映画『道で拾った女』浜田学&佐々木心音インタビュー 行くあてのないふたりの寄り道だらけのロードムービーは、「すごく汚れているのに美しい世界」

2022年には4本が劇場公開されるなど、勢いが止まらないいまおかしんじ監督の最新作『道で拾った女』が現在公開中です。長距離トラックを舞台にした、行くあてのない男女ふたりのロードムービーとなっています。

主人公の長距離トラックドライバー・竜平役は、昨年いまおか監督作『あいたくて あいたくて あいたくて』で朴訥な家具職人を演じたことも記憶に新しい浜田学さん。そして竜平が道で拾うホームレスの女・のぞみ役を、石井隆、瀬々敬久、吉田浩太などの監督作で主演を務めてきた佐々木心音さんが演じています。

いまおか監督が優しく描き出す、帰る場所を無くしたふたりのさまよい人生について、浜田さん、佐々木さんにお話をうかがいました。

■公式サイト:https://www.legendpictures.co.jp/movie/twoontheroad/ [リンク]

●最初に物語を読まれた時の感想を教えてください。

佐々木:のぞみがすうっと自分の中に入って来るような感じで、何も違和感なく物語を読み進めていけました。わたしが演じることも自然と腑に落ちたような感覚もありましたし、トラックもののロードムービーで言うと廣木隆一監督の『ヴァイブレータ』が好きだったので、やってみたいとずっと思っていたんです。なのでとてもうれしかったです。

浜田:クズだなあこいつと(笑)。でも大好きな奴でもあり、僕も楽しく脚本を読みました。本当に酷い奴ですが、世の中にいるよなあとも思いましたね。いまおか監督ともご一緒したことがあり、いまおか監督が書く映画は好きなので、今回も面白いなと思いました。

佐々木:のぞみが言うセリフが、違和感がなかったんです。自分の言葉として、ちゃんと言えるんです。だいたいの場合、違和感があるものなのですが、それがなかったんです。

浜田:そうなんですよね。いまおか監督の書く脚本って、なぜかしゃべりやすいんですよ。それは僕も同じで、いつも思うことではあります。

●完成した映画をご覧になった感想は?

佐々木:あまり客観視はできないのですが、頑張ろうと思える作品になったと思いました。どんな人間でも「どうにかなるよ」みたいな感覚。クズとクズが頑張って生きている様を観て、ちょっとでも救われてくれる人たちがいたらうれしいなと思いました。

浜田:僕は全然意識していなかったのですが、完成した作品を観て、竜平とのぞみがけっこう依存し合っている関係に見えたんです。それこそ下心を持ちながら演じてはいたのですが、思っていた以上に依存し合っていたから、そこから抜けられそうで抜けられない流れを観られたことが意外というか。そういう流れもあるのかと。撮影中は気付かなかったんですよね。

佐々木:確かにそうかも。わたしたちとしては、淡々と見せていたつもりでしたよね。無意識下の依存があったように思います。

●それは興味深い現象ですね。演じている時は、どういうことを意識していたのでしょうか?

佐々木:重たいものを抱えている女性なので、「もう何とでもなれ」というか、捨て身のような感覚でした。だからこそどこかに行ってしまおうと、自由な発想に後先考えずになってしまう。そうとう自由な人だなと。

浜田:男のほうがグズグズしているくらいだよね(笑)。竜平は人生が上手くいっていない男で、僕自身も近い部分があり、とても投影出来たと思うんです。タイプは違うけれど共感したところを、自分の意識を入れつつ現場にいた感じでした。

佐々木:わたしも自分と似ている面の多い役柄だったので、今までの人生経験を活かせたような気がしています。

浜田:20代前半くらいの時、アルバイトしていた仲間で本当にどうしようもない奴がいて。どうしようもないけれど、いつもそいつの話題になるんですよ。みんな気になって仕方がない。そこを目指した感じはあります。

●ちなみに今回、初共演だったそうですね。

浜田:そうなんです。彼女はずっと笑顔でいてくれるので意外というか、それまでの役柄を見てエキセントリックな方かなと思っていたんですよね。

佐々木:そうですよね。飛び道具みたいな(笑)。

浜田:そのイメージがあったので、恐ろしい期間にならなければいいなと心配したのですが、自己紹介の時の笑顔に華を感じたことを覚えています。

佐々木:私も浜田さんのことは、もちろんいまおか監督の作品で観ていて、安心感と安定感は感じていて。現場では、寄りかかって大丈夫だと信頼していました。初めて会うまでは怖かったらどうしようと想像していたんですが、思っていた以上にフランクな方でよかったです(笑)。

浜田:お互い同じことを思っていたんだ(笑)。

●最後に映画を楽しみに待っている方たちへメッセージをお願いいたします。

浜田:こういう人たちっているよね、と思うはずです。脚本も役柄も取り繕ってはいないので、普段のドラマや映画ではお目にかかれないものが観られるかもしれないです。観て損はしないと思います。

佐々木:人間って不器用でも可愛くて滑稽だということがいまおか監督マジックにより伝わればうれしいです。昨今、きれいな作品が多いのですが、きれいにまとまり過ぎず、たとえ汚れていても美しく見える世界もあるということを、観て感じてほしいです。

■ストーリー

春日部竜平はトラック運転手。年中トラックに乗って全国を走り回っている。あるとき公園に立ち寄ると「助けて!」と女性の叫び声が聞こえてくる。近寄ってみると草むらで髪の長い女性がホームレス男3人にレイプされそうになっていた。竜平は勇気を振り絞ってホームレスを追い払い、女性を助け起こそうとすると女はその手を振り払って「さっき見てたでしょ、なんですぐ助けなかったの」と竜平をにらみつけ、フラフラと歩きだす。その姿から察するに女もホームレス生活を送っていたようだ。竜平は再び女に声をかけた。「バイトしないか、一日5000円出す。このトラックに一緒に乗ってくれるだけでいい」

こうして竜平のトラックに乗り込んだ女性・のぞみ。訳あって一年前に家を出て、今は住む家もなくホームレスをしていると言う。竜平は竜平で妻の待つ家に帰りたくない事情があった。二人は東京から沼津・浜松とトラックで移動しながら少しずつ互いの事情を知るようになる。道中デリヘル嬢や街頭詩人、ヤクザに追われる男と遭遇しながら移動を続ける二人。そして二人が出した答えは…。

出演:

浜田 学 佐々木心音

川上なな実 永井すみれ 東 龍之介 成松 修 川瀬陽太 ほか

脚本・監督:いまおかしんじ

全国順次公開中

(執筆者: ときたたかし)

  1. HOME
  2. 映画
  3. 映画『道で拾った女』浜田学&佐々木心音インタビュー 行くあてのないふたりの寄り道だらけのロードムービーは、「すごく汚れているのに美しい世界」
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。