藤岡みなみ|ブドウの本当のおいしさを 知りました【思い立ったがDIY吉日】vol.83
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文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、ブドウについて!
藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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ブドウの本当のおいしさを 知りました
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▲これが本当のブドウだったのか。
ついに自宅でブドウ狩りの夢が叶った。
小さな鉢植えでも育つブドウがあると知って、去年から絶対に挑戦したいと思っていた。
初夏にすでに実のついたものを購入し、毎日せっせと水をやった。
一房ごとにカバーをかけて保護もした。
黄緑色だった粒が色づき始め、だんだん紫色の実のほうが多くなり、収穫の日は近いかのように思われた。
全ての実が紫になったら食べごろらしい。
しかし、いくら待っても一房まるごと紫色にはならない。
三分の一程度は黄緑色のままで、「うーんあと数日か?」と毎日首を捻る日々。
そうこうしているうちに、先に紫色になった粒がしわしわになり始めた。
まるでレーズンだ。
ちょっと待て、話が違う。
いつなら良かったのか。
一房の中に、若い黄緑、ベストな紫、しわしわレーズンが同居している。
想定していなかった状態だ。
仕方なく収穫してみることにした。
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▲いろんな段階の粒が共存するブドウ。
私が育てた初めてのブドウ。
ムラがすごいがやはり愛おしい。
まず紫の粒を食べてみる。
求めていた甘さとほのかな酸味で、問題なくおいしい。
次にレーズン部分も食べてみた。
顔のパーツがぎゅっと中心に集まってしまうくらい酸っぱい。
黄緑も酸っぱいのだろうと覚悟して最後に食べてみたら、意外とそんなことはなかった。
紫よりは劣るけれどちゃんとおいしい。
おいしいんかい。
きみのことを待っていたのに。
しばらくして、ご近所さんからちょうど同じ種類のブドウをいただく機会があった。
「本物だ」と思った。
モノマネをしていたら後ろからご本人が登場してきたような急な出会い。
自分だったらスーパーで見かけても「でも私も育ててるし」と思ってわざわざ買うこともなかっただろう。
食べ比べるつもりはなかったが、もらったのでそういう流れになった。
本物のデラウェアを一粒口に入れる。
ああ!こんなにおいしいのか。
思い描いていた味より何倍もフレッシュで、ドーンと突き抜けるように甘い。
そして安定感がある。
私が育てた、現在・過去・未来みたいな時空の歪んだブドウとはまるで違う。
どの実を食べても確実においしいということに安心する。
一粒ごとにヒヤヒヤしなくてもいい。
思い切りブドウの胸に飛び込める。
おいしいブドウを作っている人って素晴らしいな。
他のDIYでもなんでもそうだけれど、自分でやってみると世界のありがたみがぐわーっと押し寄せてくる。
100点の仕上がりではなくとも、必ずやってみて良かったと思える発見がある。
収穫後のブドウの鉢植えは小さいけれどちゃんと木なので、来年はどうなるかわからないけれどひとまず枯らさないように引き続き水をやっていこう。
2023年 夏の家庭菜園報告
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▲太陽の力を正しく蓄える夏のミニトマト。
今年の夏の菜園も絶好調だった。
ミニトマトを使ったパスタが大好きなので、いっぱい食べようと4苗植えていた。
でもおいしすぎて4苗では足りず、来年は思い切って6、7苗くらい植えてもいいなと思った。
ミニトマトはいくらあってもいい。
アイコ、イエローアイコ、あますぎちゃん、フルーツミニトマトの4種を育てて、目を瞑って「利きミニトマト」をして盛り上がった。
かわいい実が連なっているのを見る時だけは、夏が暑くて良かったと思える。
ナスもピーマンもゴーヤもまだもう少し頑張れそうだけれど、引っ越しのタイミングで全て撤収してしまうことにした。
夏野菜の終わりは夏の終わりを予感させる。
秋は何を植えよう。
見た目が愉快そうな芽キャベツはぜひやってみたい。
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▲立派なひらがなが収穫できました。
ダイコンをプランターで育てたらまたひらがなの「し」みたいになってしまうだろうか。
せまくてごめん。
夏にジャガイモを袋栽培したら豊作だったので、秋も仕掛けておくか。
季節と季節のあいだは、野菜の作戦をたくらむ時間。一息ついたらまた新しいページをめくりたい。
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▲土の袋にそのまま植えてこんなに採れた!
藤岡みなみさんのこれまでの記事はこちら
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「Pacoma」はホームセンター系のフリーペーパーに出自を持つ、「暮らしの冒険」がテーマのライフスタイル系Webマガジン。ノウハウ記事からタレントの取材記事まで「暮らしを楽しむためのアイデア」をテーマに日々発信しています。
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