超高齢社会における医療課題解決に向け、在宅医療や災害時医療を支える超音波装置(エコー)の開発をリードするGEヘルスケア・ジャパン株式会社は9月29日、これからの在宅医療の在り方を考えるパネルディスカッションを渋谷ストリームホールで開催。関根勤さん、榊原郁恵さんをスペシャルゲストに招き、「自宅はやがて、診療室になるのか?」をテーマに3人の専門家を交え、多角的な視点からこれからの在宅医療に求められる姿について議論しました。
在宅医療の可能性を広げる“ポケットエコー”とは?
少子高齢化が進む日本において、高齢者数がピークとなる一方で医療・介護の担い手が急減する“2040年問題”が医療業界で喫緊の課題となっています。こうした状況の中、より重要性が高まるのが地域における在宅医療。GEヘルスケア・ジャパン株式会社執行役員で超音波本部長の大成学志さんは、パネルディスカッションの冒頭、「医療が患者さんに近づくことが重要」と語っています。
そこで同社が取り組んでいるのが、医療機器を活用したイノベーションによる医療のサポート。同社はこれまで、精密かつ使い勝手の良い診断装置の開発に取り組むとともに、この10数年にわたり地域の医療連携や災害時に利用できる持ち運びが簡単なポケットサイズの超音波装置(以下、「エコー」)の開発をリードしています。医師や医療従事者はもちろんのこと、過疎地やへき地に住む高齢の患者さん、ケアする家族の安心や負担軽減にもつながる“ポケットエコー”が、徐々にドクターの“聴診器代わり”として広がっているようです。
冠動脈狭窄を経験した関根さん「経過観察が自宅でできれば安心」
スペシャルゲストとして登壇した関根勤さんは、2016年に冠動脈狭窄を発症し、カテーテル手術を経験。その後、3カ月に1度は経過観察のため病院に通っているといいます。そんな自身の経験を踏まえ、在宅医療への期待を問われると「心疾患は経過観察がとても重要。在宅で持ち運びができるエコーがあれば本当に安心」と語りました。加えて「今は元気だから一人で通院できるけど、80歳、90歳になったときに娘とか孫に迷惑かけちゃうかも。そんな時、在宅医療なら付き添いの負担も減る」と期待を寄せていました。
実際の症例に「こんなこともできるの?」と驚き
当日は、宮古島でへき地医療に取り組むドクターゴン診療所院長の泰川恵吾さんがポケットエコーを活用した実際の症例も紹介。1例目は101歳女性で、「排尿が少ない」との症状。ポケットエコーで膀胱の状態を確認したところ、尿が膀胱から十分に出せない状態ということが判明し、適切な処置につながったという例です。
この事例を聞いた関根さんは「自分も頻尿に悩んで泌尿器科を受診してすぐさま超音波で残尿を診てもらった。画像を見て自分もああいうの最近見たなと思いました。エコーってダメージなくて良いですよね」と語っていました。
2つ目に心臓のエコー画像も紹介されました。自覚症状はあまりなく血圧が低めという患者さんで、心不全なのか脱水なのか症状だけでは判断がしづらい状態でしたが、エコーで診てみると右心室と左心室の大きさが異なり、心不全という診断につながったと言います。
最後に紹介されたのはポケットエコーを活用して「神経根ブロック」、いわゆる麻酔をして自宅で手術をした事例です。足が腐ってしまい、切断手術をするために神経根ブロックが必要でしたが、病院まで連れて行くことが困難だったため、ポケットエコーを活用。エコーにより針を刺す場所を見ながら手術の準備をする様子が紹介されました。
榊原郁恵さんは「これだけなんですね!大きな機材を移動させなくてもいいんだ」と感心した様子。関根さんは「はあ~、ポケットエコーでできちゃうんですね!父親が心臓が悪かったんですけど、もう少し早くあれば…」と驚きつつ話していました。
多方面から在宅医療を考える
パネルディスカッションには元厚生労働省で現在ボストンコンサルティング グループシニア・アドバイザーの武田俊彦さん、訪問看護ステーションなどを運営するソフィアメディ株式会社最高執行責任者の羽田真博さんも登壇。国の制度における課題や将来求められること、看護・介護視点での在宅医療の在り方などについても語られ、患者、医師、医療行政および業界など様々な観点から深く議論されました。
榊原さんは「今日来てよかった。在宅医療について不安なところもあったけど、21歳のときに父が心筋梗塞で他界し、主人が昨年敗血症で(亡くなり)、90になる母も月1回通院して…家族としても病院に行く前に判断するのが難しい。在宅医療が身近になればすぐに相談して病院につないでもらうこともできる」と期待を寄せました。
GEヘルスケア・ジャパンの大成さんはパネルディスカッションの最後に、「医療というものが一人ひとりの中で近くなり、身近に感じて自分事として考え、社会課題に取り組んでいく。そういった一員となって日本全体でこのムーブメントを起こしていただければと思います」と参加者に呼びかけました。