写真を一旦SDカードに保存し、カードリーダーを使って携帯に移す方法が主流だが、Old iPhoneはこの手間が必要なく、iPhoneユーザーであればAirDrop機能を使い簡単に携帯に取り込むことができるのだ。この素早いテンポ感は、SNSへの投稿を見据えて写真を撮るZ世代にとって重要なのだ。
入手のしやすさも理由のひとつ。
人気の急上昇に伴い、デジカメは全体的に価格が上昇傾向にある。例えばTikTokのハッシュタグ 〈#This is your sign to buy digital camera〉で多く紹介されている人気のデジカメモデル「Canon IXY」は、中古にもかかわらずフリマサイトで2万円以上で販売されている。対して、Old iPhoneはフリマアプリで数千円台から販売されているのだから、その価格差は一目瞭然だ。機種によって写りが異なるデジカメと違い、より手軽に、そして確実に理想の質感で写真を撮るこのできる安心感も人気の理由。
撮影方法は?
Old iPhoneで撮影した投稿に特に多いのが、ミラーセルフィー。特に寒色の蛍光灯の下で、フラッシュなしで撮るのがインフルエンサー達のお気に入りのよう。少しぼやけた、無機質で儚い写真がフィードの中で一際目を引く。
編集部M的おすすめの撮り方は、写真の片隅に自然光を入れること。光をランダムに白飛びすることで不完全さと柔らかさが生まれ、エモーショナルな雰囲気の写真が簡単に撮れる。昼間の撮影が断然おすすめ。
ミラーセルフィーを撮るときは、内カメラを鏡側に向けて撮ってみるのも画質の粗さを生かせて良い。フラッシュあり、フラッシュなしをその時の照明に合わせて使い分けてみて。
昔使っていたiPhoneがタンスの奥底に眠っているという人も多いのでは?同じ景色も、撮影するガジェットによって異なる質感で切り取ることができるのが写真の面白いところ。難しく考えず、自分の表現したい世界観・気分に合わせて写真を自由に楽しんでみて。
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。