山寺宏一インタビュー　ディズニー100周年記念『ウィッシュ』は、「ウォルト・ディズニーの想いを一切の妥協なく受け継いでいる」子ヤギのバレンティノ役

ウォルト・ディズニー・カンパニーが創立100周年を迎えた2023年、その記念作となるアニメーション最新作『ウィッシュ』が、いよいよ公開となります。

あの『アナと雪の女王』のスタッフ陣が贈るディズニー100年の歴史の集大成となる本作は、どんな願いも叶う魔法の王国の隠された真実をたった一人知ってしまった新ディズニー・ヒロイン、“アーシャ”が主人公の物語です。

魔法の王国の真実を知り、みんなの願いを取り戻したいと心優しくまっすぐな思いを持つ“アーシャ”を横で支える可愛い相棒、子ヤギのバレンティノ役を、ディズニー・アニメーション作品を声で支えてきた山寺宏一さんが演じています。

これまでドナルドダックや『美女と野獣』の野獣、『アラジン』のジーニー、『リロ＆・アンド・スティッチ』のスティッチなど、数多くの人気キャラクターを演じ分け、ディズニー作品に欠かせない“レジェンド”的な存在となっている山寺さん。お話を聞きました。

■公式サイト：https://www.disney.co.jp/movie/wish [リンク]

●まずは今回、『ウィッシュ』のキャラクター、子ヤギのバレンティノ役に決まった時はいかがでしたか？

初めて演じるキャラクターは緊張するんです。パート2であればそれなりに自信はありますが、普段声優をやられていない方も出る可能性がある作品ですから、その中で自分が選ばれたからにはほかの誰でもなく山寺宏一にしてよかったと、みんなに思われなくてはいけないですよね。

●うれしさと同時に責任感も感じていらっしゃったわけですね。

字幕版のバレンティノ役はアラン・テュディックさんが演じられていて、たとえば『シュガー・ラッシュ』シリーズなど僕も出ていますが、これまでの作品で同じ役柄で“共演”したことがなかったんですよね。今回、アランさんが演じるキャラクターの声を僕が演じることは初めてになるんですよね。ちゃんと声がマッチするように頑張りました！

●今回の『ウィッシュ』は、ディズニーがこれまで長い間テーマにして来た“願いの力”を、真正面から描いた力作でした。

そうですね。願いを抱き続けることの大切さを真正面から描く素晴らしいストーリーだと思いました。大切な何かを思い出させてくれます。何が正義なのかなどそもそも難しい問題も出て来るのですが、何人たりともその願いが踏みにじられることがあってはならないという。そこに果敢に立ち向かうアーシャは、素晴らしいヒロインだと思いました。

●バレンティノを演じるうえで気をつけたことは何でしょうか？

バレンティノは、声のギャップも魅力なんです。声の質感は人生経験豊富な中年男性という感じなのですが（笑）、思考はまだ生後三週間の子ヤギという。そこを気をつけました。本当におじさんになってもいけないし、ピュアであるべきだと思いました。幼いなりに自分の経験を踏まえてしゃべっているのですが、そこを理屈だけで考えるとおかしなことになるので、アランさんのニュアンスを損なわないようにと注意して演じました。

●本作はディズニー100周年記念作品であるわけですが、改めて世界中の人々を魅了するディズニー作品の魅力についてどう思われますか？

それはいくつもの要素があると思います。創始者であるウォルト・ディズニーの想いや、願い、魔法の意味を、今関わるスタッフたちがしっかり受け継いでいるということ。映画はいろいろなジャンルがあってよいですが、その中でより多くの人々の心に残るもの、そこを追求し続けているからだと思います。この作品も今、何が大切なのかを描いていますし。

●確かに長い間に関わる人々は変遷しますが、テーマとそれを伝えるストーリーの根幹みたいなものは受け継がれていますよね。

またそれを具現化するためのセンス、技術、そこに一切の妥協がないですよね。ウォルト・ディズニーさんもそういう方だったと思うんですよ。そして今のスタッフのみなさんもそうなのでしょう。僕はいち声優ですので内側を知っているわけではないのですが（笑）。声優として関わっているだけではありますが、ディズニーのいちファンとしては、そう思います。

だから今回の『ウィッシュ』を観てもその映像美に感動するわけですが、最新のテクノロジーではあるものの、CGを駆使して現実に近づけるわけでもないという。あくまでもアニメーションの良さを最大限に表現していると僕には感じました。どこか温もりや手書きの良さ、ディズニー・アニメーションで培ってきた技術を活かした最新のテクノロジーなのだと。なので、ワンカット、ワンカットが美しいなと思いました。どう人々の心に残るものを作るのか、一切の妥協がないんでしょうね。

●山寺さんはこれまで数々の作品で吹替えを担当されて来ましたが、声優として振り返ってみて思うことはありますか？

声優として、また表現するものとして学びは多かったです。これまで選び抜かれた方々、つまり僕が今まで声を当てて来た方たちはみんなすごい人ばかりで、みなさん声の表現力もすごいんです。ジーニーのロビン・ウィリアムズの時もそうですが、一流の俳優さんたちの表現を、吹替えする者として学んでいるということはあります。これはいつも思います。

●今日はありがとうございました。最後に映画を待っている方たちにメッセージをお願いいたします。

この作品は、ディズニー100周年記念にふさわしい作品です。＜世紀のドラマティック・ミュージカル＞と銘打っているとおり、音楽シーンが素晴らしかったですね。それを言うともう、すべて最高なのですが（笑）、映像美もすごい、ストーリーも面白い！　そして、願いを強く抱くことの大切さ、何者にも奪われるべきではない、支配されるべきではないということを真正面から描いた作品になっております。ぜひご覧ください。

■ストーリー

願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100歳になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、“願い星”のスター。空から舞い降りたスターと、相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。「願いが、私を強くする」──願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは…？

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(執筆者: ときたたかし)