『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』武内英樹監督インタビュー「これだけディスられているのに、観終える頃には郷土愛が芽生えている」

魔夜峰央(まやみねお)の原作『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』(宝島社/累計発行部数72万部)を二階堂ふみ・GACKTという強烈な個性を放つ主演二人により実写化し、興行収入37.6億円を叩き出した映画『翔んで埼玉』の続編となる『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が大ヒット上映中です。

続編では、まさかの埼玉を飛び出し日本全土を巻き込む天下分け目の東西ディスり対決が開幕。お馴染みGACKT演じる麻実 麗、二階堂ふみ演じる壇ノ浦百美をはじめ、滋賀解放戦線のリーダー“滋賀のオスカル”こと桔梗魁を杏、冷酷無慈悲な大阪府知事 “関西のラスボス”こと嘉祥寺晃を片岡愛之助、ほか埼玉解放戦線員の加藤諒、益若つばさ、滋賀解放戦線員の堀田真由、くっきー! (野性爆弾)、高橋メアリージュン、そして現代パートを彩る和久井映見、アキラ 100%、朝日奈央、さらには西のクセツヨ軍団として天童よしみ、山村紅葉、モモコ(ハイヒール)、川﨑麻世、藤原紀香など超豪華キャスト陣の参戦が明かされ、今や日本中の注目を集めていると言っても過言では無い本作。

手掛けるのは、もちろん武内英樹監督。前作に引き続き、最高の作品を作り出した武内監督にお話を伺いました!

――本作大変楽しく拝見させていただきました!最高に笑ってしまいました。

本当ですか、良かったです。公開されたら、特に関西の皆さんがどう観てくださるのかとても心配ですが…(笑)。

――関西の皆さんもゲラゲラ笑ってしまうのではないかと信じています(笑)。まず、この続編を作ろうということになったのはいつ頃だったのでしょうか。

前作が公開されて数ヶ月経ったくらいですかね、まだ公開中にプロデューサー陣から、反響が大きいので続編を作ってもらえないかという話が出てきました。僕としては1作目で全力を出した感があったので少し不安もあったのですが、何より埼玉県民の皆さんがあれほどまでに楽しんでくださったので、ぜひ頑張りたいと。

――関西が舞台になるということで、「待ってました!」と「大丈夫?」というワクワクドキドキが入り混じりましたよね。

前作はありがたいことに関東では大反響をいただきましたが、関西の人にとっては埼玉が遠いからか、あまり反響が無かったんです。「関西版も観たい」といったSNSなどでの声も見かけることもあり、関西をメインにしようとまとまりました。原作には無いストーリーなので、どこの県をメインにしようかと考えた時に、滋賀、和歌山、奈良のフィルムコミッションの方々に話を聞いて、滋賀が前作でいう埼玉的なポジションであるということが分かりました。それで滋賀をメインにストーリーを考えていこうと決定しました。

――和歌山も奈良も掘り下げ甲斐のある場所ですが、滋賀というのは確かに興味深すぎる場所ですよね。

滋賀のフィルムコミッションの人も、「ぜひやってください!滋賀はいくらディスっても大丈夫ですから!」と熱烈にアピールしてくださったんですよ。

――「〜琵琶湖より愛をこめて〜」という最高なタイトルにあるとおり、「琵琶湖の水止めたろうか」といった様な、“あるある”の宝庫でもありますよね。

これは劇中でも描いていますが、戦国時代は「近江を制するものは天下を制す」と言われている超重要な土地だったわけです。琵琶湖の水はもちろん、土地も豊かで、立地も良く、皆が近江を目指していた。今も、自然が美しいですし、美味しいものもたくさんあって、素晴らしい場所なのに、いかんせん大阪と京都が強すぎる。滋賀県が北関東にあったら、大観光地になっていたはずなのに、周りが強すぎるせいでなんとなくボンヤリしたポジションにいるということが、なんとも興味深いなと思いました。

――確かに、自然も文化も充実している場所ですものね。

今回は2年ほどの時間をかけて、あらゆる人たちに話を聞き、「ここまではネタにして大丈夫」「これはシャレにならない」と線引きしたうえで脚本に落とし込みました。そこまで徹底してリサーチしないと、人を傷つけたり、表面的な笑いになってしまう危険性があります。色々な話を聞くと、京都の人は自分たちが1番だと思っている一方で、神戸は神戸で、自分たちは一番センスがよくておしゃれだと思っている。大阪も自分たちが1番だと思っているけれど、大阪の南北でも違いがあって。知れば知るほど面白かったです。

――「これはシャレにならない」という線引きは当事者でしか分からないですものね。

“あるある”は大切にしつつ、リアリティを排除することを大切にしています。「実在する地名だけど、あくまでも別世界のファンタジーですよ」とサインを出すことが、このシリーズではすごく重要だと思っています。京都も、特に描写が難しい場所なので、雅な歴史上の京都といった描き方にしていますし、甲子園の地下に工場なんてあるわけがないのだけど、こう描けば笑っていただけるかなという作りにしています。

――甲子園の地下に「真弓」や「岡田」という往年の阪神タイガースの選手のお名前が観れたことも面白かったです。

あそこに「バース」を入れなかったことはささやかなこだわりです(笑)。映画に着手した時はもちろん、阪神がリーグ優勝することももちろん分かっていなかったので、僕自身が驚いています。(※取材時にはリーグ優勝でしたが、その後無事に日本一に輝きました!)

――キャスティングについてもお伺いします。堀田真由さん、くっきー! (野性爆弾)、高橋メアリージュンさんという本当の滋賀県出身の皆さんの出演も胸アツでした。

滋賀ご出身の方は皆さん人柄もとてもあたたかくて、今回出ていただけて本当にありがたかったですね。皆さん滋賀愛が強い方ですし、撮影の合間に色々な滋賀のお話を聞かせていただきました。桔梗魁を演じていただいた杏さんは東京出身なので、言葉の部分は少し迷いました。でも、その土地出身じゃない方が方言を話すのもあれかなと思い、「パリで革命を学んできた」という設定にさせていただきました。よく考えたらGACKTさんも、二階堂ふみさんも沖縄県出身なんですけどね(笑)。でも、やっぱり関西弁のニュアンスっていうのは、県外の人には難しいかなと思います。

――杏さんとても麗しくて素敵でした…!私は「デート〜恋とはどんなものかしら〜」のファンなので、監督と杏さんのタッグがまた観られて嬉しかったです。

ありがとうございます。杏さんとは久しぶりにご一緒して、このような茶番劇は久しぶりだったと思いますがとても楽しんでくれていたと思います。原作の魔夜峰央先生の描く耽美な世界観にピッタリの存在感ですし、麻実 麗(GACKT)とのバランスもとても美しいな、と。先日、杏さんとお子さんが試写を観てくれて、お子さんたちも「杏ちゃんカッコ良い!」って喜んでくれました。

――本当にカッコ良くて、自慢の母ですね…! そして、重要な登場人物である“とびだしとび太”も素晴らしかったです。私はあの子が滋賀の子だと知らなかったので驚きました。

どの地域にも「ここ出身の人しか知らないこと」ってまだまだたくさんあるんですよね。それを知ってもらうことも楽しいですし、これだけディスられているのに、観終える頃には郷土愛が芽生えている。そんな作品にしたいと頑張っています。藤本さんはどちらのご出身ですか?

――私は長野県出身なのですが、埼玉県朝霞市に長く暮らしていたので、前作も本作も胸熱でした(笑)。

そうやって、自分の出身や住んだ所が出てくると、本当に皆さん喜んでくれるんですよね。それがありがたいですし、本作も怒られないかビクビクしながら作っていますが、ぜひそうやって「へー」とか「あるある」とか笑ってもらえたら嬉しいです。

――「埼玉には何も無いのではなく、『翔んで埼玉』がある」と言えるほどの、映画自体が名物になっていますよね。ぜひ今後色々な地域でのバージョンも観てみたいです…!

関西ほどの特徴的な地域がなかなか無いので難しいとは思うんですけどね(笑)、ぜひ皆さんのご意見も聞きたいですね。

――私も関西の皆さんの感想が今から楽しみです。今日は楽しいお話をありがとうございました!

『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』
大ヒット上映中
出演:GACKT 二階堂ふみ 杏 片岡愛之助 ほか
原作:『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』魔夜峰央(宝島社)
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
配給:東映
(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

公式サイト https://www.tondesaitama.com/
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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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