「ドミセ」でドンキの明と暗に思いを馳せる(辛酸なめ子)

渋谷の開発がとまりません。道玄坂のドン・キホーテ渋谷店があった場所に型複合施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」がオープンしました。ホテルやショップが入っている中、注目なのはドンキの新業態一号店「ドミセ」です。プライベートブランド商品が集結した、“おドろき専門店”がコンセプトの店舗です。

おしゃれな「道玄坂通」のエントランスをくぐり、ディープな空気を醸し出す「ドミセ」へ。フロアマップを見ると「ドップ10」「ドこたえ」「ドすべり」「ドめし」「ド美容」「ド定番」「ドでかけ」「ド菓子」といったコーナーにわかれていました。

まず、「ドップ10」、売れ線商品が並んでいるドンキの栄光の通路へ。「情熱価格売り上げトップ10」は1位は、なんと1億5223万円も売り上げた「窯入り ミックスナッツデラックス」、2位は1億3765万円売り上げた「拡張ジッパーキャリーケース」など。わかりやすい展示で、並んでいる商品をそのまま買えます。

「スタッフもリピ買いしているマストバイ商品」コーナーは、1位「最後まで美味しい紅生姜せん」、2位「荒ほぐし鮭フレーク辛子明太風味」、3位「燻製ミックスナッツとモーク」など。スタッフはわりと味が濃いめのものが好みのようです。

「情熱込めすぎて長くなっちゃった商品名ドップ10」というコーナーも。例えば1位は318文字で、「きっかけはお客様の 『柿の種ってどれも同じだよね』の一言 柿の種の概 念を打ち破る本物の柿の種を食べて欲しい 日本唯一の柿ピー研究家の全面協力の基、日本中の柿の種を試食し厳選した逸品 いつもの柿の種より 高いのには理由がある 伝統を受け継いだ職人が、 その日の気温・湿度を肌で感じ取り、配合や生地を寝かせる時間を調整 一般的な柿の種に比べ、生地の焼き上げまで12倍程度の手間暇がかかる伝統製法でのこだわり 熟練の職人でも一度に10食程度しか味付けが出来ない気の遠くなる作業を寡黙に続ける本物の味 一番の違いは噛んだ時に響く心地よい音 食感の違う3種の柿の種が奏でるハーモニーは一度食べ始めると止まらない 柿の種の深淵に踏み込む第一弾 柿の種の真髄はここから始まる・・」と、ポエムのようです。まとめて「3種類味わえる柿の種」と表記されていましたが、これが商品名でも良かったのでは……。

こんな調子で「ドミセ」はすごい情報量で、POPや陳列を読み込んでいくとなかなか進めません。何が欲しいのかわからなくなってきますが、圧に負けてこのコーナーの「バナナチップサンド」など購入。

この「ドミセ」の一番のみどころは「ドすべり」コーナーです。商品担当者が売れると思って開発したものの、売り上げがいまいちで在庫を抱えることになってしまった、という負の遺産をあえて大体的に並べています。逆手に取って「ドすべり」と名付けて、セール価格で販売。「これでも売れなきゃ諦めます……」とボロボロのダンボールにPOPが書かれていて、自虐の空気が。商品には開発担当者の反省コメントもついています。埋もれていたということは、存在を知らなかった人も多く、ここで出会ってお得に買えるという利点も。

例えば「ユニークデザインカバーセットカソート」は1990円が500円に。カバーにソフトクリームや忍者などがプリントされていて、寝ていると変身したようになるアイテム。「可愛すぎて思わず大量に仕入れてしまいました」と若い店員のコメントが。Z世代なら琴線に触れるのでしょうか。意外と一人の裁量で仕入数を決められるようです。

「メンズ5足組パイルクルーソックス」(500円)は、パッケージ全面にネイティブアメリカンのイラストが。しかもよく見るとパッケージごとに違うネイティブアメリカンの言葉がプリント。担当者は当時ネイティブアメリカンにハマっていたのでしょうか。「パッケージのアメリカンテイストにこだわりすぎて商品の魅力を伝えきれませんでした」と反省コメントが。

「アロマウォーター」は1900円が200円までプライスダウン。「商品の良さが伝えられず、爆残り!!」とのことですが、たしかにどうやって使うのか、どんな香りなのか不明です。

「洋服たたみ上手」という謎の商品も300円で売られていました。服を畳むときに、芯のように使うアイテムのようですが「時短」「簡単」と書かれていますが面倒くさそうです。

「ドすべり パイ投げ危機一髪」は1980円が1000円になった、ロシアンルーレットのゲーム。パッケージのイラストを見ても、どんなゲームなのかわかりません。

こんな感じで大量の商品がひしめいています。また、大量に仕入れすぎたのか、消しゴムやステッィクのりも30円で売られていました。若い男子が「おもろ」などと言いながら「ドすべり」コーナーを眺めていました。

数週間前もドミセに行って「ドすべり」コーナーをチェックしたのですが、その時とかなり商品が入れ替わっていました「ドすべり」コーナーのお得な商品は実際売れているようです。思わず、肌がツルツルになるタオル(色がダサめ)と、マスクを購入。

哀愁漂う「ドすべり」コーナーから、売れている「ドップ10」まで、ドミセでは、商品開発やマーケティングについて学ぶことができます。何より、あきらめない姿勢に励まされました。人生、失敗しても、気力があればやり直しできます。

(イラスト・文:辛酸なめ子)

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