”養育費未払い”に苦しむひとり親家庭の入居困難。”養育費保証”の家賃保証会社がサポート Casa

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”養育費未払い”に苦しむひとり親家庭の入居困難。”養育費保証”の家賃保証会社がサポート Casa

ひとり親、とりわけシングルマザーの住まい探しにおいて、収入面の不安から賃貸の審査に通らず、希望する物件に入居できないことがあります。とくに何らかの理由で就労できていない、または働いていても低所得の場合などにおいては、離婚した元夫からの養育費が貴重な収入源となります。この養育費を受け取れていないことがひとり親家庭が入居に困難を抱える原因の一つであることを知った家賃債務保証会社の株式会社Casa(以下、Casa)は、養育費保証サービスを始めました。

ひとり親の現状と養育費の受け取り状況、同社の取り組みなどについてCasa養育費相談室の赤池藍夏さん、長澤芳美さん、江藤慎介さんにお話を聞きました。

ひとり親、特にシングルマザーが住まい探しで抱える問題は?

ひとり親、特にシングルマザーになった場合、収入面で不安が生じます。厚生労働省の「2021年度(令和3年度)全国ひとり親世帯等調査報告」「2021年国民生活基礎調査」によれば、一般的な子育て世帯の平均世帯年収が814万円に対し、父子家庭は606万円、母子家庭においては373万円となっています。シングルマザーになるまで専業主婦で十分な仕事の経験を積めなかった場合、より収入が少ない、仕事に就けないといった問題は起こりやすく、元パートナーと共働きだった場合でも一人分の稼ぎが減れば生活に余裕はなくなります。そして、収入面の不安は住まい探しにも影響します。

子どもを抱えるシングルマザーの収入面の不安は、住まい探しにも影響する(写真/PIXTA)

子どもを抱えるシングルマザーの収入面の不安は、住まい探しにも影響する(写真/PIXTA)

離婚する前に持ち家がある場合は元夫の名義であることが多く、財産分与で家が夫のものとなり、妻が子どもを育てていくとなった場合には、新たに住まいを確保する必要が生じます。つまり離婚と住まい探しはセットになっているといえます。

また、子どもの生活への影響が少なく済むよう「同じ学区内で探したい」、子どもの将来を考えて特定の学校に通わせたいと希望する人も多いのですが、その場合は特にハードルが上がります。
Casaで住み替えのサポートを行なっている江藤さんはリアルな状況を教えてくれました。

「親子が暮らせる広さで、これまでよりも家賃を抑え、さらにエリアを絞るとなると物件がかなり限られてきます。家賃は一般的に収入の3割くらいまでが適正だと言われていますが、地価が高い地域の物件は家賃も高く、条件に当てはまる物件を探すと収入の4割~5割の家賃を無理して払うしかない、ということも少なくありません。

大家さんや管理会社に『家賃を払い続けられるのだろうか』という不安が生じると、入居審査に通らない、ということが起こります」(江藤さん)

ここで、ひとり親の就労収入だけではなく、毎月安定した「養育費」が確保できていれば、その分を収入に組み入れることができ、借りられる物件の幅も広がり、審査にも通りやすくなると言います。

取り決めをしても、養育費が受け取れていないことが多い

子どものいる夫婦が離婚した場合、親権者ではなくなった親も子どもの親であることに変わりないため、養育費の支払義務が生じます。親権を持たない(子どもと離れて暮らす)ほうの親が、ひとり親家庭に養育費を支払うことになります。

ところが、ここに大きな問題があります。

「厚生労働省の『2021年度(令和3年度)全国ひとり親世帯等調査報告』によれば、離婚に至る際に養育費の取り決めをした母子世帯は46.7%。さらに現在も養育費を受け取れている母子世帯はわずか28.1%ということですから、問題は深刻です」(赤池さん)

このような問題に対し、兵庫県明石市では、3カ月間月額5万円までを市が立て替えたり、養育費を受け取るべき人が裁判所でする差押え等の手続の費用を補助したりする事業を始めました。このような養育費を受け取る事業を始める自治体は増えてきていますが、まだまだ多くはありません。

養育費を確保して、希望の物件へ入居する準備を整えたいものです。

養育費の取り決め・受取状況。養育費を受け取れていないケースが多い(厚生労働省「2021年度(令和3年度)全国ひとり親世帯等調査報告」をもとに編集部作成)

養育費の取り決め・受取状況。養育費を受け取れていないケースが多い(厚生労働省「2021年度(令和3年度)全国ひとり親世帯等調査報告」をもとに編集部作成)

ほかには離婚前提で別居して一人で子育てをしている場合に、児童手当が配偶者に支給され、子どもと自身の生活に役立てられないというケースもあるそうです。

家賃保証会社が養育費保証サービスをスタートしたワケ

「家賃保証サービスを提供していくなかで、以前は普通に家賃の支払いができていたのに、急に家賃を滞納するようになる家庭があることに気づきました。理由を聞いてみると、ひとり親で『養育費が支払われなくなったため』という答えが多数挙がったのです」(江藤さん)

このような声を聞き、何とかして社会の役に立てないか、とCasaが2020年9月にスタートさせたのが養育費保証サービスです。Casaが元パートナーの代わりに毎月養育費を立て替えて支払うことで、ひとり親家庭が家賃を滞納せずに済みます。養育費の支払い義務を負う相手側への支払いの催促はCasaが行うため、ひとり親家庭の経済的な不安だけでなく、精神的な負担も軽減されると言います。

養育費保証の仕組み。養育費受取者はCasa(保証会社)と保証契約を結ぶことで、Casaが立て替えた養育費を毎月受け取ることができる(画像提供/Casa)

養育費保証の仕組み。養育費受取者はCasa(保証会社)と保証契約を結ぶことで、Casaが立て替えた養育費を毎月受け取ることができる(画像提供/Casa)

養育費保証サービスを利用するには「養育費に関する取り決めがあること」「サービスに申し込んだ時点で未払いがないこと」という条件がありますが、条件に合致しない場合でもCasaが相談に乗り、民間の調停機関などの窓口紹介を行っています。

「離婚してひとり親になることを考えたときには、養育費の取り決めをしておくのと一緒に、将来受け取れなくなることも想定して養育費保証サービスへの加入をおすすめしています」(赤池さん)

家賃保証会社が「居住支援法人」に。他団体や自治体とも協業

Casaは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の居住支援法人として指定されています。居住支援法人とは、2017年に改正された住宅セーフティネット法に基づき、住宅の確保に配慮が必要な人が賃貸住宅にスムーズに入居できるよう、居住支援を行う法人として都道府県が指定するものです。2023年9月時点では全国で700以上の法人が指定されていますが、NPOや福祉関係団体、不動産会社などが多く、家賃保証会社で登録しているところは珍しいそう。

「居住支援法人になることで、入居を希望する方に必要な支援を提供できるようになったことはもちろん、提携先の不動産会社とも一層連携しやすくなりました。最近は、ひとり親を支援している不動産会社と協業してセミナーを開き、情報発信にも努めています」(江藤さん)

現在は、大阪市、知立市、飯塚市の3自治体と連携協定を結び、養育費保証サービスを受ける人に保証料の一部を助成する仕組みを提供したり、シングルマザーの就労支援を行っている一般社団法人日本シングルマザー支援協会と連携し、シングルマザーの部屋探しだけではなく、その後に自立した生活ができるようサポートもしています。

「当社では、『ママスマ』というネットメディアを自社で運営しています。これは、主にシングルマザーの自立を促すことを目的に、子育てやお金について情報発信するメディアです。

このような活動を通じて、現在約4,000人のシングルマザーから反響があるほか、離婚アプリを開発している会社や、ひとり親を支援している団体などとの協業も行っており、つながりが広がってきました」(赤池さん)

Casaが運営するネットメディア「ママスマ」(画像提供/Casa)

Casaが運営するネットメディア「ママスマ」(画像提供/Casa)

「不安」が「安心」に変わり、自身のキャリアの支えにもなる

Casaで養育費の相談窓口を担当する長澤さんによると、離婚前から離婚後まで、さまざまな状況の人がおり、皆が不安を抱えているそうです。

「離婚の手続きはやったことがない、公正証書など言葉が難しい、仕事は、家は、子どもの預け先は……とやることが多過ぎてパニックになる人もいるので、まず話を聞いて、何から手を付けるべきかを整理し、不安をできるだけ取り除くようにしています」(長澤さん)

Casaがシングルマザーを対象に実施したアンケートで養育費保証に興味を持ったきっかけを聞くと、『不安だったから』という回答が80%にも上りました。

「そのような不安を抱えて相談された方が、サービスを受けた後には皆さん『安心』と言ってくれます。印象に残っているのは『離婚するときに、いろいろな人に助けてもらったから、私も誰かの助けになる仕事をしたい』と連絡をくれたシングルマザーの声です。その方は、離婚を機に資格を取得して専門職に就いたのだとか。養育費保証が心の安定につながり、キャリアに対する支えにもなったのだと思います」(長澤さん)

電話でシングルマザーの相談を受ける長澤さん。Casaの養育費相談室には離婚前の不安や離婚後に養育費が受け取れなくなったなど、さまざまな声が寄せられる(画像提供/Casa)

電話でシングルマザーの相談を受ける長澤さん。Casaの養育費相談室には離婚前の不安や離婚後に養育費が受け取れなくなったなど、さまざまな声が寄せられる(画像提供/Casa)

赤池さんによれば、養育費保証サービスの課題は「周知」だと言います。

「養育費の取り決めが交わされていなかったり、未払いが発生してしまってから養育費保証サービスの存在に気づいたりする人も多いのですが、そうなると私どもでできることは限られてしまいます。『あの時に知っていれば』がないように周知することが重要です」(赤池さん)

ひとり親世帯の住まい探し、養育費保証、そして就労支援団体への取次対応と、ワンストップで3本柱に対応するCasa。赤池さんは、「多くのシングルマザーが抱いている『養育費をもらえなくなったらどうしよう』という不安を解消するだけで、いきいきと暮らせて、生活が安定し、自分自身の収入アップのために時間を割くこともできる」「お母さんが笑顔になれば、子どもも自然と笑顔になるはず」と語ります。

ひとり親は就労・育児・住まいの全てが揃わなければ、生活を続けていくことができません。Casaの養育費保証のようなさまざまなサービスをうまく活用しながら、ひとり親と子どもたちがよりよい暮らしを実現できる社会になっていくことを願ってやみません。

●取材協力
株式会社Casa
・ママスマ

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